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新型コロナウイルス感染症と嗅覚・味覚障害の関係~医療機関を受診すべき基準は?~

新型コロナウイルス感染症と嗅覚・味覚障害の関係~医療機関を受診すべき基準は?~
堀井 新 先生

新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授

堀井 新 先生

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年02月19日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症の初期症状では鼻水や咳、軽い喉の痛み、発熱、筋肉痛や体のだるさ(倦怠感)など風邪のような症状が生じるほか、“においや味が分からない”といった嗅覚・味覚障害が見られる人もいることが分かっています。

では、新型コロナウイルス感染症にかかった場合に生じる嗅覚・味覚障害はどのようなものなのでしょうか。また、嗅覚・味覚障害を疑うような症状が現れた場合はどのような対応をとればよいのでしょうか。

今回は、新型コロナウイルス感染症によって嗅覚・味覚障害が現れる確率や症状の特徴、症状が現れた場合の対応などについて、新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授の堀井(ほりい ) (あらた)先生にお話を伺いました。

嗅覚障害に関しては、ウイルスに感染することによって鼻の中の粘膜が腫れ、においの元となる空気が鼻の中を流れなくなってしまうことが原因と考えられます。においを感じる細胞は嗅裂(きゅうれつ)といい、目と目の間あたりに位置しますが、鼻の粘膜がウイルスに感染すると粘膜の腫れによって嗅裂まで空気が届かなくなってしまうことでにおいを感じにくくなるといわれています。

次に味覚に関しては、2つのメカニズムが重なることによって障害が生じていると考えられます。1つ目は嗅覚障害に付随して生じる味覚障害です。健康なときでも、鼻をつまんで食べ物を食べると味が分からなくなることがあります。このようににおいは味と強く関係しているため、においが分からなくなることによって味も分かりにくくなることが1つの原因と考えられます。

2つ目は新型コロナウイルスの感染の特徴によるものです。新型コロナウイルス感染症はACE2受容体を持つ細胞に感染することが分かっています。ACE2受容体を持つ細胞は体中さまざまなところに存在しますが、口の中にも多く存在します。口の中のACE2受容体を持つ細胞が新型コロナウイルスに感染することによって、味を感知する“味蕾細胞”が破壊され、味が分かりにくくなるのではないかと考えられています。

ヨーロッパのデータによれば、新型コロナウイルスに感染した人の80~90%が嗅覚・味覚障害を訴えているといわれています。日本の感染者における嗅覚・味覚障害の発生頻度はまだ明らかになっていませんが、ヨーロッパ同様に比較的高い確率で嗅覚・味覚障害が発生しているのではないかと考えられています。

また、嗅覚・味覚障害を訴える感染者の特徴はまだ明らかではありません。しかし、高齢の方はもともと加齢によって嗅覚・味覚の機能が落ちており、障害に気付けない可能性があると考えられます。そのため、嗅覚・味覚の機能が健常にはたらいている若い方のほうが症状に敏感に気付くケースが多いと予測されます。

“まったくにおいや味を感じない”という場合、新型コロナウイルス感染症にかかっている可能性があると考えます。

新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚症状は、強い症状が急速に現れる傾向にあると考えられています。一般的な嗅覚・味覚症状は徐々に嗅覚・味覚が低下していき、“なんとなくにおいや味を感じにくくなった”と自覚して病院を受診する患者さんが多いです。

しかし、新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害の場合、突然症状が現れてにおいや味がまったく分からなくなってしまう患者さんが多いといわれています。そのため、“急ににおいや味がまったく分からなくなった”というときは注意が必要です。

前述のヨーロッパのデータによれば、新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害は発症から2週間後には44%で治癒しています。その後の長期生成期は不明ですが、徐々に回復して行くと考えられています。ただし、中には障害が残る例もありますので注意が必要です。

