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乳がんの治療方法――見た目の変化に対するサポートや手術について

乳がんの治療方法――見た目の変化に対するサポートや手術について
井手 佳美 先生

菊名記念病院 乳腺外科 部長

井手 佳美 先生

目次
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乳がんの治療は、進行度やがんのタイプによって手術治療、薬物治療、放射線治療を組み合わせて行います。近年では、病変以外の乳房を残す温存術や乳房再建術を行うことで、術後の乳房の形にも配慮した治療が可能になっています。今回は、乳がんの治療について述べるとともに、術前・術後の注意事項などについて、菊名記念病院 乳腺外科部長の井手 佳美(いで よしみ)先生に伺いました。

乳がんの治療は手術治療、薬物治療、放射線治療の3本柱で行います。それぞれ次のような特徴がありますが、いずれか1つを選択して行うわけではなく、ステージやタイプによって複数の治療法を組み合わせることで治癒率が向上するものがほとんどです。

手術治療

メリット:比較的短期間でがん病巣の摘除が可能

デメリット:入院が必要・傷が残る・術式によっては後遺症が残る

薬物治療

メリット:ほとんどの場合、外来治療が可能

デメリット:薬の副作用が起こり得る

放射線治療

メリット:外来治療が可能 

デメリット:副作用として皮膚障害が生じる

当院は、日本乳癌学会の『乳癌診療ガイドライン』に基づく標準治療*を行うとともに、医師、看護師、薬剤師、理学療法士などが協力して患者さんをサポートすることに努めています。

乳がんの手術では原則入院が必要ですが、ほとんどの場合、2泊3日~という短期入院で施行可能です。良性病変の手術ならば日帰り~1泊2日、そのほかの治療では、ほとんど外来治療が可能です。

乳がんの温存術については、次の項目で詳細を説明します。

*標準治療:科学的根拠に基づいた観点で効果が確立されており、一般的に普及している治療法

乳がんに対する乳房温存術は、乳がんの病巣付近のみを切除し、そのほかの部分は切除しない術式です。がんが小さいほど適応しやすい術式ですが、大きい場合でも術前化学療法(手術前に行う薬物治療)や内分泌療法(ホルモン療法)を組み合わせて、患者さん一人ひとりの希望に沿った術式選択に努めます。

温存術を行う際、組織を広く切除して欠損部が大きくなると、乳房のへこみも大きくなります。乳房の形をあんこの入ったおまんじゅうにたとえるとイメージしやすいかもしれません。がんができるのは、あんこの部分です。皮を切り、あんこを少しくり抜いてから再び皮を閉じると、中身が減った分だけ皮の表面がへこんで見えてしまいます。

温存術を行うと乳房のボリュームは多少減りますが、私は術後の乳房の形に配慮して、がんをしっかり取り除くとともに組織を大きく切除しすぎない手術を心がけています。「なるべく乳房の形を残したい」という患者さんのニーズに、安心と満足をもって応えられるよう努めています。

切除が必要となる部位や範囲によって、手術後に乳房が変形しやすいかどうかが異なってきます。たとえば、乳がんができやすいのは(わき)の近くの部分だといわれていますが、ここは乳腺にやや厚みがあるため多少切除しても修復しやすい部位です。乳房の中心あたりは、変形はそれほど強くならないことが多いですが乳頭を切除しなくてはならない場合があります。厚みが少ない内側などに乳がんができると、少し切除しただけでも乳房の形が変形してしまいやすく、修復するのが難しい場合があります。

患者さんからご提供いただいた術後の写真もご覧いただきながら説明をしますので、「これくらいの変形だったら許容できるかな」「こんなに変形するのであれば、全体を切除して、再建の方がいいかな」などとご自身に問いかけながら術式を選択していただけるとよいと思います。

MN撮影
菊名記念病院乳腺外科 診察の様子

乳房全体を切除する術式を選択した際、人工物やご自身の体の一部を用いて乳房様のふくらみを作成する手術を乳房再建術といいます。当院のように施設認定を取得した医療機関で行われており、治療は保険内で受けることができます。

人工物(インプラント)を用いる方法のほうが、ご自身の体の一部(自家組織)を用いる方法よりも体への負担が少なく短い入院期間で施行可能です。

人工物による再建の場合、乳房切除と同時に大胸筋の後ろにエキスパンダー(組織拡張期)と呼ばれる生理食塩水を注入できるバッグのようなものを挿入します。半年ほどかけて、自分の乳房の大きさになるまで生理食塩水を注入して徐々に拡張させたのち、耐久性のあるインプラントに入れ替えます。

