概要
舌がんとは、舌に発生するがんのことです。舌がんは、口の中にできる“口腔がん”の約60%を占め、口腔がんのなかでもっともよくみられるがんとされています。60歳代に多くみられ、男性に多いのが特徴です。
舌がんは舌の縁にできやすく、早期の段階では、ただれたり、赤くなったり白くなっている部分を認めたり、口内炎のような病変が現れます。進行するとしこりを触れるようになり、盛り上がってきたり、くぼんだ潰瘍を形成したりします。その結果、舌の動きが悪くなって物の飲み込みが悪くなったり、言葉を発しにくくなったりすることも少なくありません。また、比較的早い段階で首のリンパ節に転移することがあります。
舌がんの根本的な治療には、がんのある部位とその周辺を切除する手術が中心となります。そのため、進行した舌がんの手術後は飲み込みや構音などにも影響を及ぼしたりするなど、治療後も日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。舌がんは虫歯や合っていない入れ歯などによる慢性的な刺激、喫煙・飲酒、不衛生な口腔環境などで発症リスクが上がるため、日頃から口の中の管理や生活習慣の改善を心がけることが大切です。
関連するがん
舌がんをはじめとする鎖骨より上の脳や眼球、皮膚を除く部位から発生するがんを“頭頸部がん”といいます。頭頸部がんには、舌がんなどの口腔がんのほか、喉頭がんや咽頭がん、甲状腺がん、上顎洞がん、唾液腺がんなどがあります。頭頸部がんはもともと発生頻度の低いがんで、頭頸部がんの中でもっとも頻度の高い舌がんでも、全がんの1%程度といわれています。
頭頸部がんは主に耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて診療されることが一般的です。気になる症状があれば、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の受診を検討しましょう。
原因
舌がんのリスクを上げる因子として、喫煙、飲酒、慢性的な物理的刺激などが挙げられます。特に喫煙は非常にリスクが高くなり、舌がんの80%は喫煙によるともいわれています。また、喫煙と飲酒が両方あるケースではさらに発症リスクが上がるとされています。
さらに、舌への慢性的な刺激が加わることで発症しやすくなることが分かっています。具体的には、乱れた歯並びや虫歯、サイズの合わない入れ歯などによる物理的な刺激が挙げられますが、舌がんはそれらの刺激が生じやすい舌の縁に発生しやすいのが特徴です。また、歯周病など口の中が不衛生な状態が長期間にわたって続くと舌がんの原因になることも少なくありません。
症状
舌がんの約90%は舌の縁に発生しますが、症状の現れ方は人によって大きく異なります。
多くは発症すると早期の段階では、ただれたり、口内炎のような病変が現れたりしますが、その後、しこりを触れるようになります。
進行していくと、ただれた部分や口内炎のような病変がえぐれたように大きな潰瘍になったり、カリフラワーのように盛り上がったりするようになります。この段階まで進行すると痛みや出血が生じたり飲食物がしみたりするようになり、舌の動きが悪くなっていきます。その結果、飲食物や唾液の飲み込みが悪くなる、構音がうまくできなくなるといった症状が現れます。また、大きくなった病変が壊死すると悪臭を放つようになります。
このほか、比較的早い段階から頚部リンパ節転移を生じやすいのも特徴です。
検査・診断
舌がんの多くは、医師による視診や触診などによって特別な検査をすることなく診断することが可能です。一方で、舌には舌がんと似たような潰瘍や口内炎に似た症状を引き起こす病気もあるため、確定診断のためには病変組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する“病理検査”が必要になります。
また、舌がんは早い段階でリンパ節転移を起こしやすいため、病理検査で確定診断が下された場合は超音波検査やCT、MRI検査などを行って病変の大きさや広がり、転移の有無などを調べるのが一般的です。
治療
舌がんの治療は、主に手術、放射線療法、薬物療法(抗がん剤治療)から成り立っており、進行した舌がんではこれらを組み合わせて行います。基本的に、舌がんは手術によって病変部分を切除することが重要になってきます。また、頚部リンパ節に転移が生じているときは、周辺のリンパ節も含めて広く切除する“頸部(リンパ節)郭清術”を行います。
