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ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンとは?
性器に感染するハイリスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)は感染しただけでは症状の出ないウイルスで、多くの方が感染に気付かないまま普通に生活を送っています。ローリスク型のHPVのうち、HPV6...
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ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンとは?

公開日 2017 年 12 月 14 日 | 更新日 2017 年 12 月 14 日

ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンとは?
川名 敬 先生

日本大学医学部産婦人科学系産婦人科学分野 主任教授 / 日本大学医学部附属板橋病院産婦人科 部長

川名 敬 先生

性器に感染するハイリスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)は感染しただけでは症状の出ないウイルスで、多くの方が感染に気付かないまま普通に生活を送っています。ローリスク型のHPVのうち、HPV6型、11型は、感染すると約70%の確率で性感染症の1つである尖圭コンジローマを発症します。一方、感染したヒトパピローマウイルス(HPV)の種類や個人の体質によっては、子宮頸がんや尖圭コンジローマなどの重い疾患が引き起こされる可能性があるため、病気の原因となり得るヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防しておくことが重要です。

今回は、HPV予防ワクチンとHPV治療薬の今後の展望について、日本大学医学部産婦人科学系産婦人科学分野主任教授・川名敬先生にご解説いただきました。           

ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンとは?

HPV感染症には予防が効果的

ヒトパピローマウイルス(HPV)はおよそ200種類の型が発見されている、ごくありふれたウイルスです。

なかでも性交渉により感染する粘膜性器型HPV(以下、ヒトパピローマウイルス(HPV))はほとんどの大人が感染しており、2017年現在1度感染したら根治する方法はありません。ヒトパピローマウイルス(HPV)は感染しても症状の出ないことが特徴ですが、感染した種類(HPV型)によっては、がんや性感染症を引き起こす可能性があります。特に女性特有のがんである子宮頸がんを引き起こすことがあるため、大人の女性は定期的にがん検診を受けることが大切です。

また日本では、ワクチン接種によってヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防することができます。いつ、どのHPV型に感染するかは予測できないため、感染する前にワクチン接種で自衛することが効果的です。

HPV予防ワクチンは2種類ある

HPV予防ワクチンは2種類あります。子宮頸がんを予防するサーバリックス(HPV16、18型に対応)、子宮頸がんと尖圭(せんけい)コンジローマを予防するガーダシル(HPV6、11、16、18型に対応)です。どちらを接種するのかは希望により選択することができます。

HPV予防ワクチン

子宮頸がんを予防する意義

子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染したことをきっかけに発症するがんです。さまざまな種類があるヒトパピローマウイルスのなかでも主にHPV16型・18型の感染によって引き起こされます。

日本では2017年現在、年間で約1万人の方が子宮頸がんに罹患しているといわれ、2500~3000人*の方が亡くなっています。子宮頸がんが発病する年齢は40歳がピークですが、がんの進行が早い16型・18型に感染すると20代などの若年層でも多くの方が発がんします。

ワクチンの接種で16型・18型を予防することができれば、若年層の子宮頸がんが激減することが推測されます。

子宮頸がんについては『子宮頸がんとは。若い女性にも頻発する疾患』にて詳しく解説しています。 

2500~3000人……出典:国立がん研究センターがん対策情報センター(2011年)

尖圭コンジローマを予防する意義

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が感染した部位(性器など)にイボができる性感染症です。主にHPV6型・11型の感染によって引き起こされます。

尖圭コンジローマはがんではありませんが下記のようなリスクがあるため、予防することは非常に有意義です。

※母子感染する

尖圭コンジローマは接触感染する疾患で、母子感染のリスクがあります。尖圭コンジローマに罹患している母親が治療しないままお産(経腟分娩)をすると、高い頻度で母親の膣内から胎児の喉に感染します。感染すると生後6か月~2歳頃から、再発性呼吸器乳頭腫症と呼ばれる喉のイボができ始めます。イボによって声がかすれる(嗄声:させい)ため多くの場合は早期に治療を始められますが、症状が重篤な場合は窒息して死亡するケースがあります。

※完治せず再発する

尖圭コンジローマの治療法は、レーザーによるイボの除去や、イボの再発を抑制する薬の服用が一般的です。しかし一度発症すると完治せず、3か月に1回など頻繁に再発を繰り返します。また、妊娠中など免疫力が低下しているときには再発しやすくなるなど、女性にとってストレスになりやすい疾患です。

詳しくは『女性の尖圭コンジローマの症状』にて解説しています。

ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンの効果は?

