概要
肛門がんとは、肛門に生じたがんのことを指します。がん全体のなかでは、肛門がんは比較的まれな部類といえます。
肛門がんの発症リスクは、以下の場合に高くなります。
肛門がんを発症すると、しこり(デキモノ)やかゆみ、出血などの症状が現れます。
肛門がんは、がん細胞のタイプに応じて細かな病名に分けられます。また、治療方針や経過もそれぞれ異なります。肛門がんのなかでも多いタイプは、扁平上皮がんと呼ばれるタイプのがんです。扁平上皮がんには、手術療法や化学療法、放射線療法などを組み合わせた集学的治療を行います。
原因
ヒトパピローマウイルスの感染
肛門がんは、ヒトパピローマウイルスと呼ばれるウイルスに感染すると発症リスクが高まるといわれています。子宮頸がんの原因ウイルスとして知られているヒトパピローマウイルスは、性交渉を通して感染します。
肛門周囲にヒトパピローマウイルスが感染すると肛門がんの発症リスクが高まるため、肛門性交をする方においてリスクが高まります。
10年以上続く痔瘻
また肛門がんは、痔瘻と関連して発症するリスクがあることも知られています。痔瘻に関連したがんは、痔瘻が長年続いている場合に生じる可能性が出てきます。特に痔瘻の病変が深くに及ぶ場合は、がんの発生に注意する必要があります。
その他
50歳以上の方、喫煙習慣がある方も肛門がんの発症リスクが高まるといわれています。ただし、肛門がんの原因がすべて明らかになっているとはいえず、今後あらたな原因が解明される可能性もあります。(2018年2月時点)
症状
肛門の周囲にしこりができます。病変部位は出血しやすく、ちょっとした刺激で出血することもあります。肛門周囲のかゆみが生じることもあります。
肛門がんは、慢性的な痔瘻に関連して発症することもある病気です。痔瘻とは、肛門周囲に蓄積した膿が一部外へ出てくる状態です。痔瘻に関連して起こる肛門がんは、長年痔瘻を放置することで発症します。かねてから痔瘻があり、痛みの質や膿の質が変わったといった症状の変化がある際には、がんの発症も考えられます。
検査・診断
肛門がんを診断するためには、肛門局所を視診や触診により丁寧に診察することが重要です。肛門の少し奥に入った部分を調べるために、直腸鏡や肛門鏡と呼ばれる器具を用いて診察をします。
肛門がんを正確に診断するためには、病変の一部を採取して顕微鏡で詳細に評価する病理検査が必要です。採取した組織を顕微鏡で観察することにより、がん細胞に特徴的な変化を確認します。肛門に発生するがんには、いくつものタイプがありますが、この検査によりどのがんであるのかを評価することもできます。
また、がんの診断がついた際には、病変が体のどの部位に広がっているかを評価することも必要となります。超音波検査やCT、MRIなどの検査を行い、どの臓器に病変があるかを調べます。これらの検査を通して病期(ステージ)の診断を行い、治療方針を決定します。
治療
肛門がんの治療方針は、がんの種類や広がりなどによって大きく異なります。肛門がんのなかでも多い扁平上皮がんは、手術や放射線療法、化学療法を適切に組み合わせて治療します。
肛門がんが生じる部位の近くには、「肛門括約筋」と呼ばれる筋肉があります。肛門括約筋は、適切な排便機能を調節するために不可欠な筋肉です。がんの広がり具合によっては肛門括約筋を手術で同時に切除しなければならないこともあり、人工肛門を造設する必要が生じることもあります。
扁平上皮がんは、特に化学療法と放射線療法の組み合わせが効果的であることが知られています。手術に加えて、放射線療法と化学療法を併用することが、人工肛門の造設を避けるための手段として利用されることもあります。
肛門がんは、長年放置された痔瘻と関連して発症することもあります。そのため、痔瘻に気付いた時点で適切な治療を受けることが、肛門がんの予防につながるという面もあります。
医師の方へ
「肛門がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします