編集部記事

乳がんの診断で行われる精密検査とは〜検診結果が“異常あり“でも乳がんとは限らない〜

Q: 乳がんの精密検査の対象者と流れ

乳がんの精密検査は以下の方が対象となります。 (もっと見る)

乳がんの診断で行われる精密検査とは〜検診結果が“異常あり“でも乳がんとは限らない〜

がん研有明病院　乳腺内科部長

高野利実先生

項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

乳がんの精密検査の対象者と流れ
乳がん診断のために行われる精密検査
乳がんのステージや治療方針決定のための精密検査
乳がんの精密検査の不明点は担当医に相談を

乳がんは女性のがんの中では罹患率が高く、死亡原因でも上位に位置します。しかし、乳房Ｘ線検査（マンモグラフィ）単独法による乳がん検診で早期発見できれば死亡率の減少が認められており、多くの自治体が公費負担で乳がん検診を実施しています。乳がんは自治体による乳がん検診（対策型検診）や自覚症状が理由で自主的に受診して検査をした際に“異常あり”と判断されても、乳がんであるとは限りません。診断に至るまでにはさまざまな精密検査が行われて乳がんが確定されます。

本記事では乳がんの精密検査の対象者や検査の流れ、各精密検査の目的などについて詳しく解説します。

乳がんの精密検査の対象者と流れ

乳がんの精密検査は以下の方が対象となります。

自治体などによる対策型検診（死亡率減少を目的とする、公共的な予防対策として行われる検診）で結果が“異常あり”だった方
乳がんが疑われるような自覚症状で受診し、医師により精密検査が必要と判断された方

乳がん検診の結果が“異常あり”だった場合は精密検査を受けることが推奨されているため、医療機関を受診する必要があります。精密検査では、マンモグラフィ（乳腺専用のＸ線検査で、異常がある箇所の位置や広がりを調べる）の追加撮影、超音波検査、細胞診、組織診などを組み合わせて行います。

一方、しこりや乳房の引きつれなど乳がんが疑われるような自覚症状があって受診した場合はまず問診で症状などの聞き取りが行われます。その後、視診、触診、マンモグラフィ検査が行われます。これらの検査で乳がんの可能性が疑われた場合には、対策型検診後の精密検査と同様の検査が行われます。

乳がん診断のために行われる精密検査

前述のとおり、最初の検査で乳がんの可能性が疑われた場合は診断をつけるための精密検査として超音波検査、細胞診、組織診などが行われます。精密検査の詳細は以下のとおりです。

超音波検査

乳房の表面から超音波を当てて反射した様子を画像で確認する検査です。これは乳房内の異常の有無、しこりの状態や大きさ、周囲のリンパ節などへの転移の有無を確認することができます。この検査は放射線被曝の心配がないので妊娠中でも検査が可能です。また、通常の場合は検査による痛みや体への負担もありません。

細胞診、組織診

細胞診、組織診は異常がある細胞の一部を採取して顕微鏡で調べる検査で、病理検査とも呼ばれます。

細胞診は乳頭からの分泌液を採取する方法（分泌液細胞診）と、異常がある部位に針を刺して細胞を吸引する方法（穿刺吸引細胞診）の2種類の方法があります。組織診は診断を確定するために行われる検査で生検とも呼ばれます。組織を採取するためには注射針よりも太い針を使用する方法（針生検）、針生検よりも太い針を使用する方法（マンモトーム生検）、皮膚を切開する方法の3種類があります。これは組織の状態をみることができるほか、免疫染色検査等を行うことで乳がんの種類を調べることもできるため、細胞診よりも確実な診断ができるとされています。なお、いずれの方法も局所麻酔をしてから行います。

乳がんのステージや治療方針決定のための精密検査

前述の検査で乳がんと診断された場合、ステージ（がんの進行状況）や治療方針を決定するためにCT検査、MRI検査といったさらなる精密検査が行われます。

CT・MRI検査はがんの広がりを調べる検査です。どちらも同じような画像検査ですが、CT検査はＸ線、MRI検査は磁気を使うという違いがあります。これらの検査によってステージが決定され、病理検査の結果も踏まえて治療方針が検討されます。ただし、CT・MRI検査の際に用いられることのある造影剤は、アレルギーを引き起こすことがあります。過去に造影剤でアレルギーを起こしたことがある場合は、事前に担当医に申し出るとよいでしょう。

