上咽頭がんは、“上咽頭”と呼ばれる部分にできるがんです。日本国内で上咽頭がんと診断される人は年間800人程度しかおらず、比較的珍しいがんであるといえます。しかし、上咽頭がんに限らず全てのがんでは早期発見・治療が大切であるため、上咽頭がんについても正しく理解し、気になる症状がある場合は受診を検討することが大切です。
本記事では上咽頭がんの原因、症状、検査までを解説します。
上咽頭は、飲食物と空気の通り道である“咽頭”の一部です。
咽頭は鼻の奥から食道までつながる管のような器官で、位置の高さに応じて上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つに分けられます。上咽頭は咽頭のうちもっとも上部に位置しており、鼻で呼吸をするときの空気の通り道となります。
日本で上咽頭がんと診断された数は、2014年のデータで年間約800人です。また、同年に新たにがんと診断された総数は約867,000人であるため、珍しいがんの1つといえるでしょう。
また、男女別でみると女性よりも男性のほうが多い傾向があります。年齢別では60歳代で頻度がもっとも高くなりますが、ほかのがんに比べるて若い世代でも発症することがあるといわれています。
上咽頭がんの発生には、飲酒や喫煙といった生活習慣とウイルス感染が関連しているといわれています。
飲酒と喫煙は上咽頭がんに限らず、全ての咽頭がんの発症に関与しているといわれています。また、飲酒すると顔が赤くなりやすい人は上咽頭がんの発症リスクが高くなるともいわれています。
EBウイルス(エプスタインバールウイルス)が、上咽頭がんの発生に関与しているといわれています。
EBウイルスは唾液を介して感染するウイルスです。日本では多くの人が子供の頃に感染しているといわれています。また、通常は感染しても症状が現れないといわれていますが、 EBウイルスが原因となったがんがヒトからヒトへ感染するわけではありません。
初期の上咽頭がんの主な症状は、鼻血や鼻詰まりといった鼻の症状、耳閉感(耳が詰まったように感じる)や中耳炎といった耳の症状です。しかし、初期の上咽頭がんではこのような自覚症状が現れないこともあります。
上咽頭がんに気付くきっかけとしてもっとも多い症状は、上咽頭がんが首のリンパ節に転移したことによる首のしこりであるといわれています。
進行した上咽頭がんでは、複視(ものが二重に見えること)、視力の低下、顔面の感覚障害や痛みといった脳神経症状が現れることがあります。
鼻詰まりや耳閉感など気になる症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。特に、これらの症状が長期間続いていたり、市販薬を服用してもなかなかよくならなかったりする場合などには注意が必要です。
また、上咽頭がんでは目立った自覚症状がないまま、首のリンパ節に転移していることも少なくありません。首の周りにしこりのようなものがある場合には、痛みがなかったとしても医療機関を受診するようにしましょう。
上咽頭がんの検査では、まず内視鏡を用いて腫瘍の有無を観察します。また、上咽頭がんは首のリンパ節に転移しやすいため、首の周りを触ってしこりの有無を調べることもあります。
これらの検査で上咽頭がんが疑われた場合は、疑わしい部分の組織を一部採取して顕微鏡で観察し、がんであるかを診断します。また、体の断面図を撮るCT検査やMRI検査、体の内部を観察するエコー検査などを用いて、がんの位置や大きさ、ほかの臓器への転移の有無などを調べることもあります。
上咽頭がんに限らず全てのがんは早期の段階で治療を始められれば、よい治療結果が得られる可能性が高くなります。早期の上咽頭がんの場合も、患者の80%以上が治療後に5年以上生存できているというデータもあります。
このため、気になる症状がある場合は、早いタイミングで医療機関を受診し、早期発見、早期治療につなげられるようにしましょう。
国立がん研究センター中央病院 頭頸部外科 医長
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