へるにあ

ヘルニア

最終更新日
2022年11月24日
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2022/11/24
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

ヘルニアとは、臓器が本来あるべき場所から体の組織が弱い部分や隙間を通って突出する病気の総称です。

腸管に生じるものを一般的に“脱腸”と呼ぶこともありますが、腰痛などの原因となる椎間板(ついかんばん)ヘルニアや脳ヘルニアもヘルニアの一種です。このページでは主に消化管に生じるヘルニアについて解説しますので、椎間板ヘルニアや脳ヘルニアは別記事をご参照ください。

消化管に発生するヘルニアは、鼠径(そけい)ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔(へいさこう)ヘルニア、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアなどがありますが、もっとも頻度が高いのは鼠径ヘルニアです。

発症すると、お腹に力を入れたときや立ち上がったときなどに腸の一部が突出して柔らかいしこりを触れるようになります。軽症な場合は力を抜いたり横になったりすると元の状態に戻りますが、腸管が突出する部位が大きい場合は元に戻らなくなることも少なくありません。

また、腸管が隙間にすっぽりはまり込んで締め付けられる状態になると、腸管の血流が途絶えて壊死(えし)*する危険もあります。このような状態を“嵌頓(かんとん)ヘルニア”と呼び、緊急手術の適応となります。

*壊死:組織の一部が死に至ること

原因

ヘルニアの原因はタイプによってさまざまです。

もっともよくみられる鼠径ヘルニアは、足の付け根の“鼠径部”という組織が加齢によってもろくなることが原因で引き起こされます。

乳幼児にみられる鼠径ヘルニアは生まれつき腹膜が陰部に向かって突出している“腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)”が出生後も閉鎖されずに残っていることが原因で発症します。太ももの付け根の内側付近に発症する大腿ヘルニアは高齢女性に多くみられ、成人の鼠径ヘルニアと同じく大腿動脈と大腿静脈が通過する“大腿輪”と呼ばれる隙間が弱くになることで発症すると考えられています。

また、閉鎖孔ヘルニアは骨盤の座骨と恥骨によって形成される穴から腸管が脱出するタイプのヘルニアです。閉鎖孔は脂肪などに覆われているため腸管が脱出することはありませんが、高齢のやせ型女性などでは覆われる脂肪が薄くなってヘルニアを引き起こすことがあります。

さらに、お腹の手術をした際に切開した部位の筋肉が薄くなることで、力を入れたときに腸管の一部が突出するようになる腹壁瘢痕ヘルニアも知られています。

症状

ヘルニアは突出する位置や隙間の大きさによって症状が異なります。

いずれのタイプも重たいものを持つことや排便する際に、お腹に力が入ったり立ち上がったりすると、隙間などから腸管の一部が突出して柔らかいふくらみを触れるようになります。多くは力を抜くと自然と腸管が元の位置に戻ってふくらみは触れなくなりますが、隙間が大きい場合などは常に腸管が突出した状態となります。また、突出した腸管の容積が大きい場合や隙間が狭い場合などは腸管がすっぽりとはまり込んで元に戻らなくなります。このような状態を嵌頓ヘルニアと呼びます。腸管が締め付けられて血行が悪くなるため腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状がみられるのが特徴です。特に大腿ヘルニアと閉鎖孔ヘルニアは嵌頓ヘルニアになりやすいため注意が必要です。

なお、ヘルニアは嵌頓状態にならなければ腸管の一部が突出しても軽度のつっぱり感などが生じるのみで強い痛みが引き起こされることはありません。しかし体の外からは見えず、閉鎖孔の場合は閉鎖孔を通る神経が刺激されて太ももの内側に痛みやしびれが生じることもあり、足の病気と間違われる原因となります。

検査・診断

ヘルニアが疑われるときは次のような検査が行われます。

触診

ヘルニアの多くは力を入れると腸管が突出し、力を抜いたり手で押し込んだりすることで元に戻ります。このような特徴の有無を調べるために触診は非常に大切な検査です。

画像検査

突出の状態などについて詳しく調べるために超音波検査やCT検査などの画像検査を行う必要があります。特に大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアは触診だけでは分かりにくいことが多いため、確定診断のために必須の検査です。

血液検査

嵌頓ヘルニアが疑われる場合は、炎症の程度などを調べるために血液検査を行うことがあります。

治療

ヘルニアの根本的な治療は手術で腸管が脱出している隙間をメッシュなどの人工物で覆うことです。

一方、成人の鼠径ヘルニアや腹壁瘢痕ヘルニアはごく軽度なものであれば嵌頓ヘルニアを生じることは少ないため、手術をせずにお腹に力が入らないよう心がけるなど生活の改善を試みながら経過を見ていくことも少なくありません。しかし、上述したように大腿ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアは嵌頓ヘルニアを起こしやすいため、診断された場合は原則的に手術が必要となります。

また、嵌頓ヘルニアを発症した場合は、緊急手術を行って隙間にはまり込んで血流が阻害されている腸管を元に戻したり、切除したりする治療を行わなければならないケースも少なくありません。

予防

乳幼児期のヘルニアは生まれつきの病気であり、成人のヘルニアは加齢などによる組織の脆弱性が発症の原因となります。そのため、確実な予防法はないのが現状です。

しかし、ヘルニアはお腹に力が入ることをきっかけに発症することが多いため、重いものを持たないこと、便秘や咳などお腹に力が入りやすくなる症状があるときは早めに治療をすることが大事です。特に、肥満や糖尿病があると感染症などヘルニア手術時の合併症が起こりやすいことが分かっていますので注意しましょう。

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