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編集部記事

医師が考える新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高い高齢者が注意すべき点とは

医師が考える新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高い高齢者が注意すべき点とは
荒井 秀典 先生

国立長寿医療研究センター 理事長、日本老年医学会 副理事長

荒井 秀典 先生

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新型コロナウイルス感染症は2019年12月に中国湖北省武漢市で報告されて以来、世界各地で感染が広がる感染症です。現時点で新型コロナウイルスの特性に関しては明らかとなっていませんが、高齢者はかかると重症化しやすいといわれており、特に重症化しやすい人は予防対策を行うことが大切です。今回は新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい高齢者の特徴や気になる症状があった場合の受診の目安、予防対策などについて、国立長寿医療研究センター 理事長 荒井 秀典(あらい ひでのり)先生にお伺いしました。

※本記事は、2020年6月3日時点の医師個人の知見に基づくものです。

高齢者が新型コロナウイルス感染症にかかると、一般の人よりも重症化しやすいというデータはあります。しかし、高齢者が一般の人に比べて新型コロナウイルスに感染しやすいというデータは今のところありません。

そのため、高齢者も一般の人同様、感染症予防対策をしっかり行っていれば感染しにくくなり、対策を怠っていれば感染しやすくなるといえるでしょう。

新型コロナウイルス感染症だけでなく感染症にかかった場合、65歳未満の人と比べて高齢者のほうが重症化しやすい傾向にあります。高齢者の感染症が重症化しやすい明確な理由は分かっていませんが、加齢による免疫機能や栄養の問題などが複合的に関係していると考えられます。

新型コロナウイルス感染症の場合、高齢者は重症化するリスクが高いため、強い倦怠感(けんたいかん)や息切れなど気になる症状があれば早めに病院の受診を検討する必要があります。

高齢者のなかでも特に新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいのは、喫煙習慣のある人や基礎疾患(持病)のある人です。特に以下のような病気にかかっている人は、重症化しやすいと考えられています。

<新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい基礎疾患>

など

また、ニューヨークなどの例を見てみると、経済的に困窮している人のほうが衛生環境などの理由により新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいようです。高齢者がそのような環境に身を置いていると新型コロナウイルスに感染しやすく、感染後に重症化しやすいことが懸念されます。

80歳代の新型コロナウイルス感染症による死亡率は10%程度といわれています。65歳未満の人の死亡率が地域差はありますが平均的に見て1%未満と考えられているので、高齢者のほうが一般の人よりも死亡率が高いと考えられます。

高齢者の場合、37.5℃以上の発熱や風邪の症状が出てから2日程度で受診を検討しましょう。一般の人の受診目安はこれらの症状が4日以上続く場合となっていますが、高齢者の場合、重症化するリスクが高いことを踏まえ、発熱とともに息切れが急に出てきたり、強い倦怠感があったりする場合には少し早めの受診をおすすめします。受診を検討する際は、直接病院に行くのではなく帰国者・接触者相談センターに問い合わせて指示を仰ぎましょう。

また、高齢者であり、かつ上で述べたような基礎疾患を持っている場合には重症化するリスクがさらに高まるため、状況に応じて症状が出てから2日を待たず、より早い受診も検討しましょう。気になる症状があれば電話でかかりつけ医に相談するか帰国者・接触者相談センターに問い合わせましょう。

新型コロナウイルス感染症の予防対策は、高齢者でも一般の人でも同様に標準の感染症対策を行うことです。今特に重要視されている感染症対策は“三つの密”を避け、手洗いをすることです。

三つの密とは“密閉・密集・密接”を指し、人がある場所に集中して集まることをいいます。新型コロナウイルス感染症予防として人の集まる所に行くことを控えましょう。やむを得ずマスクをしていない人が集まる場所に行かなければならないときは、必ず鼻・口からウイルスが入ることを防ぐためのマスクと、目からウイルスが入ることを防ぐためのメガネを着用しましょう。マスクを着用するときは鼻・口をしっかり覆いましょう。紙製のマスクは使い捨てが原則ですが、マスクが残り少なく、繰り返し使用しなければいけない場合にはウイルスの付着を防ぐためマスクをあまり触らないようにするなど取り扱いに十分に注意しましょう。布製のものは洗剤で洗ってきれいに再利用しましょう。

