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悪性黒色腫のステージとは? ~進行度とそれぞれの治療方法について解説~

悪性黒色腫のステージとは? ~進行度とそれぞれの治療方法について解説~
大塚 篤司 先生

近畿大学医学部皮膚科学教室 皮膚科 主任教授

大塚 篤司 先生

目次
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悪性黒色腫は“メラノーマ”とも呼ばれ、皮膚の色に関わる“メラニン色素”を産生する細胞(メラノサイト)ががん化したものをいいます。特に白色人種に生じやすいがんとして知られていますが、日本でも増加傾向にあり、10万人に1〜2人の確率で発症するといわれています。

このページでは悪性黒色腫の進行度を示すステージや、ステージ別に見る治療方法、生存率などについてご紹介します。

悪性黒色腫はステージⅠ~Ⅳまでの4つに分けられ、数字が大きいほど進行していると判断されます。

悪性黒色腫のステージ分類はがん組織の分厚さや潰瘍の状態(T)、リンパ節や周辺の皮膚への転移状況(N)、他の臓器へ転移があるかどうか(M)の3つの視点から評価されます。この分類を“TNM分類”といいます。

ステージⅠの悪性黒色腫は、がんがほかの部位に転移しておらず、がんの厚さが比較的薄い場合を指します。ステージⅠのなかでも、がんの厚さや潰瘍*の有無などによってAとBに分けられます。AよりBのほうが、より進行している状態と判断されます。

*潰瘍:組織が傷ついて欠損している状態

ステージⅠA

  • がんの厚さが0.8mm未満で潰瘍のない場合

ステージⅠB

  • がんの厚さが0.8mm未満で潰瘍がある場合
  • 潰瘍のあるなしに関係なく、がんの厚さが0.8~1mm以下の場合
  • がんの厚さが1~2mm以下で潰瘍がない場合

ステージⅠの悪性黒色腫の治療方法

ステージⅠの悪性黒色腫では、ステージⅠAとステージⅠBで治療方法が少し異なります。

ステージⅠAの場合、病変部分を広範囲に切除する手術治療が検討されます。ステージⅠBの場合、ステージⅠAと同様に病変部分の切除のみで治療が完了する場合もあれば、センチネルリンパ生検を行い、転移陽性の場合にはリンパ節郭清をするかどうかを患者と話し合って決定する場合もあります。

センチネルリンパ生検・リンパ節郭清とは?

センチネルリンパ生検とはがんが最初に転移するリンパ節を採取し、がん細胞の転移がないかどうか確認する検査方法です。この検査が転移陽性であれば、すでに他のリンパ節などに転移している可能性があります。一方でこの検査の結果が転移陰性であれば、リンパ節への転移がない可能性が高いと判断されます。

悪性黒色腫の場合、ステージⅠBやステージⅡ、ステージⅢの一部でセンチネルリンパ生検が行われ、転移陽性と判断された場合、病気の状態や患者の希望に応じてリンパ節郭清が行われます。

リンパ節郭清とは手術の際に病変部分を切除するだけでなく、がん周辺のリンパ節も併せて切除することをいいます。

術後補助療法について

リンパ節郭清が行われた場合やセンチネルリンパ生検が転移陽性だった場合などには、術後補助療法が検討されることがあります。悪性黒色腫の術後補助療法としては、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法のほか、放射線治療、インターフェロンβの皮下注射などが検討されます。

ステージⅡの悪性黒色腫はがんがほかの部位に転移しておらず、ステージIよりも進行した状態を指します。ステージⅡもA・B・Cの3段階に分類されます。

ステージⅡA

  • がんの厚さが1~2mm以下で潰瘍がある場合
  • がんの厚さが2~4mm以下で潰瘍がない場合

ステージⅡB

  • がんの厚さが2~4mm以下で潰瘍がある場合
  • がんの厚さが4mm以上で潰瘍がない場合

ステージⅡC

  • がんの厚さが4mm以上で潰瘍がある場合

ステージⅡの悪性黒色腫の治療方法

ステージⅡの悪性黒色腫でもステージⅠ同様、病変部分を広範囲に切除する手術治療が検討されます。また手術前に患者と相談し、センチネルリンパ生検の結果が転移陽性だった場合にリンパ節郭清を行うかどうかを検討します。

ステージⅢの悪性黒色腫とは、がんの厚さや潰瘍の有無に関係なく、1つ以上のリンパ節転移がある状態をいいます。前述のセンチネルリンパ生検が転移陽性であった場合も、ステージⅢとしての治療が検討されます。

ステージⅢの治療方法は複数あり、手術治療やリンパ節郭清、術後の補助療法などが検討されることもあれば、すぐに治療を開始せずリンパ節エコー検査やCT検査などで経過観察を行うこともあります。

ステージⅣの悪性黒色腫とは、がんの厚さや潰瘍の有無、リンパ節の転移に関係なく、がんがほかの臓器へ転移している状態を指します。

ステージⅣの悪性黒色腫では、一次治療として薬物療法が検討されます。遺伝子検査でBRAF遺伝子変異が見受けられた場合、分子標的薬の処方が検討されることが一般的です。また、それ以外の場合には免疫チェックポイント阻害薬が検討されます。

悪性黒色腫が転移しやすい場所とは?

悪性黒色腫で特に転移が生じやすい臓器としては、脳や肺、肝臓、消化管、骨などが挙げられます。

悪性黒色腫はステージによって治療方法が大きく異なるため、診断されたら自身の状況を把握するためにも担当医師の説明をよく聞き、分からないことがあれば相談するようにしましょう。

また治療方針について希望があれば、担当医師としっかり話し合って決めていくことが大切です。

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