概要
頭頸部がんとは、頭部から頸部までの範囲(頭頸部)に発生するがん(上皮系の悪性腫瘍)のことです。具体的には、口の中、のど、鼻の中、唾液腺などに発生するがんの総称のことで、“頭頸部がん”自体がひとつの病名というわけではありません。また、脳や脊髄、目の中には上皮系の腫瘍は生じませんので、たとえ悪性腫瘍が生じても頭頸部がんには含まれません。
頭頸部には、発声や咀嚼、味や臭い、音の感知など私たちが生きていくうえで非常に重要な機能を担う器官が多く存在します。そのため、頭頸部がんを発症すると声が出せなくなったり、味が分からなくなったりするなど社会生活を送るうえで大きな支障をきたす症状が現れる可能性があります。また、進行すると治療が難しく、他部位に転移するなど重篤な状態に陥ることもあります。
頭頸部がんは全てのがんの5%ほどと比較的珍しい病気です。一方で、喫煙や過度な飲酒などが発症リスクとなるものも多く、発症を予防するには生活習慣の改善が重要であると考えられています。
原因
頭頸部がんの原因は、がんの種類によって大きく異なり、発症メカニズムが詳しく分かっていないものも少なくありません。
しかし、中でも下咽頭がんや喉頭がんはアルコールの多飲や喫煙が発症に大きく関わっていることが分かっています。また、舌や歯肉などにできる口腔がんもアルコールの多飲や喫煙がリスクになるとの報告があります。
そのほか、EBウイルスやヒトパピローマウイルス感染は咽頭がんの発症に関与していると考えられています。
症状
頭頸部がんの症状は、がんの種類によって大きく異なります。
基本的にはどの種類のがんも発症部位にしこりやびらん(ただれ)を形成し、周囲の組織を破壊しながら徐々に大きくなっていきます。早期段階に発生するしこりやびらんなどの病変は通常痛みを伴わず、口腔がんなど病変が見える部位に発生するがん以外は発見が遅れることも少なくありません。しかし、進行すると発生部位に特有の症状が現れるようになります。具体的には、それぞれの部位によって次のような症状が現れます。
- 鼻腔・副鼻腔:鼻血、鼻づまり、顔面の腫れ
- 口腔:口腔内のしこり、出血
- 喉頭・中咽頭・下咽頭:のどの違和感、声のかすれ、飲み込みの悪さ、首のしこり
- 唾液腺:首やあごのしこり、痛み、顔面神経麻痺
また、頭頸部がんは進行すると首のリンパ節に転移することも少なくないとされています。
検査・診断
頭頸部がんに対する検査はがんの種類によって異なりますが、基本的には次のような検査が行われます。
画像検査
がんの大きさ、位置、転移の有無などを調べるための検査です。
超音波検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査などが行われますが、多くは造影剤(血管を描出しやすくなる薬)を注射しながら画像撮影を行う“造影CT検査”や“造影MRI検査”が実施されます。
内視鏡検査
鼻の中やのどなどに発生する頭頸部がんは口や鼻から内視鏡を挿入して、病変の状態を詳しく観察する検査を行うことができます。
病理検査
どのような種類のがんか確定するために必要な検査です。検査では、がん病変の組織の一部を採取し、顕微鏡での詳しい観察が行われます。
口腔内に発生したがんは病変の組織をそのまま採取することができますが、鼻やのどなど直接採取が困難な場所に発生するがんは、内視鏡を用いて採取を行います。また、唾液腺がんなど体表面からしこりが触れる場合は、皮膚から病変部に針を刺して組織を吸引する“穿刺吸引細胞診”や“針生検“を行うのが一般的です。
血液検査
血液検査でがんに関連することが直接分かるわけではありません。また、頭頸部がんに特異的な腫瘍マーカーは存在しません。しかしながら、今後のがん治療にどれくらい耐えられるか、体全体の問題を確認するために行います。
治療
頭頸部がんの治療もがんの種類や進行の程度によって異なりますが、基本的には次のような治療が行われます。
手術
頭頸部がんでは、多くのがんで手術による切除が行われます。早期の段階で発見されたケースでは広範囲な切除は必要ありませんが、周囲のリンパ節などに転移を起こしている場合には、切除しなければならない範囲が広くなります。なかには欠損した組織を補うための“再建手術”が同時に行われることも少なくありません。
放射線治療
上咽頭にできるがんは、放射線を中心とした治療が第一選択となります。中咽頭・下咽頭・喉頭がんで、手術による切除を行うことで機能を大幅に損なう可能性がある場合などで、放射線療法を中心とした治療で根治が期待できる場合は、放射線治療が優先して行われます。
一方、手術をした場合でも、進行がんのため再発の可能性が高い場合は、術後に再発防止のため放射線治療を行うのが一般的です。
抗がん剤治療
頭頸部がんでは、手術前にがんを小さくするため、術前に抗がん剤治療を行うことがあります。また、抗がん剤治療は放射線治療の効果を高めることが分かっているため、両者を併用して行うことも珍しくありません。
そのほか、治療後に再発や転移したケースでは生存期間を延長し、がんによる症状を緩和する目的で抗がん剤治療を行うことがあります。
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