概要

オーラルフレイルとは加齢による衰えのひとつで、食物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下したり、滑舌が悪くなったりするなど“口”に関連する機能が低下しつつある状態のことを指します。

オーラルフレイルと呼ばれる状態の特徴は適切な対処を行うことで機能低下を改善できることで、健康的な状態と病的な状態の狭間にあることです。このため、オーラルフレイルは医学的な病名ではなく、加齢による生理的な変化であるともいえます。

一般的に、オーラルフレイルの始まりは食事時のむせこみが増えること、硬い食品が噛めなくなること、滑舌が悪くなることなどが挙げられますが、この状態を放置すると嚥下障害構音障害など多岐にわたる身体的、社会的な障害を引き起こすことが考えられます。

このため、オーラフレイルの発症予防とともに、万が一その兆候が見られたときに適切な改善対策を行っていくことが大切なのです。

原因

オーラルフレイルの根本的な原因は“加齢”です。

オーラルフレイルという概念は、2014年に厚生労働省による老人保健健康増進等事業の中で提唱されました。年齢を重ねるごとに生活範囲が狭くなる、精神的に不安定になりやすいといった状態が生じ、それに伴って口腔の健康状態を維持するための意欲が減退していくケースが多く、歯周病や残存歯数の低下などが引き起こされやすくなります。このような状態を“前フレイル期”と呼び、さらに口腔機能の低下が進むと、食事時にむせこむ、硬いものが噛めなくなる、滑舌が悪くなるといったさまざまな症状が現れるようになるのです。この状態こそが“オーラルフレイル期”にあたり、飲み込めない、噛むことができないといった最終的な“フレイル期”に至ります。

つまり、加齢によって生じる身体的、社会的機能の低下に対して適切な対処を行わないことがオーラルフレイルの大きな原因なのです。

症状

オーラルフレイルでは、物を噛んだり飲み込んだりする機能が徐々に低下します。具体的には、食べこぼし、嚥下時のわずかなむせ、噛めない食品の増加、滑舌の悪化などが生じ、結果として食欲の低下や食べられるものの種類が減少するなどの状態を引き起こすのです。

このため、オーラルフレイルの状態に陥ると、人生の大きな楽しみのひとつである“食事”への満足度が低下したり、他者との交流が円滑に行えなくなったりするため、精神面で大きなダメージを受けることも少なくありません。そして、それが活動性の低下につながり、さらなる口腔機能の低下を誘発することで、食事量の著しい低下などによって低栄養状態につながりやすいとされています。

検査・診断

オーラルフレイルは歯周病や虫歯による残存歯数の減少によって段階的に引き起こされるため、定期的に歯科検診を受けることが大切と考えられています。

高齢者は唾液分泌量が低下するため、口腔内の衛生状態が悪化しやすく、若い世代に比べて歯周病や虫歯を引き起こしやすいのが特徴です。また、特に糖尿病などの持病があると歯周病が悪化しやすいため、抜歯が必要になるほど重症化するまで発症に気づかないケースも少なくありません。気になる症状がない場合であったとしても、3~6か月に一度は口腔内の状態をチェックするようにしましょう。

また、そのほかにも、オーラルフレイルの状態にあるか否かを調べるには、残存歯数、咀嚼(そしゃく)能力、舌の動きと力、飲み込み、唾液分泌などの状態の評価が必要です。これらの状態がよくない場合には口腔機能低下症という病名で、歯科医院にて対応ができます。

治療

オーラルフレイルに対してはさらなる口腔機能低下を予防するため、歯周病や虫歯の治療を行い、残存歯数を維持することが大切です。平成元年から、厚生労働省と日本歯科医師会は“80歳になっても自分の歯を20本以上残す”ことを目標とした“8020運動”を展開していますが、現在では半数以上の方が80歳で20本以上の歯が残っているとされています。

また、口腔機能を改善するには唾液分泌を促したり、咀嚼や嚥下に必要な筋肉を鍛えたりする“口腔体操”を取り入れていくことも必要です。近年では、自治体などで高齢者に向けた口腔機能向上講座などを開催することも増えているので、積極的に参加しましょう。

さらに、上で述べたようなオーラルフレイルが疑われる症状が見られたときは、放置せずにできるだけ早く歯科医院などに相談し、さらなる口腔機能の低下を予防することも大切です。

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