インタビュー

摂食嚥下障害の地域包括ケア

摂食嚥下障害の地域包括ケア
戸原 玄 先生

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーショ...

戸原 玄 先生

この記事の最終更新は2016年04月22日です。

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 老化制御学系口腔老化制御学講座 高齢者歯科学分野 准教授の戸原玄先生は摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)を専門とされ、外来診療だけでなく往診での在宅診療を行っています。地域のクリニックからの依頼による連携、そして「摂食嚥下関連資源マップ」というウェブサイトを通じた全国的な医療連携の取り組みについてお話をうかがいました。

地域で在宅診療に力を入れている医師の中でも、特に神経内科などは嚥下の悪い患者さんを多く抱えています。往診の依頼元としてはそういった在宅中心のクリニックがもっとも多く、その他にも在宅の歯科からの依頼もあります。在宅の歯科からの依頼には、併診(へいしん)のような形で主治医と一緒に診る場合と、単独で依頼される場合があります。

併診をする歯科医の先生からは、患者さんのさまざまな情報をもらうことができます。ところが単独での往診依頼では、患者さんの疾患情報などがあまりなく、ただ「嚥下が悪いので診てほしい」というケースがしばしばあります。患者さんの状態を正しく評価するためにはやはり疾患の情報、少なくともどんな薬を服用しているのかといったことは必要ですし、たとえば「脳梗塞」とだけ書いてあって他に情報がないというのはさすがに診断に困ります。

外来まで頑張って来てくださったことで疲れてしまう患者さんもいますし、逆に家ではうまく飲み込めないのに外来に来たときは飲めてしまうということもあり、普段の様子がわからないことがあるからです。

たとえばある高齢の患者さんの場合、ADL(activities of daily living:日常生活動作)の面では普通で、少し痩せていらっしゃる程度だったのですが、むせるので診てほしいという依頼がありました。ご自宅にうかがったところ、椅子に座って食事をされているのですが、テーブルの高さが低すぎてかなり前かがみになっておられました。おそらくそのことが少なからず影響していると考えられたので、もっと高さのあるテーブルで食事をすることをご提案したことがあります。こういったことは外来で患者さんを診ているだけではわかりません。

実際に生活されているところへうかがってみると、環境因子がどうなっているかということがわかります。そこから良くないものを取り除くだけで改善できるような要因はたくさんあります。

私が業務主任者を務める「高齢者の摂食嚥下・栄養に関する地域包括的ケアについての研究」(厚生労働科学研究委託費長寿・障害総合研究事業)では、摂食嚥下関連資源マップというウェブサイトを公開しています。

このサイトでは研究結果を紹介するとともに、摂食嚥下障害の治療をしている医療機関を一覧表示または地図で探すことができます。現在はまだ検索機能がありませんが、登録医療機関を増やしつつ、使い勝手を良くしていきたいと考えています。

また将来的には、要介護の方や胃ろうの方が食べられるメニューのある飲食店をピックアップして掲載したいと考えています。嚥下の訓練をして食べられるようになったときに行ってみたいお店があるということがモチベーションにもなりますし、外へ出かける動機付けにもなるのではないかと考えているからです。

我々はこのサイトを足がかりに連携が進み、地域や医療・介護資源がつながっていくことを目指しています。それにはまず、ひとりでも多くの方に「摂食嚥下関連資源マップ」を知っていただくことが重要であると考えています。

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  • 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授、東京医科歯科大学病院 摂食嚥下リハビリテーション科 科長

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