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転移再発乳がんの特徴と治療
女性に多いがんのひとつである乳がん。初発の乳がんでは、手術によるがんの切除など、基本的に根治を目指す治療を行います。しかし、治療がそこで終わるケースばかりではありません。乳がんの初発の治療後に、...
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転移再発乳がんの特徴と治療

公開日 2018 年 11 月 06 日 | 更新日 2018 年 11 月 26 日

転移再発乳がんの特徴と治療
清水 千佳子 先生

国立国際医療研究センター病院 乳腺腫瘍内科

清水 千佳子 先生

目次

女性に多いがんのひとつである乳がん。初発の乳がんでは、手術によるがんの切除など、基本的に根治を目指す治療を行います。しかし、治療がそこで終わるケースばかりではありません。乳がんの初発の治療後に、がんが乳房と離れた臓器に転移再発する可能性があるからです。

初発の乳がんと比べて、遠隔転移をきたした乳がん(転移再発乳がん)には、なかなか根治をするのが難しいという特徴があります。転移再発乳がんでは、どのような治療が行われるのでしょうか。今回は、国立国際医療研究センター病院 乳腺腫瘍内科の清水 千佳子先生に、転移再発乳がんの特徴と治療についてお話しいただきました。

乳がんの遠隔転移が起こるしくみ

血管やリンパ管の中にがん細胞が入り込み、全身へ運ばれることで発生

乳がんは、比較的小さい時期から、がん細胞が血液やリンパの流れに入り込みやすいといわれています。乳がんの転移再発は、このように乳房から流れ出た小さながん細胞が、ほかの臓器に運ばれて、そこで増殖するために起こると考えられています。手術で原発がんを切除しても、転移再発の種となる小さながん細胞が体に残っていると、時間と共に大きくなっていき、かたまりを作ります。血液やリンパの流れは全身に分布しているため、転移再発を起こした場合、乳がんは全身的な病気の性質をもつといえるでしょう。

乳がんの転移再発はどんなケースで起こりやすい?

ステージやがんの形態などから転移再発しやすいかを判断

乳がんを発症した患者さんすべてが転移再発するわけではありません。手術をした時点で全身にがん細胞が広がっているかどうか、直接見ることができる検査があればよいのですが、実際にはそのような検査法がないのが現状です。

ただし、過去に転移再発した方と転移再発しなかった方を比べたデータから、どういう方が再発しやすいかという傾向はわかってきています。また、手術で切除した腫瘍の遺伝子検査を行い転移再発の可能性を予測する方法も開発されつつありますが、現状では、主に手術で切除したがんの進行度(ステージ)、顕微鏡で見たときのがんの形態、がんの性質をもとに転移再発のしやすさを判断します。

進行度(ステージ)

がんの進行度(ステージ)では、がんの大きさや脇の下のリンパへのがんの広がりなどを基に、がんが再発しやすいかを判断します。

がんの形態

がんの形態では、がん細胞の形や配列の評価を基に、がんが転移再発しやすいかを判断します。さらに、がん細胞の形態や配列以外にも、周辺のリンパ管の中にがん細胞が入りこんでいるかどうかも考慮します。

ホルモン受容体やHER2が陽性か

また、ホルモン受容体やHER2と呼ばれる分子が陽性であるかも転移再発しやすいかどうかに関わります。HER2陽性とは、HER2タンパクやHER2遺伝子を過剰にもつことを意味します。これらの因子は、がん細胞の増殖を促進するはたらきがあると考えられています。

年齢

過去の研究では、若年の方がより転移再発しやすいという報告もあります。しかし、若年だからといって必ずしも転移再発しやすいというわけではありません。年齢も考慮しながら、上記3つの要素を基に総合的な判断で転移再発しやすいかどうかを判断していきます。

乳がんの転移再発はいつ起こりやすい?

初発の乳がんの治療後2〜3年程度に起こりやすい

乳がんの転移再発が起こりやすいのは、初発の乳がんの治療後、2〜3年程度といわれています。5年経過すると転移再発する頻度は低下するといわれていますが、5年後以降も転移再発するケースはありえます。また、20〜30年経過してから転移再発する可能性も否定できません。

転移再発乳がんの治療の目的

初発の乳がんでは手術など根治を目指す治療を行う

初発の乳がんでは、基本的には根治を目指す治療を行います。がんの進行度によって必ずしも根治するケースばかりではありませんが、手術によるがんの切除など、根治を目指す治療が基本になります。

転移再発乳がんでは、がんとつきあうことを前提とした治療を

一方、転移再発乳がんは、新しい治療法が増えて予後は改善していますが、やはり初発の乳がんと比べると根治することが難しい状況です。そのため、転移再発乳がんの治療は、ある程度、治るのが難しいこと、がんとつきあいながら暮らしていくことを前提として組み立てていきます。治療の目標は、症状が現れている方であれば症状を和らげること、症状が現れていない方であればQOL(生活の質)を維持した生活をできるだけ長く続けられることが治療の主な目的になるでしょう。

