概要
悪性黒色腫は、メラノーマとも呼ばれる悪性度の高い皮膚がんです。
表皮のなかでも最下層である基底層の色素細胞ががん化したもので、黒みをおびた色素斑が出現することから、一般的には“ほくろのがん”、“ほくろのような皮膚がん”と理解されています。
発症して初期の色素斑はほくろと見た目が似ており区別がつきにくいので、医療機関で早期に診察を受けることが重要です。
初期の段階であれば手術で取り除き、完治が期待できます。ある程度病気が進行すると、リンパ節などさまざまな臓器に転移します。手術で取り切れないものに対しては抗がん剤などによる治療が行われます。
原因
悪性黒色腫は、メラニン色素形成にかかわるメラノサイト(色素細胞)が悪性化することで起こります。
皮膚がんの原因にはよく紫外線が挙げられますが、悪性黒色腫は以下の3つのタイプに分かれます。
- 日光にさらされることに関係し、主に顔周辺にできるタイプ
- 日光とは無関係に体できるタイプ
- 手足や粘膜にできるタイプ
一番目以外は紫外線には関係なく発症する可能性が指摘されています。
症状
悪性黒色腫を発症すると、黒色の色素斑が生じます。程度によって色や形が異なりますが、初期では皮膚表面に濃淡が不整な黒い斑が出現し、徐々に拡大していきます。
通常、痛みやかゆみなどの症状はありません。痛みなどを感じるのはかなり進行した段階であることが多いです。
日本人の場合、足の裏に発生することが多く、末端黒子型と呼ばれます。それに続いて体幹、顔面、爪に生じます。体表の皮膚に比べて頻度は低いですが、粘膜や眼球に発生することもあります。
検査・診断
ダーモスコピー検査
初期病変の診断では、医師の診察に加えて、ダーモスコピー検査が有効とされています。
ダーモスコピー検査とは、ほくろなどに超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニン色素や毛細血管の状態を調べる検査です。皮膚を観察して、必要に応じてデジタルカメラで記録するだけなので、基本的に痛みはありません。
画像検査
また、リンパ節や他の内臓への転移がないか調べるために、超音波(エコー)検査・CT・MRI・PETなどの画像検査が行われます。
病理組織検査
必要に応じて、腫瘍の一部の組織を切り取って顕微鏡の検査(病理組織検査)を行うこともあります。
治療
悪性黒色腫の治療では、がんの厚み、リンパ節や他の臓器に転移があるかどうかによって治療方針を決めます。
リンパ節転移のない初期病変の場合は、手術による腫瘍の摘出が第一に選択されます。腫瘍の周囲1cm程度以上の正常皮膚を含めて切除します。切除後の傷の大きさに応じて手術部の近くの皮膚を移植(皮弁)したり、離れた部位から皮膚を移植(植皮)したりします。
がんが多少深く、厚みがある場合には、がんの切除手術に加えて、転移の可能性が高い数個のリンパ節を摘出する手術(センチネルリンパ節生検)を行います。
悪性黒色腫はいったん進行すると急速に転移してしまう特徴がありますが、早期発見・早期診断であれば手術のみの治療が可能です。手術後は、5年間を目安に通院による経過観察が必要です。
リンパ節に転移が認められた場合、これまではがんに加えてリンパ節全体を取り除く手術が行われてきました。これをリンパ節郭清と呼びますが、悪性黒色腫に対するリンパ節郭清は治療効果が生命予後に影響しないとの論文もあり、現在は推奨されていません。必要に応じて抗がん剤による化学療法、放射線治療が行われます。
また、有効性の高い免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん免疫療法が保険診療で使用できるようにもなりました。他の臓器へ転移していることが判明した場合、手術、放射線治療、薬物治療を組み合わせた治療(集学的治療)を行います。
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