乳がんの精密検査の不明点は担当医に相談を

前述の通り、乳がんの検診、検査で最初に行われるマンモグラフィ検査で異常があっても乳がんであるとは限りません。診断に至るまでにはさまざまな精密検査が行われ、結果が出るまでに時間がかかることもあります。検査や診断についてわからないことは担当医に相談し、しっかり理解したうえで検査に臨むことが重要です。

受診について相談する

がん研有明病院乳腺内科部長
高野利実先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

乳がんの診断で行われる精密検査とは〜検診結果が“異常あり“でも乳がんとは限らない〜

乳がんの精密検査の対象者と流れ

乳がん診断のために行われる精密検査

超音波検査

細胞診、組織診

乳がんのステージや治療方針決定のための精密検査

乳がんの精密検査の不明点は担当医に相談を

関連記事

乳がんステージ4の治療の考え方――生物学的根拠に基づき一人ひとりに適した戦略を立てる

進行乳がん治療について――切除不能・転移・再発乳がんの無病状態を目指す

乳がん検診の受診率向上のために――菊名記念病院 乳腺外科の取り組み

乳がんの治療方法――見た目の変化に対するサポートや手術について

乳がん検診はなぜ必要？ 検査方法と早期発見の重要性について

乳房再建手術とは？ 手術の種類・それぞれの特徴について解説

乳がんの手術・薬物療法について解説

乳がんの治療はどのように選択される？ 埼玉県立がんセンターが取り組む乳がん治療

乳がんの原因や症状とは？ 早期発見のために心がけてほしいこと

乳がんに対する治療（手術、薬物療法、放射線治療）の詳細

乳がんに対する治療の選択肢とステージによる治療方針の違い

乳がんの検診と検査について解説——病院を受診するべき症状とは？

乳がんとはどのような病気？ 概要と検査、治療方針について

NTT東日本関東病院 ブレストセンターにおける乳がんの治療と検査について

転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療の特徴

乳がんの薬物療法－上手な薬とのつきあい方

転移再発乳がんの特徴と治療

乳がん手術で失った乳房を新しく作る、乳房再建術とは？

乳がんの治療は患者さんとの信頼関係が重要

標準治療とは患者さん一人ひとりにもっとも適した治療のこと

患者さんと医師が治療方針を決める材料となる 2018年版乳癌診療ガイドラインの特徴とは

医療におけるガイドラインの役割とは 目的や重要性、乳癌診療ガイドラインについて

第25回日本乳癌学会学術総会・記念市民公開講座の概要と特色

乳がんは手術して終わりではない――患者さんを長期的にサポートするために

乳がん検診で病変が見つかりにくい「高濃度乳房」――高濃度乳房を調べる方法・検診や検査で気を付けるべきこととは？

マンモグラフィで乳がんの判別が難しい高濃度乳房――その特徴や病気のリスクについて正しく理解する

乳がん治療を長期的にサポートする「乳がん専門看護」とは―患者さんのQOLを支える看護

「乳がん患者さんと向き合い人生を支える」乳がん看護認定看護師になるには？

HBOC－遺伝する乳がん・卵巣がんの検査方法 ＜まずは「家系にがん患者がいるか」を調べよう＞

遺伝性乳がん・卵巣がんについて -【HBOC】その特徴と対応は？

乳がんの手術方法―各手術のメリット・デメリットを解説

乳がんの手術ができないケース、その場合の余命は―乳がんの疑問に専門医が回答

浸潤性乳がんの治療――手術と抗がん剤治療、それぞれの目的

乳がんの種類と治療――ステージのみで手術法や薬剤は決まらない

乳腺科医と形成外科医が連携！ 乳房再建の取り組み

乳がん手術の後に必要なことは？ 乳房再建手術の方法や術後のアフターフォローについて解説

がんに対する緩和ケアとは？ ――​​QOL（生活の質）の維持を目的としてがんに伴うつらさを最小限に和らげる

患者さんの治療と仕事をサポートする、横浜労災病院の取り組み

乳がんの治療と仕事の両立は可能？ 両立を目指すためにできること

乳がんの治療法とは 治癒のためには転移を防ぐことが必要

日本人女性の約12人に1人は乳がんを発症する 症状やステージと生存率の関係について

放射線治療の流れ、放射線治療に適したがんとは？