転移再発乳がんで現れる可能性のある症状

患者さんによって状況は異なりますが、転移再発乳がんでは、どの臓器への転移でも、腫瘍の量が少ないときには全く症状がないことも少なくありません。ただし、進行と共に、転移した臓器に応じてさまざまな症状が現れ、腫瘍量がさらに増えると臓器の機能にも影響を及ぼす可能性があります。たとえば、骨に転移再発すれば痛みが出たり、骨折をしたりすることがあります。肺に転移再発すれば咳がでたり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。

肝臓は、なかなか症状がでにくい臓器ですが、かなり進行すると黄疸(おうだん)*やむくみなどの肝不全の症状が現れます。脳などの中枢神経系の転移では、転移をきたした部分に応じた神経症状が出てきます。

黄疸:血液中のビリルビンと呼ばれる色素が増えることで、皮膚や粘膜が黄色に染まる状態

転移再発乳がんの治療の選択肢とは?

薬による全身治療と共に放射線治療や緩和ケアも

転移再発乳がんは、乳房を離れた全身への病気の広がりがあるため、薬物療法による全身治療が基本になります。薬物療法、つまり抗がん剤による治療は、飲み薬や点滴治療などがありますが、いずれも薬は血流に乗って全身に運ばれます。

薬

また、症状を和らげ、日常生活を送りやすくするためには緩和ケアも重要です。緩和ケアでは、痛み止めや咳止めなど症状に応じた薬による治療を行ったり、がんの転移による局所的な症状が強い場合には、その症状の原因となっている転移再発部位に局所的な放射線治療を行ったりすることがあります。また、体だけではなく、心のケアも緩和ケアの重要な要素です。

このように、転移再発乳がんでは、抗がん剤による薬物治療と共に緩和ケアを適切に組み合わせていくことになります。

患者さんが納得したうえで一緒に治療方針を選択することが大切

転移再発乳がんでは、症状の緩和や病状の進行を抑えられることを期待しながら治療を進めていきますが、一方で副作用や通院のために、仕事や生活が困難になることもあるでしょう。

がんの治療による100%の治癒を期待することがなかなか難しいため、患者さんには、いくつかある治療の選択肢のメリットとデメリットを十分理解していただく必要があります。そのうえで、どのような方針を選んでいくのか、患者さんの生き方や価値観を大切にしながら、患者さんと医療従事者で一緒に考えて治療方針を決めていくことが重要だと考えています。

乳がんの転移再発をどのように見つけるか

最後に、乳がんの転移再発をどのように見つけるのか、患者さんに心がけてほしいことをお伝えします。

2018年9月現在、遠隔転移を見つけるための術後の精密検査(CTや骨シンチの検査など)は、研究の結果、生命予後を改善することが示されず、定期的に実施する意味がないと考えられています。

転移再発をいたずらに怖がって、検査を過剰に行う必要はありませんが、自分の身体に無関心で定期的な医師の診察まかせにしてしまってもいけないと考えています。乳がんの術後の健康管理では、以下のことに注意していただきたいと思います。

乳がんの経験があることを医師に伝えて

診察

乳がんを発症したことがある方が、健康上の問題によって受診したときには、乳がんの経験があることを医師に伝えてほしいと思います。医師側も乳がんを経験したことがあることを考慮したうえで、診察することができ、転移再発の発見につながるからです。

体の表面にしこりがないか自己チェックを

また、体の表面など転移再発を確認できる場所は、自分で触ってしこりがないか確認することも大切です。初発の乳がんの術後には、乳がんの自己チェックについて指導を受けることになります。

毎日である必要はありませんが、月に1度など定期的に自己チェックを続けてほしいと思います。自己チェックの結果、何か異常がみつかったときには、放っておくことなく医師に相談しましょう。

咳・痛み・だるさなどの症状が継続する場合には受診を

乳がんの術後には、風邪をひいて咳が出ることもありますし、腰を痛めることもあるでしょう。症状があるからといって、必ずしもがんのせいではありません。ただし、咳、体のどこかしらの痛みなど、症状が継続する場合には注意してほしいと思います。風邪やちょっとした腰痛の多くは、安静にしていれば1〜2週間くらいで改善していきます。

しかし、1~2週間経っても、これらの症状が改善しなかったり、症状が日ごとに悪くなったりする場合には、躊躇せず医療機関を受診していただきたいと思います。

 

乳がん (清水 千佳子 先生)の連載記事

腫瘍内科の医師として、主に乳がんの術前・術後の薬物療法、進行再発患者の治療を担当。所属する国立国際医療研究センター病院 乳腺センターでは、複数の診療部門、支援部門との連携を実現し、患者さん中心の医療の提供に尽力。患者さんとの対話を大切にしながら、良質なケアを提供することができるよう努めている。

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