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オーラルフレイルの予防法-高齢者の食事にかかわる口腔機能の衰えを防ぐには

オーラルフレイルの予防法-高齢者の食事にかかわる口腔機能の衰えを防ぐには
戸原 玄 先生

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーショ...

戸原 玄 先生

口腔機能の衰えを表す「オーラルフレイル」は、加齢による筋力低下、歯の喪失をおもな要因として引き起こされます。「食べる」「話す」といった日常の行動に影響を及ぼすため、患者さんのQOL(生活の質、満足度)に大きくかかわります。しかし、オーラルフレイルは日常生活の小さな変化に気付くことで早期に発見し、予防、対策を行うことが可能です。オーラルフレイルを予防・対策するための具体的な方法について、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科で准教授を務める戸原 玄(はるか)先生にお話を伺いました。

オーラルフレイルの症状は、記事1『オーラルフレイルとは?原因と症状-高齢者の食事に影響する口や歯の衰え』でご説明した通り、ゆるやかに進行していきます。急激な変化が起こるわけではないため、ご自身がオーラルフレイルの知識を持ち、日常生活の小さな変化に気付けるよう心がけることが大切です。

小さな変化に気付くためのポイントは、昨日や1週間前といった短期間ではなく、1〜2年の中期間で行動を比較することです。たとえば、「1年前の自分はもう少し外出していた」「昨年よりも食べる量が減って、痩せた」など、少し前の生活を客観的に振り返ることで、行動の変化に気付きやすくなります。

1年前と現在の行動を比較する項目の例

・噛みにくいものが増えた

・1回の食事で食べる量が減った

・体重が減少した

・外出する機会が減った

・人と会うのが億劫に感じる

食事のある食卓

オーラルフレイルの予防には、患者さんの変化に周りの人間が気付いてあげることも大切です。その際には前述の通り、短期間ではなく1年前などの中期間で比較することが重要になります。たとえば食事の際には、好き嫌いで残しているのか、噛めないから残しているのか、注意深く観察してみてください。「本当は好きなものだけれど、噛めないので最初から食べない」という場合、オーラルフレイルのリスクが考えられます。

家族にご高齢の方がいる場合には、正しいオーラルフレイルの知識を持ち、なるべく早期にオーラルフレイルの予防・対処ができるよう心がけましょう。

オーラルフレイル予防の観点からは、痩せ過ぎの(脂肪が少ない)体型は理想的ではありません。なぜなら適度に脂肪があれば、たとえ少々食事を抜いたとしても、脂肪燃焼によって生命活動のエネルギー源が確保できますが、脂肪が少ない場合、脂肪の代わりに筋肉がエネルギー源として使われてしまい、筋力低下につながるからです。

高齢になると食への関心が薄まり、つい食事を簡単に済ませがちです。簡単な食事(インスタント、コンビニ食など)は栄養バランスが炭水化物に偏ることが多いため、おすすめできません。食事の際には、筋肉のもとになるタンパク質や、タンパク質の吸収を促すビタミン類を意識して摂取することが大切です。

タンパク質とビタミンのある食事

筋力低下を防ぐためには、なるべく体を動かすことも大切です。一般的には、加齢とともに家で過ごす時間が増える傾向がありますが、できるだけ外出して積極的に体を動かしてください。外出がしにくい季節には、屋内で運動もよいでしょう。

また家での過ごし方についても、寝るのではなく座る、座ったままではなく立つ・歩くといった動作を繰り返すなど、少し意識するだけでも、日々の積み重ねで大きな違いが出てくるでしょう。

日常的に体を動かすことは、オーラルフレイルの予防になるだけでなく、健康的な心身を作ることにつながります。

外出する高齢者

記事1『オーラルフレイルとは?原因と症状-高齢者の食事に影響する口や歯の衰え』でお話ししたように、人がものを食べるには咀嚼力(そしゃくりょく:噛む力)と、嚥下力(えんげりょく:飲み込む力)が必要です。

嚥下力を上昇させるためには、まず舌骨上筋(ぜっこつじょうきん:喉と喉仏をつなぐ筋肉)を鍛える方法があります。それは口を10秒間思い切り開け続けるという極めてシンプルな方法ですが、道具などが必要なく、簡単にできることが利点です。

筋肉トレーニングには、大まかにアイソメトリック(筋の長さを変化させない静的なトレーニング)とアイソトニック(筋の長さを変化させる動的なトレーニング)の2種類がありますが、嚥下機能の上昇にも、上記のようなアイソメトリックが効果を発揮することがわかっています。

日常で楽しみながらできる筋力トレーニングの方法は、本気でカラオケを歌うことです。あえて口まわりの筋肉に力を入れ続けるよう本気でカラオケを歌うと、アイソメトリックトレーニングの役割を果たします。可能であれば、汗が出るくらいの本気さ、なるべく高い声域の曲に加えて、早いテンポの曲という条件が満たせれば理想的です。

嚥下力は前述の通り、様々な方法で鍛えることが可能です。一方、咀嚼力(噛む力)を鍛えるための方法は、現時点では研究を進めている段階です。今後、当院を含めた咀嚼力の向上に役立つトレーニング方法の研究で、よい結果が出ることが期待されています。

将来的にオーラルフレイルを含めた「フレイル」の概念が浸透し、私たちが日常生活のなかで些細な変化に気付けるようになれば理想的だと考えています。まずはオーラルフレイルの存在を多くの方々が認識し、日常生活のなかで「自分はオーラルフレイルかもしれない」「家族がオーラルフレイルかもしれない」と、早い段階で気付けるようになれば、重症化する前に予防・対策を行うことが可能です。

もしオーラルフレイルを疑う場合には、専門の病院、医師に相談をしましょう。早めの予防・対策が、オーラルフレイルの進行を遅らせる可能性が高まります。

人が生きていくために大切な「食べる」「話す」といった行為を楽しめる時間をできるだけ長く保つために、ぜひオーラルフレイルの知識を活用していただけたら本望です。

これからますます高齢化が予測されている社会において、オーラルフレイルへの対策は非常に重要な課題であると感じています。しかし現状の教育現場では、オーラルフレイルの専門学科はほとんど存在せず、学生にとっても選択しにくいテーマとなっています。

これまでの歯科医師教育は「歯を治す」という視点が非常に強かったのですが、これからは「口腔機能を保つ」という視点を強化し、歯科医師を育てていきたいと考えています。

戸原 玄(はるか)先生

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  • 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授

    戸原 玄 先生

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