きゅうせいりんぱせいはっけつびょう

急性リンパ性白血病

同義語
ALL,リンパ芽球性リンパ腫,急性リンパ芽球性白血病
最終更新日:
2024年04月16日
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2024/04/16
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概要

急性リンパ性白血病とは、リンパ球になる前の細胞ががん化して骨髄(こつずい)の中で異常に増殖する病気です。急性リンパ芽球性白血病やリンパ芽球性リンパ腫などと呼ばれることもあります。急性リンパ性白血病は幅広い年齢で発症する可能性がありますが、特に小児がんの中でもっとも発症頻度が高い病気で、成人後は高齢になるほど発症するリスクが高まるといわれています。

骨髄とは骨の中心部にある組織で、骨髄の中に存在する造血幹細胞が変化して血液細胞が作られます。血液細胞には大きく分けて白血球、赤血球、血小板という3つの細胞があり、そのうち、白血球の一種であるリンパ球は病原体などから体を守る役割があります。

急性リンパ性白血病を発症すると正常な血液細胞が作られなくなり、貧血などさまざまな症状を引き起こします。

治癒が望める病気で、基本的な治療として化学療法が挙げられますが、化学療法のみでは治癒する見込みが少ない場合、抗体療法やCAR-T細胞療法(遺伝子改変T細胞療法)、造血幹細胞移植を行うことがあります。

原因

急性リンパ性白血病は、遺伝子の異常によってリンパ球になるはずの元の細胞ががん化することで発症します。しかし、どのようなメカニズムで遺伝子に異常が生じるのか明確には解明されていません。

症状

異常増殖した細胞は骨髄内の正常な細胞と次々に置き換わるため、骨髄内で正常な血液細胞が作られなくなります。

白血球が減少すると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなることがあります。そのほか、赤血球の減少による貧血で疲労感、ふらつき、息切れなどの症状がみられ、血小板が減少することで出血しやすくなります。

また、がん化して異常増殖した細胞は骨髄内にたまるため、骨や関節の痛みなどの症状を引き起こします。さらに進行すると、がん化した細胞は血液に乗って脳や脊髄などの神経系、肝臓、脾臓(ひぞう)、リンパ節などほかの臓器にも広がります。ほかの臓器ががん化した細胞によるダメージを受けると、頭痛や嘔吐、肝臓や脾臓の腫れによるお腹の張りや痛みなどの症状が現れるようになります。

検査・診断

急性リンパ性白血病が疑われるときは、以下のような検査が行われます。

血液検査

白血球、赤血球、血小板など血液細胞の状態を調べます。また、急性リンパ性白血病はほかの臓器にダメージを引き起こすこともあるため、肝機能など全身状態を確認します。

骨髄検査

骨髄中に異常増殖した細胞の状態を詳しく調べるために骨髄液を採取し、確定診断につなげます。

画像検査

急性リンパ性白血病は全身のさまざまな臓器に広がっていくことがあり、また、ほかに併発している病気がないかを確認するため、CTなどによる画像検査を行います。

染色体検査、遺伝子検査

急性リンパ性白血病は染色体や遺伝子の異常を伴うこともあるため、染色体検査や遺伝子検査を行います。特にフィラデルフィア染色体*があるかどうかで治療方針が異なるため、治療方法を決めるうえでも重要な検査となります。

脳脊髄液検査

急性リンパ性白血病が進行するとがん化した細胞が脳や脊髄などの中枢神経系に広がっていくことがあるため、脳脊髄液を採取してがん化した細胞が含まれていないか調べることもあります。

*フィラデルフィア染色体:22番染色体と9番染色体の組み換えが起こって異常が生じた22番染色体。慢性骨髄性白血病や一部の急性リンパ性白血病患者などでみられる。

治療

一般的に、急性リンパ性白血病の治療では抗がん薬などを用いた化学療法を行います。治癒した場合も、治療を中断すると再発する可能性が高くなるため、繰り返し化学療法を行います。フィラデルフィア染色体がある場合はチロシンキナーゼ阻害薬が併用されます。

一方で、化学療法を繰り返しても治癒する見込みが低い場合や、再発した場合などは抗体療法やCAR-T細胞療法造血幹細胞移植が検討されます。

抗体療法

治療薬が効きにくい場合や再発した場合には、ブリナツモマブやイノツズマブ オゾガマイシンという薬を使用することがあります。いずれの薬も、B細胞*性急性リンパ性白血病に現れる抗原(ブリナツモマブはCD19、イノツズマブ オゾガマイシンはCD22に対応)を認識する抗体を投与することで、がん細胞を特異的に攻撃します。いずれも2018年に保険適用されました。

*B細胞:骨髄の造血幹細胞から生まれるリンパ球の1つ。体内に侵入した異物に対し、抗体を作り出し、免疫応答に関わる。

CAR-T細胞療法(遺伝子改変T細胞療法)

CAR-T細胞療法は、患者から採取したリンパ球の1つであるT細胞に、がん細胞を特異的に認識して攻撃する遺伝子(CAR)を人工的に導入した(CAR-T細胞)のちに、再び患者の体内に点滴で戻す細胞療法です。CAR-T細胞は体内で増殖し、がん細胞を攻撃します。ただし、投与後はサイトカイン放出症候群*など重篤な副作用が起こる可能性もあるため、安全性に配慮して全国でも実施できる施設は限られています。

日本で急性リンパ性白血病に対して使用が認められているCAR-T細胞の製剤はチサゲンレクルユーセルのみで、CD19抗原を発現するB細胞性白血病が対象です(2024年4月時点)。

*サイトカイン放出症候群:サイトカインとは細胞間の情報伝達を担うタンパク質で、細菌などが体内に侵入した際に発熱などの炎症調節に関わり、体を守るはたらきがある。はたらきが過剰になると低血圧や頻脈、呼吸困難、心不全などの症状が現れることがある。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、主に白血病などの血液がんに対して化学療法や放射線治療だけでは治療が難しい場合に、点滴で造血幹細胞を投与(移植)する治療法です。

移植方法としては、患者自身の造血幹細胞を移植する“自家造血幹細胞移植”と、健康なドナーから提供された造血幹細胞を移植する“同種造血幹細胞移植”の2つに大きく分けられますが、白血病には同種造血幹細胞移植が行われます。

治療効果の向上が期待できる一方で、前処置として行われる化学療法や放射線治療による副作用や、ドナーの細胞が患者の臓器を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)が生じる可能性があり、患者の病気の状態や全身状態から移植を受けられないこともあります。

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