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AYA(思春期・若年成人)世代のがんとは? 若い世代のがんの特徴

AYA(思春期・若年成人)世代のがんとは? 若い世代のがんの特徴
清水 千佳子 先生

国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長、乳腺・腫瘍内科 医長

清水 千佳子 先生

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主に15歳~30歳代までの若い世代を、“AYA世代”と呼んでいます。がん全体の中で、AYA世代の患者さんの数は少ないものの、学業・就労との両立や妊娠・出産など、ライフステージ特有のさまざまな課題があることから近年注目されています。今回はAYA世代のがんの特徴や課題とともに、AYA世代の方へのメッセージを、国立国際医療研究センター病院 乳腺(にゅうせん)腫瘍内科(しゅようないか)清水(しみず) 千佳子(ちかこ)先生に伺いました。

AYA(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)世代とは、文字どおり若い世代のことをいい、国内では主に思春期(15歳~)から30歳代までを指します。

AYA世代に特有の問題として、学業や仕事、妊孕性(にんようせい)妊娠する力)などの問題などが挙げられ、日本では近年、AYA世代のがん対策の推進が図られています。

国のがん対策のなかで、主に15歳から30歳代までで年齢を区切って“AYA世代”としている理由として、この世代は医療・療養に関連する制度の面からの支援が不足しているからです。具体的には次のようなことが挙げられます。

医療費の問題

自治体ごとに運営されている子どもの医療費助成制度を利用できるのは15歳まで、がんのような難治の病気は小児慢性特定疾病助成制度を利用して18歳未満まで(状況により20歳未満まで)医療費の助成を受けられます。しかし、その後は自己負担が発生してくるため、一般的には収入が多くないAYA世代は家計の収入に対する医療費の負担が大きくなります。

公的制度の問題

40歳以上65歳未満でも、がんの末期と診断されている方は介護保険を利用できますが、この制度は30歳代までは利用できません。がんの治療を行いながらできるだけご自宅で過ごしたいという患者さんにとって、AYA世代の医療・療養の公的な制度は不十分といえます。

生存率の改善

AYA世代がんの患者さんの生存率の改善が、15歳未満のいわゆる小児がんや40歳以上のがんと比べて劣ることが海外のデータで示され、AYA世代のがんの取り組みの端緒(手がかり)となりました。日本でも、まだこれからという若い世代だからこそ、がんの治療成績とともに、がん治療後の合併症の管理を含めた全体的な予後の改善が期待されます。

AYA世代がんの種類は非常に多様で、発見されるステージもさまざまです。25歳程度までは血液やリンパのがん甲状腺がん、あるいは希少がんと呼ばれる肉腫や脳腫瘍といったまれな腫瘍がほとんどを占めます。20歳代で卵巣や精巣という生殖器の腫瘍、30歳代では子宮頸(しきゅうけい)がんや、乳がん肺がん胃がん大腸がんのような高齢者に多いがんも増えてきます。

子宮頸がんや乳がんなど女性に多いがんが増える20歳代後半から30歳代にかけては、男性より女性の患者さんが多くなります。それ以外で男女差はほとんどありません。

治療成績はがんの種類によって異なりますが、国立がん研究センターの「地域がん登録によるがん生存率データ(2002年~2006年追跡例)」によると、AYA世代がんの10年生存率は約7割とされています。一方、小児がんの治療成績は約8割です。

小児と成人で治療成績に差があることについては、さまざまな背景が考えられています。たとえば、急性リンパ性白血病横紋筋肉腫などいくつかの腫瘍において小児科と成人の領域で治療方法が異なることや、小児に多い腫瘍と成人に多い腫瘍では生物学的な性質が異なる可能性などが指摘されています。

最近では、小児と成人の領域で治療が分断されることを課題と捉え、小児科の臨床試験や成人に対する研究的な治療にAYA世代がんの患者さんが参加できるような、小児と成人の領域でのコミュニケーションが少しずつ進められています。

提供:PIXTA
提供:PIXTA

AYA世代でがんと診断される方の数は年間で約2万人と多くはなく、若い方ががんになることはめずらしいため、患者さん自身も自分ががんだと思って受診することは少ないでしょうし、医師も最初からがんを疑うことはほとんどありません。そういう意味では、症状が出始めてからがんと診断が付くまでに少し時間がかかりやすいことがAYA世代がんの特徴の1つといえます。医療従事者側は、“若い人にもがんはある”という認識を持って診察にあたることは大切です。

患者さんの側も、テレビ番組などで若いがんの患者さんが取り上げられているのを見て自分事ではないように感じている方は多いかもしれません。しかし、  “意外と早くがんになることがある”という意識を持っておくことは大切です。

比較的若くてがんを発症する人が多い家系の方では、遺伝性のがんを考慮する必要があると考えられます。遺伝性のがんは、がん全体の5~10%程度の割合ですが、がんのある方が家系に多いと分かっている場合には、がんの遺伝の可能性を意識することも大事です。

私が専門とする乳がんの分野では、“遺伝性乳がん卵巣がん症候群”という乳がんや卵巣がんになりやすい遺伝的な体質を、親の世代から受け継いでいる方がいることが知られています。がんにかかりやすい遺伝的な体質を持っている方は、比較的若いときに発症する可能性があるため、がん検診が始まる40歳より前から乳房の検診を開始することが推奨されています。

AYA世代の方は、具合が悪くても「仕事や勉強が忙しいから」と放置してしまったり、「若さで乗り切れる」と考えたりしがちです。しかし、病気の発見の遅れにつながる恐れがありますので、不調があると感じたときは我慢せず医療機関にかかることをおすすめします。

がんの診断や治療のために今まで想像していた将来設計を描き直さなくてはならなくなることのショックや苦しさは、計り知れないものがあります。ですが、何か不安や悩みごとがあるときは、「こんなことを相談してもよいのだろうか?」と思うことであっても、我慢せず声を上げてみてください。悩みに寄り添って一緒に取り組んでいきたいと考えている医療従事者がいますし、国も施策のなかでがんと診断されたAYA世代の方への対策を充実するよう取り組みを始めています。まずは身近な病院のスタッフに声をかけていただくことが、見通しにつながる一歩になると思います。

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  • 国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長、乳腺・腫瘍内科 医長

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