母と娘

HPV予防ワクチンの効果

HPV予防ワクチンの効果が持続する期間については、まだはっきりとした研究データは報告されていません。しかし少なくとも10年間は効果が持続することがわかっています。2007年に初めて予防接種が行われてから10年経った現在、ワクチンを接種した患者さんがHPV16型・18型に感染したという報告はありません。

ワクチンを接種するのに適した年齢は12~16歳

HPV予防ワクチンは厚生労働省より定期接種の義務が定められています。日本では、まだヒトパピローマウイルス(HPV)に感染していないとされる思春期の女性(12~16歳)を対象として無料接種が実施されています。

17歳以降の女性も、20歳頃までは予防接種を受けたほうがよいといわれています。すでに性交渉を経験していたとしても、20歳前後では16型・18型のようなハイリスクHPVには感染していない女性のほうが多く、今後の感染を防ぐことができると考えられるためです。定期接種の期間を過ぎると無料にはなりませんが、自費であればいつでも受けられます。

高齢者の場合、子宮頸がん予防ワクチンは不要

40代以上になると、20~30代に比べて、新しくヒトパピローマウイルス(HPV)に感染する可能性は低くなります。特に閉経している女性の場合は子宮頸がん予防ワクチンの接種は不要です。女性は、閉経してホルモンが減少すると子宮頸がんのできる場所が中のほうへ入り込み、子宮頸部にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染しなくなるためです。

ただし高齢者が子宮頸がんにならないというわけではありません。患者さんのなかには80代を越える年齢の方もいます。高齢で発がんする方のほとんどは、若い頃すでにヒトパピローマウイルス(HPV)に感染していたのだと考えられます。

ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチン接種実施状況

先進国のHPV予防ワクチン接種実施状況

2017年現在、海外でワクチンを導入している国はとても多く、特に先進国では定期接種が義務付けられて無料接種が実施されています。イギリスやオーストラリアなど、学校内でワクチン接種を実施している国もあります。

HPV予防ワクチン接種の有用性

2013年6月に厚生労働省が接種勧奨を中止しているように、日本では副反応が懸念されています。しかし、海外でワクチン接種の取り組みを止めた国はありません。厚労省の研究班の報告によれば(2015年9月17日「第15回副反応検討部会」)、ワクチン接種に誘発されたといわれる疾患の発生率は、既知の疾患の自然発生率と比べて明確な差が見られないということです。また、ワクチン接種後に重篤な症状が現れて回復しなかったいずれのケースでも、ワクチン接種との因果関係は不明とされています。

医療従事者の間ではワクチン接種の必要性は知られていますが、正しい情報はなかなか報道されにくいのが現状です。マスメディアは、市民の声を取り上げて広く報じます。子宮頸がんの患者さんをはじめとした市民が予防ワクチンの重要性を訴えることが、接種勧奨の再開につながるのではないでしょうか。

ヒトパピローマウイルス(HPV)予防ワクチンの見通し

川名先生

HPV予防ワクチンは接種しやすくなる可能性がある

これまで、HPV予防ワクチンは3回にわたって接種することが一般的でした(0か月、1か月、6か月)。しかし9~14歳の女性は免疫がつきやすいこともあり、WHOや米国のガイドラインでは2回の接種を標準的な接種回数*としています。日本でも今後は2回の接種でよいことになる可能性があります(0か月、6か月もしくは12か月)。HPV予防ワクチンは筋肉注射(深いところに注射する)で筋肉痛のような痛みが出るため、少ない回数で予防接種を実施すれば患者さんの負担が減ると考えられています。ただし大人の場合は免疫がつきにくいため3回が推奨されています。

標準的な接種回数……『HPVワクチンに関するWHOポジションペーパー2017』において、14歳までの若年者の場合、2回接種の効果は3回接種に劣らないとしている。

HPV治療薬の今後の展望

ヒトパピローマウイルス(HPV)の治療薬は今のところ実用化されていません。しかし2017年現在、私は、既に感染して子宮頸部の上皮(じょうひ)内に腫瘍ができ始めた女性向けに免疫をつける薬を世界で初めて開発し、治験段階まで研究を進めてきています。乳酸菌のサプリメントのような飲み薬で、子宮頸部をはじめとする生殖器、腸管、喉など粘膜全般に効果がある医薬品です。実用化の際には婦人科などで処方されることを見込んでおり、HPV感染に伴う発症例が減少することを期待しています。

読者の方へのメッセージ

ヒトパピローマウイルス(HPV)はありふれたウイルスですが、感染すると、個人の体質やHPV型によって性感染症やがんにつながってしまうことがあります。日本では現在、ワクチン接種によって予防することができるので、その恩恵を無駄にしないでほしいと思います。

また、ヒトパピローマウイルス(HPV)は感染しても症状が出るウイルスではありません。症状の有無に頼らず、定期的にがん検診を受けるようにしてください。

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症(川名 敬先生)の連載記事

1993年東北大学医学部卒。東京大学病院産科婦人科准教授を経て、2016年より日本大学医学部産婦人科学系産婦人科学分野で主任教授を務める。専門分野は婦人科がん治療。子宮頸癌前癌病変(CIN3)の初の治療薬として、乳酸菌を使用した経口薬を開発した。子宮頸がんの癌治療を第一線で行う臨床家であると同時に、子宮頸がんに対する新規治療ワクチンや、ヒトパピローマウイルス(HPV)の研究者として世界的に知られている。

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