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まんせいこつずいせいはっけつびょう

慢性骨髄性白血病

最終更新日
2020年03月27日
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2020/03/27
更新しました。
2017/04/25
掲載しました。

概要

慢性骨髄性白血病とは、白血球、赤血球、血小板といった血液中の細胞のもととなる“造血幹細胞”に異常が生じ、がん化した異常な血液の細胞が増殖する病気です。

白血病の中では非常に進行が遅く、時間をかけてさまざまな症状が現れるため“慢性”とされています。発症初期の段階ではほとんど症状がなく、血液検査で白血球数の異常な上昇などが確認され、偶然発見されるパターンが半数以上とされています。しかし、次第にがん化した血液の細胞が増えていくと、数か月から数年にわたって疲労感や体重減少などの症状が進行し、貧血や出血しやすい、風邪を引きやすくなるといった症状も現れるようになります。症状は比較的落ち着いていることが多いですが、なかには症状が急激に悪化する“急性転化”を生じることもあり、重篤な感染症や出血などを引き起こして死に至るケースも少なくありません。

慢性骨髄性白血病のほとんどは染色体の異常によって引き起こされると考えられており、50代以降の男性に多く発症し、成人の白血病の約20%を占めるとされています。

原因

慢性骨髄性白血病の原因は、23対46本存在する染色体の9番と22番の一部が入れ替わって“フィラデルフィア染色体”が形成されることにあります。

フィラデルフィア染色体には、血液幹細胞にはたらきかけて血液の細胞を必要以上に増殖させる作用を持つ“BCR-ABL遺伝子”があるため、結果として異常を有した血液細胞を次々に増殖させる慢性骨髄性白血病を発症するのです。

なお、慢性骨髄性白血病は染色体上の遺伝子の異常によって引き起こされますが、これは突然変異によるもので親から子へ受け継がれることはありません。

症状

慢性骨髄性白血病は非常に進行速度が遅いのが特徴です。発症したばかりの頃はがん化した白血球が異常増殖することが多いものの、正常の白血球とほぼ同じようなはたらきを持つため自覚症状はほとんどありません。

しかし、がん化した白血球がさらに増殖することで、疲労感や無気力、食欲低下、体重減少、夜間の寝汗などの症状が現れることがあります。また、古くなった血液の細胞を処理する脾臓が腫れやすくなることで、左のみぞおち周辺の痛みや膨満感を覚えることも少なくありません。さらに、血液を止めるための血小板、全身に酸素を運搬する赤血球もがん化して正常に機能しなくなるため、貧血あざができやすいといった症状が現れるようになります。

慢性骨髄性白血病は数か月~数年かけてこれらの症状がゆっくり現れるのが特徴です。しかし、次第に血液中のがん化した細胞が急激に増え、重篤な状態になる“急性転化”と呼ばれる状態になることもあります。この状態になると治療をしても十分な効果が得られにくく、感染や出血を起こしやすくなる“急性白血病”の特徴的な症状が現れるようになり、死に至る危険が高まるとされています。

このような経過をたどることから、慢性骨髄性白血病は“慢性期”、“移行期”、“急性期”と三つの段階に分類されます。無治療の場合、必ず数年で死に至ります。そのため、移行期や急性期に進行する前に適切な治療を開始することが望まれます。

検査・診断

慢性骨髄性白血病の多くは、健康診断などで受けた血液検査で白血球数の異常な上昇が確認されたことをきっかけに発見されています。このような偶然受けた血液検査の結果や症状などから慢性骨髄性白血病が疑われた場合は次のような検査が行われます。

血液検査

血液中の赤血球、白血球、血小板の数を調べる検査が行われます。特に白血球には成熟段階によっていくつかの種類があり、どの成熟段階のものが多くなっているのか詳しい検査が実施されます。“慢性期”には全ての成熟段階の白血球が満遍なく増殖していますが、“移行期”や“急性期”には未熟な白血球が増えてくるため、診断だけでなく病気の経過観察にも有用な検査といえます。

骨髄検査

骨盤の骨に針を刺して骨髄液を採取し、顕微鏡などで詳しく観察する検査です。骨髄の状態を観察することで重症度などを評価することができます。

遺伝子検査・染色体検査

慢性骨髄性白血病はフィラデルフィア染色体が原因であり、確定診断のためにはその存在を証明する検査が必要となります。

具体的には、採取した末梢血あるいは骨髄血を用いてBCR-ABL遺伝子の量を測定する検査、染色体の異常を調べる検査が行われます。フィラデルフィア染色体以外の異常も見つかる場合(付加的染色体といいます)、一般的に予後はより悪いとされています。

治療

慢性骨髄性白血病の治療は分子標的治療薬であるABLチロシンキナーゼ阻害剤が第一選択薬として用いられます。ABLチロシンキナーゼ阻害剤はBCR-ABL遺伝子のはたらきを抑える作用があるため、慢性骨髄性白血病の症状を劇的に改善することができるとされています。現在、5種類のABLチロシンキナーゼ阻害剤(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、ポナチニブ)が日本で利用できますが、現時点(2020年2月)では、初診時にイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブの3剤の使用が認められています。

しかし、副作用が強いときや急性転化などで十分な治療効果が得られないときなどは、それまでに使用していないほかのABLチロシンキナーゼ阻害剤に変更したり、造血幹細胞移植を行ったりすることがあります。また、全身状態などから造血幹細胞移植が困難と判断された場合は、慢性骨髄性白血病を根本的に治す効果はないものの、白血球数をコントロールするため、抗がん剤を使用することもあります。

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