乳がんの手術で乳房を失った患者さんだけにしか分からない喪失感と向き合い、再び前向きな気持ちで生活を送れるようになっていただくこと―患者さんの個性に合わせたテーラーメイドの乳房再建術を可能にする新しい技術とはどのようなものなのでしょうか。
横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科部長の佐武利彦准教授は「穿通枝皮弁(せんつうしひべん)」による乳房再建術において、日本でトップクラスの技術と実績を持つパイオニアです。この記事では数回に分けて乳房再建術の最前線についてお話を伺いました。
乳房再建とは、乳がん手術によって切除した乳房を形成外科手術によって新しくよみがえらせることをいいます。手術方法によって自家組織(患者さん自身のからだの組織の一部)を使う方法と、インプラント(人工物)を使う方法の2種類に大別されます。
乳がんの診断結果によって、患者さんと医師が話し合い、治療方針を決定します。選択した手術方法によって切除の程度や乳房再建の方法も異なります。
健常な乳房の組織を残しますが、広めに切除して変形が残る場合、失われた部分を同時再建で補います。
がんと共に乳房をすべて切除しますが、同時に再建します。
がんと共に乳房をすべて切除し、一定の期間をおいてから改めて人工物または自家組織で再建します。
ちなみに、抗がん剤による化学療法を受けているときには乳房再建はできません。傷が治りにくく、免疫力が低下しているため創感染も起こしやすくなっているためです。また、転移や再発がないか注意深く経過観察を行ってから再建することもあります。主治医の許可が出てから再建を行うのがよいでしょう。
乳房再建は保険診療で行われる場合と、自費診療として行われる場合があります。下には当院における、乳房再建および乳頭乳輪再建の費用の概算について表にまとめています(保険3割負担の場合、2019年4月時点)。
ただし、費用は入院期間、麻酔法、手術内容、片側もしくは両側などによって違いますので、詳細は治療をお受けになる施設にお問い合わせ下さい。
※乳房再建では高額医療費制度を適用できます。年齢や所得に応じて患者さんが支払う医療費の上限が定められています。
※乳房再建に関連して行われる脂肪注入、脂肪吸引、健側の豊胸術、縮小術、固定術、乳輪乳頭への刺青は、保険適応がなく自費診療として行われることが一般的です。
※保険制度での医療費は改定される場合がありますので、最新の情報をご確認下さい。