新型コロナウイルスに感染すると症状がまったく現れない方、軽微な症状で済む方、重症化し生命の危機が生じる方など、さまざまな経過パターンが現れます。そのため、軽症なケースでは咳・発熱などの症状がなく、嗅覚・味覚障害だけが生じるケースもあると考えられます。

嗅覚障害に関しては、通常の風邪や副鼻腔炎アレルギー性鼻炎などが挙げられます。風邪による嗅覚障害は風邪が治った後に生じ、鼻水や鼻づまりなどの鼻症状がなく、においが分からなくなることが一般的です。

一方、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による嗅覚障害は鼻水・鼻づまりなどの症状が現れ、次第ににおいが分からなくなっていきます。また、副鼻腔炎の場合には(うみ)のような鼻水が出ることも特徴です。

味覚障害に関しては、病気ではなく多くは亜鉛不足によるものと考えられています。亜鉛とは、新しい細胞を作るために重要な役割を果たしているほか、味覚を感じる細胞(味蕾細胞(みらいさいぼう))にも大きく関与する栄養素です。亜鉛が不足していると味を感じにくくなるほか、貧血食欲不振などさまざまな症状が現れるといわれています。

新型コロナウイルス感染症にかかっている可能性を考慮し、感染を広げない対策をとったうえで、まずは2週間程度様子を見ましょう。様子を見ていくなかで、咳や発熱など嗅覚・味覚障害以外の新型コロナウイルス感染症を疑うような症状が現れた場合には、重症化し肺炎が生じる恐れがありますので、以下の目安を参考にして各自治体の相談窓口にご相談ください。

一方で、2週間経過するうちに嗅覚・味覚症状が自然治癒した場合は、特に医療機関の受診などはしなくてよいでしょう。

各自治体の相談窓口に相談する目安

  • 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)、高熱などの強い症状のいずれかがある場合
  • 重症化しやすい方*で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
  • 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合

*高齢者、基礎疾患(糖尿病心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)など)がある人、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている人、また妊娠中の人も念の為、重症化しやすい人と同様に考える

なお、症状が4日以上続く場合は必ず各自治体の相談窓口に問い合わせをしましょう。症状には個人差があるため、強い症状だと感じる場合はすぐに相談をしてください。病院の受診時にはマスクを着用するなどして感染の拡大防止に努めるようにしましょう。

嗅覚・味覚障害が生じてから2週間経過しても咳・発熱などの症状が現れないうえ、嗅覚・味覚症状も改善されない場合は、新型コロナウイルス感染症以外の病気が原因となっている可能性が高いです。このような場合には、別の病気である可能性を考えて耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。

患者さんのなかには「2週間も様子を見るのは心配なので、早く診断・治療をしてほしい」と考える方もいらっしゃいますが、嗅覚・味覚障害の原因が副鼻腔炎アレルギー性鼻炎・亜鉛の欠乏など一般的な耳鼻咽喉科の病気であった場合、2週間のうちに症状が悪化し、治りにくくなるということは考えにくいです。そのため過度に不安になりすぎず、症状が長引いた場合に病院の受診を検討しましょう。

新型コロナウイルス感染症の初期症状として嗅覚・味覚障害が生じる可能性があるということが国民の皆さんに周知されたことは、新型コロナウイルス感染症の早期発見につながると考えられるため、よいことであると思います。

ただし、医療機関の混雑や混乱を避けるためにも嗅覚・味覚障害の症状が現れたときはすぐに病院を受診するのではなく、まずは2週間様子を見ていただきたいです。2週間のうちで咳や発熱など新型コロナウイルス感染症を疑うような症状が現れてきた場合には各自治体の相談窓口に相談し、病院の受診を検討してください。また、この2週間は自分が新型コロナウイルスに感染しているかもしれないという自覚を持ち、他人に感染させないように対策をしてください。

2週間経過しても嗅覚・味覚障害が治らないときには、新型コロナウイルス感染症以外の病気を疑い、耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。

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  • 新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授

    堀井 新 先生

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