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下咽頭がんのステージ別の手術内容とは?〜術後の生活や後遺症に対するリハビリテーションについて〜

下咽頭がんのステージ別の手術内容とは?〜術後の生活や後遺症に対するリハビリテーションについて〜
朝蔭 孝宏 先生

東京医科歯科大学 医学部 頭頸部外科学講座 教授

朝蔭 孝宏 先生

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下咽頭がんの治療では、ステージI、II、一部のステージIIIでは音声を温存しつつ根治を目指します。一方で、ある程度進行してしまったステージIIIやステージIVでは喉頭も含めた拡大切除が必要となり、音声の温存を諦めなければいけない場合が多くなります。

本記事では、下咽頭がんの手術や手術後の生活について解説します。

下咽頭がんの治療方針は、ステージなどによって異なります。ステージⅠでは放射線治療あるいは全身麻酔下の内視鏡切除が行われます。ステージIIもほぼ同様ですが、腫瘍(しゅよう)の状況によって放射線治療の際に抗がん剤を加えた化学放射線療法が行われることもあります。ステージIIIでは、化学放射線療法で喉頭温存を目指す場合が一般的です。

一方で、進行したステージIIIやステージIVでは音声の温存を断念して、下咽頭喉頭全摘出術を行わざるを得ない場合が多くなります。その際には、小腸の一部である空腸などで、のどの食事の通り道を同時に再建する必要があり、手術時間が長くなります。

手術以外の治療法として、放射線を照射する放射線治療、抗がん剤を用いた化学療法もあり、患者さんの体の状態や年齢、希望なども含めて治療法が検討されます。

下咽頭がんの手術内容は、主にがんの広がりの大きさによって異なります。首のリンパ節に転移している場合には、その部位に対する手術も行われます。

早期がん(ステージI、II)に対しては喉頭の温存を目指し、下咽頭を部分的に切除する手術(経口的下咽頭部分切除術)が行われるのが一般的です。

この手術は、がんが下咽頭のみの場合、喉頭に広がっていても程度が軽い場合、そして深部浸潤(がんが深部に広がっていくこと)のない症例に実施されます。また、表在型のステージIII症例にも行われることがあります。

深部浸潤があるなどの理由で経口的下咽頭部分切除術が困難な場合、首の皮膚を切開する下咽頭部分切除術が行われることもありますが、近年まれになってきました。

進行がん(ステージIII、IV)においては、がんが広がっていることから、多くの場合は全摘を余儀なくされます。

がんが喉頭まで広がっている場合は下咽頭と喉頭を、下方まで広がっている場合は下咽頭、喉頭、首の部分の食道までを切除します。喉頭を全摘すると基本的には発声ができなくなります。

また、首に呼吸をするための穴(永久気管孔)を開ける必要があり、この穴は一生閉じることはできません。

下咽頭がんは首のリンパ節に転移することが多く、首のリンパ節に転移したがんに対しては首のリンパ節を切除する頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)が行われます。転移していない場合でも予防的に実施することがあります。

リンパ節の周りには血管や神経、筋肉などがありますが、がんの状態によってはそれらを残すことができない場合があります。後遺症の一例として、副神経を切除した場合には僧帽筋(そうぼうきん)がうまくはたらかなくなるために、肩が上がらない、肩が凝ってつらい、肩の周囲が痛いなどの症状が現れます。

手術によるダメージから回復するために、手術後は安静が必要不可欠です。

通常、手術当日はベッド上での安静が必要ですが、術後1~2日目にはトイレや病棟内での移動が可能となります。いずれにせよ担当医や看護師の指示に従い、安静を保つようにしましょう。

喉頭を全摘した場合は声を出すことができなくなり、首に永久気管孔を開けます。また、首のリンパ節を切除した場合には僧帽筋がうまくはたらかなくなるなど、術前と術後で体に変化がみられ、日常生活にさまざまな不自由が生じることがあります。

加えて、入院中だけでなく退院後も機能改善に向けたリハビリテーションや、永久気管孔に対しては吸入や吸痰などの自己管理が必要になります。

飲み込みリハビリテーション

手術に伴って摂食障害(うまく食べられない)や嚥下(えんげ)障害(うまく飲み込めない)が生じた場合には、摂食、嚥下リハビリテーションを行うことがあります。

発声のリハビリテーション

発声に関しては、リハビリテーションによって代用音声を獲得する方法があります。方法として、食道を振動させて発声する食道発声法、気管と食道をつなぐ道を作ってそこに器具を入れ肺から食道へ空気を送ることで発声するシャント発声法、電動で振動する機械を喉に当てて口や喉・鼻を振動させて発声する電気式人工喉頭などがあります。

それぞれにメリットとデメリットがあるので、担当医や言語聴覚士などとよく相談し、自分に合った方法を選ぶようにしましょう。

肩の運動障害を軽減するリハビリテーション

首のリンパ節に転移したがんの切除した場合、手術後に肩が上がらない、肩が凝ってつらい、肩の周囲が痛いなどの症状がみられることがあります。

このような場合、理学療法士などによる指導の下、腕を上げたり肩や首を回したりする運動を行います。退院後も継続して行うことで不快感が軽減されることもあります。

下咽頭がんは転移や再発を起こしやすく、治療後2年以内に再発することが多いとされています。そのため、治療後には体の状態、がんの転移や再発の有無を調べるために定期的に診察や検査を受けるようにしましょう。

また、口腔がん咽頭がん食道がん肺がんなどの飲食物や空気の通り道となる部位に生じるがんは、飲酒や喫煙によってリスクが高まると考えられています。下咽頭がんの再発ならびにほかのがんとの併発の危険性を減らすために、喫煙や飲酒を控えるようにしましょう。

下咽頭がんの治療は、早期がんであれば放射線治療や喉頭を温存する手術、進行がんでは手術が中心です。

手術にはリスクが伴うほか、切除する範囲によって声が出せなくなったり首に永久気管孔を開けたりします。また、首のリンパ節に転移したがんを切除した場合には、肩の運動障害がみられることがあります。

手術前に担当医とよく相談し、リスクや後遺症などについてしっかりと理解して納得したうえで手術を受けるようにしましょう。

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    朝蔭 孝宏 先生

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