
乳がんにおけるMRI診断は、乳房の温存手術を希望する場合に、手術前に乳腺の中で乳がんがどれだけ広がっているかを診断するために使われるケースが一番多くなっています。これを「広がり診断」と呼んでいます。「広がり診断」の実際について、乳腺専門医である京都府立医科大学放射線診断治療学講座講師の後藤眞理子先生にお話を伺いました。
現在日本では、乳房MRIは乳がんの確定診断がついた後、手術前に乳がんの広がり具合を見るために行なわれることが大半です。撮影は検査台に取り付けられた乳房専用コイルにうつ伏せで寝て行なわれます。コイルには穴が開けられており、この穴に左右の乳房を垂らす形で検査台に寝ます。前半は造影剤なしで、後半は造影剤を入れながら撮影します。
前述したように、乳腺組織は分泌物を作る小葉と分泌物が通る乳管からなっており、乳がんのほとんどは乳管上皮から発生します。乳がんのできる部位として最も多いのは、乳腺組織の多い外側上部です。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」あるいは「乳管内がん」、乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを「浸潤がん」といいます。がんが小さな範囲に限局していれば乳房温存療法の適応となるため、MRI診断では乳がんが乳腺内でどれだけ広がっているかを診断します。
広がり診断に関してMRIは非常に精度の高い画像が得られる一方で、造影剤が正常の乳腺組織や良性病変にも入っていくため、これを乳がんの広がりとして過大に拾いすぎるという欠点もあります。がんが広がっていると思ったら実は広がっていなかったということもあるわけです。欧米からは、乳房MRIを手術前に撮影するのが一般的になってから、小さな乳がんに対して乳房切除手術が行われることが増えた、という報告もあります。私自身の経験でいうと、乳がんの広がりか、正常の乳腺組織の造影効果かの区別は時に非常に難しいことがあります。その場合、外科の先生にも区別がつきにくいということをお伝えして、MRIで見つかったがんの広がりが疑われる部位について、超音波による診断をあらためて行なっていただいたうえで(これをセカンドルックと呼んでいます)、患者さんとよく相談してどのような手術を行なうか決めていただくようにしています。
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