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オーラルフレイルの予防策〜口腔内を清潔に保つ・歯科的問題の解決・食習慣の見直しが大切〜

オーラルフレイルの予防策〜口腔内を清潔に保つ・歯科的問題の解決・食習慣の見直しが大切〜
竹島 浩 先生

明海大学歯学部病態診断治療学講座高齢者歯科学分野 教授

竹島 浩 先生

目次
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高齢化に伴って歯や口の衰えが及ぼす影響が注目されるようになり、食べこぼしや噛めない食品が増えるなどの軽度な口腔(こうくう)機能が体の衰えにつながることが分かってきました。そこで近年、このような口腔機能の低下を“オーラルフレイル(口腔機能の虚弱)”と定義し、早期の対策の重要性が提唱されるようになりました。

では、オーラルフレイルの原因には何があって、どのような予防策を行うとよいのでしょうか。

オーラルフレイルの概念は4段階に分類されており、“歯の数が減る”“口腔機能の速度や動きが悪くなる”“噛む力が弱くなる”“飲み込みづらくなる”というように、段階的に口腔機能の低下が進行するとされています。これは虫歯や食習慣の偏りなどをきっかけに、それぞれが悪循環となって進行していきます。また、オーラルフレイルが進行すると食事が満足に取れなくなり、さらに放置すると低栄養状態から心身機能の低下を招くリスクもあるため注意が必要です。しかし、第3段階程度までは対策を行うことで機能が回復することもあるとされています。

生活範囲が狭まり活動量が低下することによって、精神面も不安定となり、口腔リテラシー(口腔機能管理に対する関心度)が低下します。その結果、虫歯や歯周病、歯の喪失につながるとされています。

口腔機能の低下によって、滑舌の低下や食べこぼし、若干のむせ、噛めない食品が増えるなどが見られます。そのため、食欲が減ったり、食事のバランスが偏ることにつながるとされています。

噛む力、舌を動かす力が低下して食べる量が減ることで、骨格筋量や筋力の低下(サルコペニア)や移動機能の低下(ロコモティブシンドローム)、栄養の低下につながるとされています。

さらに進行すると、食べる、飲み込む、噛むといった動作が難しくなるため、運動・栄養障害や要介護につながるとされています。

前述の通り、オーラルフレイルが進行すると最終的に要介護のリスクの高まり、さまざまな病気、薬の種類が増えるといったことにつながることもあるため、口腔機能の維持はとても重要です。

事実、オーラルフレイルの予防・改善によって健康寿命が延ばせると考えられていることからも、厚生労働省や自治体でもオーラルフレイルの予防が提唱され始めており、代謝機能の維持や低下の回避、生活習慣病の発症・重症化予防とともに新たな概念として検討されています。

オーラルフレイル予防のためにできることは、主に“口腔内を清潔に保つ”“歯科的問題の解決”“食習慣の見直し”の3つです。

オーラルフレイルの最初の段階は口腔リテラシーが低下し虫歯や歯周病となり、結果的に歯の喪失につながるというものです。そのため、まずは口腔内を清潔に保ち、虫歯や歯周病を予防することが大切です。

虫歯予防も歯周病予防も歯磨きをしっかり行い、場合によっては定期的な歯垢の除去などが必要とされています。

虫歯や歯周病ができてしまった場合は、適切な治療を行うことが大切です。痛みや腫れなど、気になる症状がある場合は歯科の受診を検討するとよいでしょう。

また、定期的な歯科健診で虫歯や歯周病の有無など、口腔機能に関して調べることも大切です。近年、口腔機能低下や疾病予防対策を目的に後期高齢者歯科健診が整備されています。この健診は口腔機能に着目したものであり、自治体によっては一定の年齢を対象に無料で実施している場合もあるため、案内が来た際は健診の検討をするとよいでしょう。

オーラルフレイルは日々の偏った食習慣によって低栄養につながるため、栄養バランスの取れた食事を取ることが大切です。厚生労働省が策定した“日本人の食事摂取基準(2020年版)”の中では、オーラルフレイルに限らず高齢者の低栄養やフレイル*予防を目的として、特定の栄養素に対する目標量(/日)が定められています。

65歳以上の方が1日に摂取すべき栄養素の目標量は以下のとおりです。特に、フレイル予防の観点ではたんぱく質の摂取が非常に重要であり、目標量の下限が2015年版の日本人の食事摂取基準から引き上げられています。

  • たんぱく質……15~20%エネルギー
  • 脂質……20~30%エネルギー
  • 飽和脂肪酸……7%エネルギー以下
  • 炭水化物……50~65%エネルギー
  • 食物繊維……男性:20g以上、女性:17g以上
  • ナトリウム……男性:7.5g未満、女性:6.5g未満
  • カリウム……男性:3,000mg以上、女性:2,600g以上

参考:「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」策定検討会報告書(厚生労働省)

具体的な食事例

目標量の栄養素を配慮した1食あたりの食事は、以下を参考にするとよいでしょう。ただし、何らかの疾患を抱えている場合は、医師や看護師、管理栄養士に相談のうえ指示に従うようにしましょう。

  • 主食、主菜1品以上、副菜2品以上を用意する
  • 野菜を100g以上使用する
  • 主菜には魚60g以上、または肉50g以上を使用する
  • 噛みごたえのある食品が入っている(焼いた肉や、根菜のピクルスなど)

このほか、栄養バランス以外にも口腔機能を低下させないために、食品の種類を狭めない、硬いものをよく噛んで食べるといった心がけも必要です。

*フレイル…加齢によって身体的・精神心理的・社会的に不健康な状態のこと

オーラルフレイルでは滑舌が悪くなる、食べこぼしや若干のむせが見られる、噛めない食品が増えるなど、軽度な口腔機能の低下が徐々に進行して最終的に要介護リスクを高めることがあります。しかし、第3段階程度までであれば機能が回復することもあるため、早めに予防することが非常に大切です。

したがって、これまでに解説したオーラルフレイルの予防策を心がけ、日頃からバランスのよい食生活や歯磨きを行うようにしましょう。また、オーラルフレイルの概念に当てはまったり、気になる症状がある場合は、放置せずに歯科への受診を検討するとよいでしょう。

  • 明海大学歯学部病態診断治療学講座高齢者歯科学分野 教授

    日本口腔外科学会 口腔外科専門医・口腔外科指導医日本顎顔面インプラント学会 指導医日本老年歯科医学会 理事日本口腔ケア学会 理事WCOI/ WCOI Japan 理事日本有病者歯科医療学会 会員日本口腔インプラント学会 会員日本外傷歯学会 会員

    竹島 浩 先生

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