外出後や食事の前など、こまめに手を洗うことを心がけましょう。手洗いはせっけんを使用し、手のひらや手の甲だけでなく指の間、爪の先なども入念に洗います。手洗いは30〜40秒ほどの時間をかけて洗うと効果的なので“ハッピーバースデー”の歌を2回歌いながら手洗いをすることをおすすめします。ハッピーバースデーの歌は1曲がおよそ20秒程度であり、歌いながら手を洗うことで手洗いに適した時間を測ることができます。そのうえ、歌うことで声を出すため、高齢者のオーラルフレイル予防にもつながるといえます。

*オーラルフレイル:加齢により口の機能低下、食べる機能の低下が生じること。

基礎疾患により通院が必要な場合、マスク・手洗いなどの感染症対策を徹底したうえで今までどおり通院して構いません。特に、基礎疾患に関する症状などが出ている場合は病院の受診を控えることによって基礎疾患が悪化してしまうことも懸念されるので、いつもどおりにかかりつけ医を受診しましょう。

2020年4月13日より電話やインターネットなどを用いたオンライン診療が行えるようになり、病院に足を運ばずに受診することが可能となりました。オンライン診療では通院の必要がなくなるので感染者と触れる機会がなくなり、感染の心配がありません。ただし、全ての方がオンライン診療を行えるわけではなく医師の判断のもとオンライン診療で診断や薬の処方が可能であるとされた場合など、条件を満たせば行うことができます。オンライン診療を希望する場合は近くの医療機関、またはかかりつけの医師に相談するとよいでしょう。

高齢者施設では、新型コロナウイルス感染症対策として第一に新型コロナウイルスを施設に持ち込まないことに尽力しています。スタッフが日常生活で感染しないよう感染症対策を徹底することはもちろん、面会制限をかけ面会によってご家族がウイルスを持ち込むリスクを減らしています。また、どうしても必要な面会ではご家族にマスク・エプロンなどの防護服をしていただくこともあります。

次に、万が一高齢者が新型コロナウイルス感染症にかかった場合を想定し、感染症の対応ができる病院との連携を行っています。施設でできる治療は限られてしまうため、入居している高齢者が新型コロナウイルス感染症にかかると対応できる病院に感染者を送る必要があるためです。

感染症対策のほか、意識的に体を動かすようにしてほしいです。高齢者の場合、新型コロナウイルス感染症にかかって重症化してしまうことも恐ろしいのですが、感染症対策として外出しないことによって体を動かさなくなり、フレイルになってしまうことが懸念されます。フレイルとは加齢によって運動機能や認知機能が落ち、心身共に弱ってしまうことをいいます。フレイルになると転倒・骨折が増え、最終的に寝たきりになってしまう人もいます。

たしかに、感染症を予防するために三つの密を避ける必要があります。しかし、これは“外出してはいけない”ということではありません。そのため、感染症対策を行ったうえで外に出て散歩をする、軽い運動をするなど体を動かすことを意識してみましょう。また、天候・体調などの影響で外に出るのが難しい場合には、自宅でできる運動を取り入れ、座ったまま・寝たままでいる時間を極力減らしましょう。

前述の通り、外出しなくなることによりフレイルになることが懸念されます。フレイルになってしまうと、これまで自分で日常生活を送れていた人でも運動機能や認知機能が落ち、介護が必要になってしまうことがあります。高齢者の場合、一度弱った運動機能や認知機能をもとに戻すことはなかなか難しいため、外出の難しい今の時期でも継続的に体を動かすようにしていただきたいです。

高齢者に関わる人はご家族も医療従事者も高齢者施設のスタッフも皆、感染症対策を徹底し、自分がウイルス感染しない・持ち込まないという気持ちで望むことが大切です。また、医療機関や高齢者施設では施設内での感染拡大を防ぐため、万が一感染者が出た場合の対処方法をマニュアル化し、全スタッフがそれを把握しておきましょう。また、当学会では新型コロナウイルスの流行終息後のことも考え、高齢者が健康に暮らせるよう、フレイルの予防などを呼びかけていきたいと考えています。

新型コロナウイルスに関してはまだ分からないことも多々ありますが、さまざまなデータが明らかになり分かってきたこともあります。分かってきた情報を正しく伝え、活用していくことが私たちの役目でもあります。

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