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インタビュー

穿通枝皮弁による乳房再建の特徴

穿通枝皮弁による乳房再建の特徴
佐武 利彦 先生

富山大学附属病院 形成再建外科・美容外科 診療科長/特命教授

佐武 利彦 先生

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この記事の最終更新は2015年10月07日です。

富山大学附属病院 形成再建外科・美容外科 診療科長の佐武 利彦(さたけとしひこ)特命教授は「穿通枝皮弁(せんつうしひべん)」による乳房再建術に取り組まれています。穿通枝皮弁法の現在の状況、そしてこれからについてお話を伺いました。

穿通枝皮弁では、お腹やお尻、太ももなどから皮膚と脂肪組織を移植します。その際、血流を保つために筋肉ごと血管を持ってくるのではなく、筋肉の中を通っている血管(穿通枝を含む)だけを取り出すのが大きな特徴です。

穿通枝は筋肉の中、あるいはその下を通る太い血管から枝分かれして、脂肪層や皮膚に向かって走っている細い血管です。この穿通枝と、穿通枝の血液の流れの先にある脂肪層と皮膚が移植されます。

また、背中や胸のわきなど乳房から近いところからの移植であれば、血管がつながったままの移植が可能で、手術時間も3時間ほどで済みます。これを「有茎穿通枝皮弁法」といいます。これは欠損が小さい場合に限られます。

お腹やお尻、太ももなどから移植する場合は、いったん血管を切り離して組織をとり、改めて胸の血管とつなぎ合わせます。これを「遊離穿通枝皮弁法」といい、超マイクロサージャリーと呼ばれる高い技術と経験を要する手術です。手術に要する時間は6〜8時間ほど、長い場合には12時間近くに及ぶ場合もあります。

穿通枝皮弁による乳房再建術に用いられるドナー部

穿通枝皮弁のメリットは、組織をとるドナー部の機能をできるだけ損なわずに、血行がよい、温かく柔らかな乳房を作ることができる点です。また、体のさまざまな部位から組織をとることができ、患者さんが望むところから移植することができるのも、メリットのひとつです。

一方デメリットとしては、胸以外に傷が残ってしまうことです。組織をとってくるドナー部に傷ができてしまう点は、インプラント法にはないデメリットといえます。

また、血管をつなぎあわせた部分に血栓(血の塊)ができることがあります。そのほか、1本の穿通枝で大きすぎる範囲の皮弁への血流をまかなおうとするため、血流が悪くなって部分壊死や脂肪壊死という状態になります。この場合、固いしこりができます。

しかし、当院では術後48時間は血流の状態などを1時間おきにチェックしていますので、何か問題があれば再手術などの対応ができます。

自家組織による乳房再建術の進歩を振り返ると、腹直筋を使う筋皮弁法が「有茎腹直筋皮弁」から「遊離腹直筋皮弁」へと改良されてきた経緯があります。これらをそれぞれ第1世代、第2世代とすれば、穿通枝皮弁は「第3世代」といえるでしょう。そして、すでに「第4世代」の術式が使われはじめています。

第3世代の穿通枝皮弁が腹直筋の裏側から表面に向かって走る穿通枝を使うのに対し、第4世代では皮膚と脂肪に直接つながっている血管を使います。これを浅下腹壁動脈皮弁といいます。浅下腹壁動脈皮弁では、手術中に腹直筋にまったくダメージを与えることがありませんが、穿通枝皮弁よりもさらに細い血管をつなぐ必要があり、高度な技術が要求されます。

浅下腹壁動脈皮弁

浅下腹壁動脈皮弁はビキニラインに近い下腹部の深いところにありますが、誰にでもみつかるというわけではありません。また、つなぎ合わせる先の血管との適合の問題もあり、まだすべての患者さんに行うことはできません。

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