治療
一般的に、急性リンパ性白血病の治療では抗がん薬などを用いた化学療法を行います。治癒した場合も、治療を中断すると再発する可能性が高くなるため、繰り返し化学療法を行います。フィラデルフィア染色体がある場合はチロシンキナーゼ阻害薬が併用されます。
一方で、化学療法を繰り返しても治癒する見込みが低い場合や、再発した場合などは抗体療法やCAR-T細胞療法、造血幹細胞移植が検討されます。
抗体療法
治療薬が効きにくい場合や再発した場合には、ブリナツモマブやイノツズマブ オゾガマイシンという薬を使用することがあります。いずれの薬も、B細胞*性急性リンパ性白血病に現れる抗原(ブリナツモマブはCD19、イノツズマブ オゾガマイシンはCD22に対応)を認識する抗体を投与することで、がん細胞を特異的に攻撃します。いずれも2018年に保険適用されました。
*B細胞:骨髄の造血幹細胞から生まれるリンパ球の1つ。体内に侵入した異物に対し、抗体を作り出し、免疫応答に関わる。
CAR-T細胞療法(遺伝子改変T細胞療法)
CAR-T細胞療法は、患者から採取したリンパ球の1つであるT細胞に、がん細胞を特異的に認識して攻撃する遺伝子(CAR)を人工的に導入した(CAR-T細胞)のちに、再び患者の体内に点滴で戻す細胞療法です。CAR-T細胞は体内で増殖し、がん細胞を攻撃します。ただし、投与後はサイトカイン放出症候群*など重篤な副作用が起こる可能性もあるため、安全性に配慮して全国でも実施できる施設は限られています。
日本で急性リンパ性白血病に対して使用が認められているCAR-T細胞の製剤はチサゲンレクルユーセルのみで、CD19抗原を発現するB細胞性白血病が対象です(2024年4月時点)。
*サイトカイン放出症候群:サイトカインとは細胞間の情報伝達を担うタンパク質で、細菌などが体内に侵入した際に発熱などの炎症調節に関わり、体を守るはたらきがある。はたらきが過剰になると低血圧や頻脈、呼吸困難、心不全などの症状が現れることがある。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植は、主に白血病などの血液がんに対して化学療法や放射線治療だけでは治療が難しい場合に、点滴で造血幹細胞を投与(移植)する治療法です。
移植方法としては、患者自身の造血幹細胞を移植する“自家造血幹細胞移植”と、健康なドナーから提供された造血幹細胞を移植する“同種造血幹細胞移植”の2つに大きく分けられますが、白血病には同種造血幹細胞移植が行われます。
治療効果の向上が期待できる一方で、前処置として行われる化学療法や放射線治療による副作用や、ドナーの細胞が患者の臓器を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)が生じる可能性があり、患者の病気の状態や全身状態から移植を受けられないこともあります。
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