早期段階で手術をした場合は、舌を切除する範囲も少ないため術後の飲み込み・構音などの機能に大きな支障をきたすことはありません。一方で、がんが進行して大きくなった段階で手術を行う場合は広範囲に舌を切除しなければならず、場合によっては失われた舌の代わりに太ももやお腹の組織を採取して新たな舌を形成する“再建術”を行うことになります。さらに、術後病理検査の結果によっては放射線療法や薬物療法(抗がん剤治療)を追加して行います。
また、手術後は飲み込みや構音などのリハビリテーションを継続して行わなければならず、進行した舌がんの治療は長い時間を要します。
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予防
上でも述べたとおり、舌がんのリスクを上げる主な因子は喫煙・飲酒です。舌がんを予防するには禁煙し、過度な飲酒を避けることが大切です。
また、歯並びや虫歯、入れ歯などが舌に当たって刺激を受けている状態や口の中が不衛生な状態は舌がんのリスクになるので、思い当たる原因がある場合は適切な歯科治療を受けるようにしましょう。
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舌の違和感と痛み
食事後に舌がピリピリし、鏡で見たら少し舌の白い皮が何ミリか剥けていました。食べもので傷がつく事が原因でしょうか。このまま様子をみてどの位で治りますか。ものがあたると皮に触って違和感や痛みあります。
痛み・違和感の原因
1ヶ月前くらいから肛門なのか、膣なのかは分かりませんが、その部位に違和感があります。 排便後が一番あると言えばあるので、痔なのかと思いつつ、膣の入口のような気もしています。 しばらく残る痛みは切れ痔のような痛みではなく、鈍痛というか、鈍い痛みでなんとも言い難い感じです。 生理は毎月きていて、普通です。生理の時に強くなるということもなく。 排便のときだけでもないので、よくわかりません。(排便後が一番気になります。) このような症状の場合に考えられる病気は何がありますか? また、婦人科、肛門科どちらに行った方がいいのでしょうか?
喉に突っかかった感じがあり食べ物を食べるのが怖くなる
食べ物が喉に突っかかった感じが時々して落ち着かなくなり食べるのが怖くなり飲み込めなくなります。時々そんな風になりつらいです。思い込みかなと思ったりもしますが突っかかたかんじがするときに出そうとオェっするとほんとに食べ物が出てくる時もあります。 7年以上前妊娠中に味噌汁を食べていてその時ネギが突っかかた感じがずっと残りそれからよだれが止まらなくなり出産するまで唾液過多が続き辛かったです。その後より時々この様な症状にが苦しんでいます。
舌の赤み炎症を繰り返す
舌の右手前、側面(縁)の赤い炎症が定期的に起きます。 その都度、近隣の口腔外科にも行き相談していました。 何か炎症(舌炎)だねと言われ、軟膏を処方されます。 口内炎のように激しい痛みなどはなく、歯に触れると痛かったり痛みがなかったりもします。 直径5ミリくらいの円形程の範囲で赤くなり 舌のひとつひとつのヒダが目立つ感じです。 毎回同じ場所なのがとても気になります。 今回で3回目です。毎回全く同じ症状です。 5月12日〜5月18日よく覚えていませんが自然と赤みが引きました。 5月30日〜6月6日、軟膏を塗って4日ほどで色もヒダの荒れも目立たなくなりました。 6月22日〜円形の白い輪っかができていて、中が赤くヒダが荒れています。 相談した時に歯科の先生から言われたのは、 寝ている時の口呼吸が原因かな?と言われました。 確かにアレルギー性鼻炎持ちで朝起きると喉や口腔内が張り付くくらい乾燥して酷い時もあります。 耳鼻科にも行っているのですが、 幼い頃から口呼吸が癖です。 寝ている時以外は唾液量は多いです。 舌の同じ場所に繰り返し炎症?赤みなどが起き 1度は治る(完全では無いかもしれないが見た目上は綺麗になる)というのは心配した方が良いのでしょうか? 舌癌になったりするのでしょうか? また、症状は様々ですが時々こんなふうに口腔内の不調が今年の2月頃から起きています。 内科的原因も考えられるのでしょうか? 教えてください。
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