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日本でアナフィラキシーの発症が多いのは体が小さいから?〜 1分で分かる新型コロナワクチンの基本〜

日本でアナフィラキシーの発症が多いのは体が小さいから?〜 1分で分かる新型コロナワクチンの基本〜
峰 宗太郎 先生

米国国立研究機関 博士研究員

峰 宗太郎 先生

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年05月31日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナワクチンを接種したことでアナフィラキシーが発症したという報告がされています。そうした中、日本はほかの国と比べてアナフィラキシーの報告数が目立つように感じられるといわれ、世間では「日本人はほかの国と比べて体が小さい=薬の量が多くなるから数も多くなるの?」など、さまざまな意見がとびかっています。では、アナフィラキシーの発症には体の大きさが関係するのでしょうか。

アナフィラキシーは、体内に入る原因物質の量がある一定量を超えた場合に生じますが、その発症に体の大きさは関係しないと考えられています。

なぜなら、アナフィラキシーが発症する原因物質の量には個人差があり、たとえ量が少ない場合でも体の大きさとは関係なくアナフィラキシーを引き起こす可能性があるのです。そのため、体が小さいからといって体重あたりの原因物質の量が多くなって発症しやすくなったり、症状が強くなったりするということは考えにくいです。

ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの場合は、1回あたり30μgmlというごくわずかな量の接種であるため、体の大きさに応じて発症頻度に違いが出ることはないと考えられています。

日本でアナフィラキシーの報告数が多い理由については、いまだ明らかではありません。

ただし、最初に日本で使われていた報告基準が、ほかの国で使われていた基準と異なること、医療従事者から接種を開始していること(理由は後述)が関係している可能性があります。現在使われている世界機構の報告基準に当てはめた場合、なかにはアナフィラキシーとされないものが含まれている可能性があります。

今回のmRNAワクチンに対してアナフィラキシーを発症しやすい人は、ポリエチレングリコール(PEG(ペグ))という成分に対して免疫を持っている可能性が考えられています。これは化粧品や歯磨き粉など日用品にも多く使用されている成分で、ワクチンを接種する前からPEGにさらされている場合は接種すると、ごくまれにアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。

特に医療従事者の場合、医療用製品にPEGが多く含まれていることから、一般の方よりアナフィラキシーを起こしやすい可能性があるいわれています。そのため、医療従事者から新型コロナワクチンの接種を開始したことが、当初に報告数が多く感じられた理由の1つに考えられているのです。

また、女性もPEGを含んだ化粧品を使用している割合が高いため、世界各国で女性の発症頻度が高くなる理由とも考えられています。

アナフィラキシーなどのアレルギー反応の頻度や症状の重症度は、年齢や体質などによって異なります。そのため、日本人の体が小さいから発症しやすいというわけではないことを正しく理解してください。

  • 米国国立研究機関 博士研究員

    日本病理学会 病理専門医

    峰 宗太郎 先生

    日本病理学会 病理専門医。病理医としての専門は血液腫瘍と感染症。
    基礎研究者としてはウイルス学と免疫学を専門としており、特に、EBウイルスによって生じる病気の研究を行っている。

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