インタビュー

味覚障害の治療-他診療科との連携も重要

味覚障害の治療-他診療科との連携も重要
任 智美 先生

兵庫医科大学 耳鼻咽喉科 講師

任 智美 先生

この記事の最終更新は2016年02月15日です。

「味覚障害の検査-受診すべき診療科とは」で述べたように、ひと口に味覚障害といっても原因はさまざまですから、検査の結果を見て、しっかりと原因を突き止めた上で治療方針を決めることが重要です。亜鉛製剤の処方を中心に漢方も併用して治療に当たっておられる兵庫医科大学耳鼻咽喉科の任智美先生に、治療の現状と展望についてお話を伺いました。

味覚障害の治療について、現在のところ治療法として明確なエビデンス(科学的な根拠)に基づいているのは亜鉛を補う方法だけですが、症状によってはそこに漢方を加えていきます。亜鉛不足が原因で味覚障害が起こっていると考えられる場合は、亜鉛を含んだ薬剤をまず処方します。また、自己治癒力を高めるために漢方薬を処方することもあります。亜鉛の治療だけで短くても3カ月、長い場合は1年程度服用し続ける必要があり、平均で半年程度要します。

質的障害の患者さんに対しては特に漢方を併用するケースが多くあります。患者さんの中には亜鉛の服用では改善が見られなかったため服用をやめ、併用していた漢方についても加齢に対応する漢方に変えて処方したところ治療できたケースもあります。私自身は漢方による治療も重視しています。

味覚障害は、全身性疾患をはじめ他の病気が原因で起こっている場合があり、他の重篤な疾患を知る入り口になるときもあります。その際には院内で他の診療科に紹介しています。貧血がわかることもありますし、脳梗塞脳出血がわかるケースもあります。また兵庫医科大学病院では、大腸に原因のある病気を持っておられる患者さんで味覚障害を初発症状として来院された方も何人かおられます。

心因性のストレスが原因である場合、兵庫医科大学病院にはカウンセリングのための専門のスタッフが在籍しているので、カウンセリングを行うこともあります。ただ、ほとんどの医療機関の耳鼻咽喉科でそうした対応がなされているわけではありません。

味覚障害はまだまだ未解明の部分が多い分野です。原因の多くは亜鉛不足とされていますが、そのほかにも味覚障害にかかわる微量元素やビタミン類などがあるのではないかとも考えられており、私自身も研究を続けているところです。近年は、味覚の感じ方にかかわる基礎研究での成果が数多く出されています。どの段階でどのようなことが原因で味覚障害が起こっているかが明らかになってくることによって、新たな治療法の開発も進んでくるものと期待しています。

 

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