乳がん患者さんの生活を支えるために―聖路加国際病院ブレストセンターにおけるがんサバイバーシップの取り組み

乳がんの治療は患者さん一人ひとりに最適な方法が選択される―術前検査から手術、化学療法、ホルモン療法まで

乳がんにおける今後のMRI検査の可能性

乳がん診断でMRI検査が使われるケース②「追加検査」③「治療効果の判定」

乳がん検診の流れ

MRIを使った乳がん検査

乳がん診断でMRI検査が使われるケース①「広がり診断」

乳がんの治療－リンパ節を調べるより良い方法

乳房の待期手術前のマンモグラフィ検査－必要な場合、そうでない場合

脂肪注入による乳房再建

乳房再建 同時再建と二次再建

インプラントによる乳房再建

穿通枝皮弁による乳房再建の特徴

自家組織による乳房再建

乳房再建とは——費用は場合に応じて変わる

乳がん検診―何歳になったら受けるべき？

乳がんの治療―薬物療法はどんなもの？

乳がんの原因は？

乳がんとは？―どこを受診すればいいのか

乳がん検診で発見されることがある“乳腺嚢胞”とは〜乳がんに変化することはあるの？〜

乳がんのリンパ節転移の特徴や治療とは？ ～遠隔転移がなければ比較的高い生存率になる〜

乳がんの乳房全摘術が選択される基準とは？ ～乳房温存術と比較したメリット・デメリット～

乳がんではどんな手術が行われるの？ ～標準的な手術法は“乳房温存術”と“乳房全切除術”～

乳がんの転移の特徴 ～転移しやすい場所や、転移した場所ごとの症状とは～

乳がんの受診のきっかけになる症状とは？ ～無症状の乳がんも存在することを知っておくことが重要〜

２種類ある“乳房再建術”のメリット・デメリットとは〜人によって適した手術法が違う〜

乳がんの治療方針はステージだけでは決まらない〜治療の選択に重要な“サブタイプ”とは〜

胸に痛みがあるときの乳がんの可能性は？ ～疑われる病気、早期発見のためにできることとは～

医師に聞いた乳がん検診への考え方とは〜どのくらいの頻度で受けるとよいの？対象者ではなければ受けなくてよいの？〜

医師に聞いた乳がんに生じるしこりの感触や場所の特徴とは〜しこりがある時の受診の目安は？〜

乳がん検診の受診率向上のために――菊名記念病院乳腺外科の取り組み

乳がん検診はなぜ必要？検査方法と早期発見の重要性について

乳房再建手術とは？手術の種類・それぞれの特徴について解説

乳がんの治療はどのように選択される？埼玉県立がんセンターが取り組む乳がん治療

乳がんの原因や症状とは？早期発見のために心がけてほしいこと

乳がんとはどのような病気？概要と検査、治療方針について

NTT東日本関東病院ブレストセンターにおける乳がんの治療と検査について

患者さんと医師が治療方針を決める材料となる　2018年版乳癌診療ガイドラインの特徴とは

医療におけるガイドラインの役割とは　目的や重要性、乳癌診療ガイドラインについて

HBOC－遺伝する乳がん・卵巣がんの検査方法　＜まずは「家系にがん患者がいるか」を調べよう＞

遺伝性乳がん・卵巣がんについて　-【HBOC】その特徴と対応は？

乳腺科医と形成外科医が連携！乳房再建の取り組み

乳がん手術の後に必要なことは？乳房再建手術の方法や術後のアフターフォローについて解説

がんに対する緩和ケアとは？ ――QOL（生活の質）の維持を目的としてがんに伴うつらさを最小限に和らげる

乳がんの治療と仕事の両立は可能？両立を目指すためにできること

乳がんの治療法とは　治癒のためには転移を防ぐことが必要

日本人女性の約12人に1人は乳がんを発症する　症状やステージと生存率の関係について

乳房再建同時再建と二次再建

乳がんのリンパ節転移の特徴や治療とは？～遠隔転移がなければ比較的高い生存率になる〜

乳がんの乳房全摘術が選択される基準とは？～乳房温存術と比較したメリット・デメリット～

乳がんではどんな手術が行われるの？～標準的な手術法は“乳房温存術”と“乳房全切除術”～

乳がんの転移の特徴～転移しやすい場所や、転移した場所ごとの症状とは～

乳がんの受診のきっかけになる症状とは？～無症状の乳がんも存在することを知っておくことが重要〜

胸に痛みがあるときの乳がんの可能性は？～疑われる病気、早期発見のためにできることとは～

医師に聞いた乳がんの最新トピックス～遺伝性乳がんに対する予防的治療や今後の乳がん治療の展望～