咽頭がんとは、喉にできるがんの総称です。胃がんや肺がんに比べるとあまり知名度の高いがんではありませんが、年々増加傾向にあるといわれています。そもそも咽頭とはどのような器官で、がんになったときにどういった症状が現れるのでしょうか。また、咽頭がんの原因や診断方法、治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、咽頭がんとはどのような病気なのかについて解説していきます。
咽頭とは鼻の奥から食道につながり、空気と食物の通り道となる器官です。そのうち、鼻の奥の咽頭の上部を上咽頭、中間部を中咽頭、もっとも食道に近い下部を下咽頭と呼びます。
それに伴い、咽頭がんは咽頭のどの部分にできたかによって上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分けられます。
咽頭がんの発症頻度は発症部位によって異なります。日本で1年間に咽頭がんと診断された人の数は、2018年のデータで上咽頭がんが約800人、中咽頭がんが約2,200人、下咽頭がんが約2,000人です。日本の中で頻度が高い胃がん(年間約136,000人)や肺がん(年間約113,000人)と比べると数は少なく、比較的珍しいがんの1つといえるでしょう。
男女別でみると男性のほうが咽頭がんと診断される頻度が高く、女性と比べると中咽頭がんは5倍、下咽頭がんは10倍の差があります。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
咽頭がんに共通する原因は過度の飲酒と喫煙です。特に飲酒によって顔が赤くなりやすい人ほど、飲酒により咽頭がんにかかりやすくなるといわれています。
また、上咽頭がんと中咽頭がんはウイルスの感染が発症に関わっているといわれています。
上咽頭がんは、EBウイルス(エプスタインバールウイルス)の感染が発症に関わっていると考えられています。EBウイルスは唾液を介して感染するウイルスであり、日本人のほとんどが幼い頃に感染するともいわれています。
EBウイルスは上咽頭がんの原因の1つとして考えられているものの、EBウイルスが原因でがんになった人からほかの人へがんが直接感染することはありません。
中咽頭がんの発症には、ヒトパピローマウイルス(HPV)が関わっています。HPVとは皮膚や粘膜の表面に存在し、皮膚同士や粘膜同士が接触することで感染するウイルスのことです。
HPVには100種類以上のタイプがあり、一部のウイルスは高リスク型と呼ばれ、いくつかのがんの発症に関わっているといわれています。高リスク型HPVの多くは子宮頸がんの原因として知られていますが、オーラルセックスといった性行為の多様化が、中咽頭がんが増える原因の1つであるともいわれています。
一部の中咽頭がんはHPVと無関係で、飲酒や喫煙が原因と考えらます。
初期の上咽頭がんは、耳が塞がったような感覚(耳閉感)や鼻づまりが症状として現れることが一般的とされています。進行とともに痛みが現れ、がんが大きくなると周囲の神経を圧迫して眼球や舌、咽頭の動きに影響を及ぼすことがあります。
また、首のリンパ節への転移を起こしやすいためリンパの腫れで異変に気がつくこともあります。
初期の中咽頭がんは、喉の異物感や違和感、飲み込む際の喉の違和感といった症状が現れることが一般的です。進行するにつれて喉の痛みが強くなる、ものが飲み込みにくい、しゃべりにくいなどの症状が現れることがあります。がんがさらに大きくなると、強い痛みや喉からの出血、くぐもったような声、呼吸困難などの症状が現れることもあります。
しかし、このような症状は必ず出現するわけではなく、首のしこり(リンパの腫れ)のみが現れることもあります。
下咽頭がんの代表的な初期症状は、喉の痛みや食事の際の食べ物のつかえです。進行すると声がかれたり息苦しかったりすることもあります。上咽頭がんや中咽頭がんと同様に首のリンパ節への転移を起こすこともあり、首のしこりで初めてがんに気がつくこともあります。
咽頭がんの診断では、触診や内視鏡などを用いた視診によって喉の状態を観察し、がんが疑われる場合は生検やCT、MRIなどの精密検査を行います。
首のまわりを触りながらしこりの有無を確認し、リンパ節への転移がないかを調べます。
また、中咽頭がんは口の中からがんに直接触れられることがあるため、口の中に手を入れてがんの状態を調べることもあります。
喉頭鏡や内視鏡を用いて咽頭やその周辺部位(喉頭や食道など)の様子を観察します。中咽頭は口からの観察が可能なため、目視で視診を行うこともあります。上咽頭や下咽頭は目視での観察が難しいため、器具を使った検査が一般的です。
咽頭に麻酔をかけた状態で、がんが疑われる組織の一部を採取して、顕微鏡を用いて観察する検査です。
触診や視診でがんが疑われる場合に、精密検査として行われます。
X線を使用して体の断面を撮影するCT検査や、磁石と電波を使用して体の断面を撮影するMRI検査などがあります。
触診や視診でがんが疑われる場合、がんの広がり方や転移の有無などを調べるために行われます。
咽頭がんの治療は、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)、手術があります。どの治療を行うかは、がんの部位や進行度、患者の希望や周辺環境によって異なります。咽頭は、発声、呼吸などの生きるために必要な機能に関わる器官であるため、治療後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)も考慮しつつ、慎重に治療法を選ぶことが重要とされています。
初期の咽頭がんは、喉の痛みや違和感など、風邪と似た症状が現れることも少なくありません。このような症状が長期間続く場合は、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
東京科学大学 医学部 頭頸部外科学講座 教授
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