当院では、乳房切除~エキスパンダー挿入を当院で、インプラントへの入れ替えは乳房再建を専門的に行っている形成外科の先生のもと(ブレストサージャリークリニックなど)で受けていただく体制を整えています。

人工乳房による乳房再建は、患者さんにとっては比較的手軽に行える方法です。自家組織を用いる方法でのデメリットである、ほかの部位から組織を移植するため乳房以外にも傷が付くことや、体への負担により入院期間が長くなることが回避できます。ただし、人工乳房を用いる方法にもデメリットはあり、リンパ腫の発生リスクが挙げられます(乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)。リンパ腫は非常にまれな合併症で、早期発見により治療も可能ですが、再建術を検討される患者さんにはこうしたリスクも含めてお話をさせていただいています。

当院における乳がんの手術は、次のようなスケジュールで行っています。

  • 初診から診断まで:約2週間
  • 診断確定から手術の実施まで:約1週間~
  • 入院期間:3~5日程度
  • 退院後:7日目付近で外来受診、創部のチェック
  • 退院後14日目:外来受診、病理結果の説明、今後の治療方針決定

なお、手術後に化学療法(3~6か月)、放射線療法(約1か月)、ホルモン療法(5~10年)などを行うことがあります。術前化学療法を施行する場合は、確定診断後3~6か月間施行してから手術を行います。

高額療養費制度により、患者さんの収入に応じて支払うべき月額医療費の上限(自己負担限度額)が決まっています。検査や診療にかかる費用がご心配な方は、当院では医事課のスタッフがお調べいたしますので、お気軽にお尋ねください。

アルコール摂取は乳がんの罹患率および再発率を上げるといわれています。節度を持ってバランスよく食事、運動していただくことが乳がん予防・乳がん再発予防にもよいと考えられています。

術後は数日の療養期間ののち、すぐに復帰される患者さんが多いです。抗がん剤治療後の副作用などで従来の業務への従事が難しい場合、患者さんの職場の産業医宛に診断書を作成して情報提供することも可能です。

術後につける下着はどのようなものでもよいですが、傷があるため少しゆったりとしたものがおすすめです。ブラジャーを着用していない状態よりは何か支えられていたほうが、乳房が揺れにくく痛みが軽減されます。術後向けの下着として1番理想的なのは、着脱が楽な前開きのスポーツブラのようなタイプのものです。ブラトップ(カップ付インナー)も気楽に着用できると思います。

再発予防として、患者さんにはお酒を飲まないようお願いしています。また、肥満の方は乳がんの再発リスクも高く、特に閉経後の方は太らないほうがよいといわれています。適度な食事と運動という、いわゆる健康的な生活が乳がんの再発予防にもよいといえるでしょう。

術後は痛みがあるので腕や肩を動かさないほうがよいと思われるかもしれませんが、動かさずにいると肩関節が固まって肩が上がりにくくなってしまう恐れがあります。当院では術後早期から専門のスタッフが付いて、痛みなどの状況を見ながらリハビリテーションを行っています。

乳がんの経験がある方は一般的に、1年に1回はマンモグラフィを受けたほうがよいとされています。当院では、血液検査、超音波検査、マンモグラフィなどを組み合わせて半年に1回程度検査を行っています。

乳がんの治療は、抗がん剤治療中に髪や眉毛が抜けたり、爪が剥がれたり、治療後も生えてくる髪の質がより悪くなるなど、外見に影響をきたすことがあります。命に関わるものではありませんが、治療を億劫(おっくう)に感じてしまう患者さんも少なくないでしょう。

こうした外見の変化に関するストレスを軽減させる“アピアランス(外見)ケア”の重要性は近年注目されています。当院でも、カツラ(医療用ウィッグ)やネイル、術後につける下着のパンフレットなどを取り寄せて配布するといった、患者さんへの情報提供に力を入れています。

私たち日本人は平均寿命が延びてきたからこそ病気になるわけで、昔なら亡くなっていたような病気を患っても生き続けることができる状況は現代人の課題でもあるのではないかとすら思います。その中でも乳がんというのは、早期に発見できれば治りやすい病気だといわれています。ぜひ病院を上手に利用していただき、困ったことがあれば私たちに相談して乗り越えていただけたらと思います。

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