乳がんとは、乳房の乳管や小葉といった場所から発生するがんです。女性のがんの中ではもっとも多いがんで、日本人女性の11人に1人が乳がんにかかるとされています。また、女性のがんによる死亡原因では5番目に多く、乳がんで命を落とす女性はがん全体の約9%を占めています。発症する年齢は日本の場合、30歳代から増加して50歳代前後でピークに達し、その後は徐々に減少していきますが、欧米では年とともに増加していきます。
このように乳がんにかかる数は多いですが、乳がんは乳房にしこりやえくぼのようなくぼみができるといった特徴的な症状があるため、ほかのがんと比べてセルフチェックによって早期発見できる可能性が高いがんです。そこで本記事では、乳がんの早期発見のために重要なセルフチェックについて詳しく解説していきます。
乳がんは女性がかかるがんの中でもっとも多いがんとして知られていますが、それと同時に早期発見できれば予後のよいがんとしても知られています。国立がん研究センターの報告による、2010~2011年の乳がんの5年生存率(診断されてから5年間での生存率)は以下のとおりです。
以上の数値からも分かるように早期がんでの生存率は高く、高い確率で完治が期待できます。さらに、全てのがんの生存率を平均した数値が58%であるため、乳がんはほかのがんと比べても生存率が高いといえます。一方、Ⅳ期の進行がんでは 生存率はI期の半分以下となります。
このことからも、早期発見に努めることは非常に重要です。
乳がんの治療法には、手術・薬物療法・放射線治療があります。これはがんのステージ(進行度合い)や性質(サブタイプ)などによって選択できる治療法は異なりますが、より早期に治療を開始したほうが治療の選択肢が広がります。また、早期発見であれば高い確率で完治を目指すことができるとされているため、この点においても早期発見が重要といえます。
乳がんの早期発見のためには定期的ながん検診に加え、日頃からセルフチェックを行うことで早期に異変を見つけることが可能です。
乳がんでは通常痛みなどの目立った症状が現れることはありません。自覚できる症状としては乳房に生じるしこりや変形が挙げられます。このような症状は見たり触れたりすることで異変に気づけるため、小まめに自身の乳房を触って異常がないかどうかをセルフチェックすることが大切です。乳がんのセルフチェックの詳細は以下のとおりです。
鏡の前に立ち、以下のチェックをします。
また、乳房の輪郭などに変化がないかもチェックするとよいでしょう。
セルフチェックを行うタイミングは、月経がある場合は月経が終わった約3日後に、閉経後の場合は月に1度決まったタイミングで行います。セルフチェックを行い、乳房にしこりや腫瘍などの違和感がないか、分泌物がないかを確認した結果、気になる箇所があれば放置せずに受診を検討しましょう。乳がんの診療科は婦人科ではなく外科、もしくは乳腺外科です。
早期発見のためにはセルフチェックに加えて定期的に検診を受けることも非常に重要です。日本では、40歳以上の女性の方を対象に2年に1回の乳がんの検診の受診を推奨しています。検診ではセルフチェックでは触れない小さなしこりも発見することができるため、セルフチェックで特に異常が見受けられない方でも定期的な乳がん検診の受診を検討しましょう。
検診で異常があれば精密検査が必要となります。精密検査では病変の細胞・組織を採取し、がんであるかどうかの検査を行い (細胞診・組織診)、確定診断のためには組織診が行われます。
がんの中でも乳がんは自身で触れることで症状を確認することができるため、セルフチェックを行うことで早期発見も可能です。早期発見できれば、乳房全摘出ではなく部分切除などの治療法を選択できる可能性があります。ただし、セルフチェックのみでは必ず発見できるわけではないので、定期的な乳がん検診も受けるようにしましょう。
大阪府済生会中津病院 乳腺外科 顧問
河野 範男 先生の所属医療機関
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