皮膚悪性腫瘍の病態と最新治療
秋田大学 名誉教授、医療法人惇慧会 名誉院長
眞鍋 求 先生
目次
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悪性黒色腫とは皮膚がんの１つで、“メラノーマ”と呼ばれることもあります。発生原因には遺伝的背景と環境因子の両方が関与していると考えられています。特に白色人種に多い病気と考えられてきましたが、近年では日本でも患者数が増加傾向にあるといわれています。
悪性黒色腫の病変はほくろやしみとよく似ていますが、自分自身で見分けることはできるのでしょうか。このページでは、悪性黒色腫と普通のほくろの見分け方や病変の特徴、医療機関で行われる検査方法などについてご紹介します。
悪性黒色腫の見分け方とは？
早期の悪性黒色腫と普通のほくろはよく似ており、一般の方が見分けることは困難です。ただし、悪性黒色腫の早期症状には“ABCDEルール” と呼ばれる5つの特徴があり、自分のほくろがこれらに該当する場合には、皮膚科を受診することが望ましいといわれています。
以下ではまず、悪性黒色腫の早期症状とされる5つの特徴についてご紹介します。
早期の悪性黒色腫の主な症状
- 非対称性（Asymmetry）……ほくろの形が左右非対称
- 輪郭がギザギザしている（Border）……ほくろと周辺の皮膚の境界部分がギザギザしていたり、周辺の皮膚に色素がにじみ出ていたりする
- 色のムラ（Color）……ほくろの色が均一でなく、色ムラがある
- 大きさが大きい（Diameter）……ほくろの直径が6mm以上
- 変化している（Evolving）……ほくろが大きくなったり、色や形などが変化したりしてきている
悪性黒色腫を疑うほくろの変化とは？
悪性黒色腫では、もともとあったほくろが1～2年かけて変化することがあります。以下では、特に注意したいほくろの変化についてご紹介します。
ほくろの色
もともと褐色など薄い色合いをしていたほくろが、濃い黒色へと変化することがあります。また、ほくろの一部分のみの色が濃くなったり薄くなったりして、ほくろの色がまだらになることもあります。
ほくろの大きさ
もともと2～3mm程度であったほくろが、1～2年のうちに5～6mm以上になることもあります。
ほくろの形
ほくろと周辺の皮膚の境界がギザギザに歪んだり、周辺の皮膚に色素のしみ出しが生じたりします。また、ほくろの中にできものが生じることもあります。
ほくろの硬さ
通常のほくろは均一な硬さですが、悪性黒色腫では一部や全体がより硬くなっている場合があります。
ほくろだけでなく爪にも注意が必要
悪性黒色腫は爪に生じることもあります。爪に生じた場合、爪の縦の線に沿って黒褐色のすじが発生し、時間の経過とともにすじの色合いが濃くなったり、幅が広くなったりします。さらに進行すると爪が割れたり、色素が周辺の皮膚までしみ出したりすることがあります。
悪性黒色腫を早期発見するために
悪性黒色腫はほかのがん同様、早期発見・治療が望ましいがんです。そのため、年に1回は自身のほくろやしみの状態を確認し、気になる症状があれば医療機関の受診を検討しましょう。頭皮や背中など自分では見にくい部位については、家族に見てもらったり、鏡で確認したりしてもよいでしょう。
悪性黒色腫の検査方法
悪性黒色腫が疑われる場合、皮膚科ではさまざまな検査を行い、総合的に診断を行います。確定診断のための具体的な検査方法としては、ダーモスコピー検査や生検が挙げられます。
また、がんの広がりや転移を調べる目的でX線検査、エコー検査、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査が行われることもあります。
ダーモスコピー検査とは
ダーモスコピー検査とは、色のついた皮膚疾患を観察するための特殊なルーペ“ダーモスコピー”で病変を見る検査です。病変部分を10〜30倍に拡大して、ライトで明るくした状態で観察できるため、悪性黒色腫の早期発見に役立ちます。痛みのない検査です。
ダーモスコピー検査で診断できないときは生検が検討される
ダーモスコピー検査で確定診断が難しいときは、病変を切除して顕微鏡で見る“生検”によって確定診断を行います。病変全体を切除できる場合は全体を切除して検査を行うことが一般的ですが、それが難しい場合には病変の一部を採取し、生検を行うこともあります。
気になる症状があれば医療機関の受診を検討
悪性黒色腫は近年日本人も増加傾向にあり、日本人では症状がよく現れる部位として手足など末端部分が挙げられます。時間の経過とともに変化がみられるほくろなど気になる症状があれば、自己判断で放置せずに医療機関の受診を検討しましょう。
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近畿大学医学部皮膚科学教室 皮膚科 主任教授
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