概要

頭頸部外科(とうけいぶげか)とは、“頭頸部”と呼ばれる部位に発生する病気に対して治療を行う診療科のことです。

頭頸部とは頭から首にかけての部位の中で、脳、目、頚椎(けいつい)(首の骨)を除いた部位を指します。具体的には、耳・鼻・口腔(こうくう)・喉(上咽頭・中咽頭・下咽頭・喉頭(こうとう))・食道(頸部食道)・唾液腺・甲状腺・副甲状腺・頚部リンパ節などさまざまな器官が含まれます。

頭頸部外科はこの部位に発生するがん良性腫瘍(りょうせいしゅよう)などの手術をする専門的な診療科ですが、一般的には耳鼻咽喉科(じびいんこうか)の医師が担っています。

頭頸部の器官は会話や食事に必要な機能をつかさどるだけでなく、聴覚・嗅覚・味覚などの感覚機能や容貌などにも大きな影響を与えるのが特徴です。そのため、頭頸部外科領域の治療は単に病気を取り除くことだけではなく、可能な限り咀嚼(そしゃく)や発声などの機能を温存すること、見た目の大きな変化を防ぐことも求められます。

原因

頭頸部にはさまざまな病気が発生しますが、特に多いのは喉頭がん咽頭がん口腔がんなどの悪性腫瘍です。また、副鼻腔(ふくびくう)、唾液腺、甲状腺や副甲状腺に発生する悪性腫瘍・良性腫瘍の手術も頭頸部外科が担います。

頭頸部がんの原因はがんの種類によってさまざまですが、喉頭がんや下咽頭がんはアルコールや喫煙が発症に関与しています。そのほか、上咽頭がんはEBウイルス感染、中咽頭がんはヒトパピローマウイルス感染が関与することがあります。

検査・診断

頭頸部外科領域の病気が疑われるときは、必要に応じて次のような検査が必要となります。

画像検査

鼻や喉の奥の腫瘍が疑われる場合は、まず内視鏡で内部の状態を詳しく観察する検査が行われます。

次に腫瘍の場所や性状を詳しく調べるために画像検査が行われます。病気の有無を簡易的に評価するためにX線検査を第一に行うケースもありますが、頭頸部に発生する腫瘍はX線では映らないことも多いため、一般的にはCT検査やMRI検査、PET(ペット)検査、超音波検査などが行われます。

また、唾液腺腫瘍などが疑われる際は唾液腺の内部に造影剤を注入して閉塞(へいそく)の有無などを調べる唾液腺造影検査などが行われることもあります。

血液検査

貧血や炎症の有無など体の状態を調べたり、腫瘍マーカー(がんが発生すると体内で盛んに産生されるようになる物質)の有無を調べたりするために血液検査が行われます。また、甲状腺や副甲状腺の腫瘍などの場合はホルモン値に異常がないか調べるのが一般的です。

病理検査

発生した病気がどのようなものか確定診断をするため、病変部の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する病理検査が行われます。

内視鏡などを用いて病変部を観察できる場合は直接組織を採取できますが、直接観察できない甲状腺や副甲状腺の病気が疑われるときは、超音波で病変部を観察しつつ皮膚から針を刺して組織を採取する検査が必要です。

治療

頭頸部外科では、主に頭頸部に発生した腫瘍の摘出手術を行います。また、病気のタイプによっては手術以外にも、抗がん剤治療、放射線治療、免疫治療などを行うケースも少なくありません。

頭頸部には咀嚼、発声、呼吸、味覚・聴覚・嗅覚などの機能をつかさどる器官が多く存在します。また、容貌にも大きく影響する部位であるため、もちろん病気を取り除いて根治を目指すことも大切ですが、治療後もできるかぎりさまざまな機能を残し、容貌を最大限に変化させないことを目指すことも必要です。

そのため、頭頸部領域の病気は一般的には耳鼻咽喉科医が担いますが、術後のQOL(生活の質)をキープするために歯科、形成外科など関連する多くの診療科とチームを形成して治療にあたる場合も多いです。病変が大きな場合は、それらのチームで手術によって失われた部位を再建するための手術が必要になることもあります。

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