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写真で見る舌がんの症状と原因-口内炎のようなしこりが治らない時は注意

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  • 公開日:2016/06/18
  • 更新日:2016/06/18
写真で見る舌がんの症状と原因-口内炎のようなしこりが治らない時は注意

食べる・話すなど、私たちが生きていくために欠かせない役割を担う「舌」。この舌の縁にできることが多い「舌がん」は、口内炎と勘違いしやすいものの、鏡で自分でも確認することができるため、早期に発見されることが多いといいます。疑うべき症状が現れたときは、どの診療科に行けばいいのでしょうか。症例写真をご提示いただきながら、舌がんの特徴と病院での検査・診断について、東京医科歯科大学頭頸部外科教授の朝蔭孝宏先生にお話しいただきました。

舌がんとは、その特徴-口腔がんのうち50~60%を占める

口の中にできるがんの総称「口腔がん」のうち、最も多くみられるものが舌にできる「舌がん」です。2013年度の頭頸部がん学会の報告によると、口腔がんとして登録された2202例中、舌がんが1238例と、56%もの割合を占めています。

口の中にできるがんは、食事や喋ること(発声)などをはじめ、私たちが健康的かつ社会的にいきていくために欠かせない機能に密接な影響を及ぼします。そのため、治療においても根治を目的とするだけでなく、QOL(生活の質)を保つことも考慮して行わねばなりません。

舌がんの原因-飲酒や喫煙がリスク因子となる

舌がんの原因は明らかにはなっていませんが、リスク因子は飲酒、喫煙とされています。舌がんに限らず、下咽頭がんなどの頭頸部がんは全体的に男性に多くなっていますが、性差が生じる原因として、飲酒や喫煙習慣があるからではないかと考えられます。

このほか、歯が内側へと傾いており、舌にあたって慢性的な刺激となってしまうことが、がんの原因であるとも考えられています。

ただし、一般的ながんの発症年齢のピーク(50代~60代)とは異なり、舌がんは飲酒や喫煙を長期に及んで続けていない20代の若い方でも発症するという特徴を持っています。こういったケースにおいては別の因子が関係している可能性もあり、今後の解明が待たれます。

※50歳未満での発症が、舌がんの4分の1を占めています。

写真でみる舌がんの症状-鏡を見ることで自分で気づけることも

舌がんは、自分で鏡を見て気づくことができるがんであるため、患者さんの約3分の2は、早い時期に病変に気づいて受診されます。

舌がんの典型的な症状は、舌の両側の縁の部分にできる硬いしこりです。これが歯にあたるなどして、出血や痛みを伴うこともあります。また、頻度は少ないものの、舌先の裏にがんが生じることもあります。

舌癌写真朝蔭先生よりご提供
舌がんの症例写真:画像提供 朝蔭孝宏先生

尚、舌の表面中央や先端にできることはほとんどありません。

舌がんのステージ1は2㎝以下、ステージ2は2㎝以上4cm以下とされていますが、舌に2㎝~3㎝といった大きさのしこりがあれば、大半の方は違和感を覚えて病院を受診されます。実際に頭頸部がん学会の報告でも、登録された舌がん1238例のうち、ステージ1での発見は379例、ステージ2での発見は348例と半数以上の約700名の方が早期段階で受診し、発見されるに至ったと示されています。

ただし、舌とは筋肉の塊であり、表面ではなく奥深くにがんが入り込むようにできることがあります。このような舌がんは進行しやすいうえに気づきにくいため、重症化してから発見されることもあります。

重症の舌の症状-早期の舌がんでも首に転移することがある

舌がんが進行すると、病変は潰瘍になり、持続性の痛みや出血、強い口臭といった症状が現れます。

また、早期の舌がんでも、首のリンパ節にがんが転移してしまい、急激に進行するものもあります。これは先にも触れたように、舌が筋肉の塊であり、血液とリンパの流れがよい部分だからです。つまり、良好な血流やリンパの流れにのり、がんが頸部へと飛びやすい環境であるということです。たとえば「扁桃腺炎」で、首のリンパ節が腫れたという経験をしたことのある方も多いでしょう。

このように口の周囲はリンパ流が発達しているため、ステージ1やステージ2といった早期がんでも、1年以内に頸部にポッコリとした腫れが生じる方が3割ほどみられます。早期の舌がんは、比較的転移しやすいがんといえるでしょう。

早期の舌がんの手術治療は30分~40分ほどで終わる簡単なものですが、転移してしまった場合は2度目の手術が必要になります。

【舌がんのステージ分類】

 

頸部リンパ節への転移がない

3㎝以下の頸部リンパ節転移が同側に1つある

6cm以下の頸部リンパ節転移が同側に1つまたは複数ある

6cmを超える頸部リンパ節転移がある

遠くの臓器に転移している

がんの大きさが2cm以下 ⅣA ⅣB ⅣC
がんの大きさが2㎝を超えるが4cm以下 ⅣA ⅣB ⅣC
がんの大きさが4cmを超える ⅣA ⅣB ⅣC
舌の周囲(舌の筋肉、あごの骨、顔の皮膚)まで広がる ⅣA ⅣA ⅣA ⅣB ⅣC
あごの骨の外側または内頚動脈にまで広がる ⅣB ⅣB ⅣB ⅣB ⅣC

(日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 改訂第4版 2005年10月」の表を参考に作成)

舌がんの自覚症状-口内炎のようなしこりが2週間近く治らない場合は注意

初期の舌がんは口内炎に似ており、耳鼻科や歯科、あるいは内科などでも「口内炎」と誤診を受けやすい傾向があります。処方された塗布薬を使用していても、口内炎のようなしこりが2週間近く治らないようであれば、舌がんを疑って病院に相談することをおすすめします。特に、舌表面がざらつき、しこりが触れるほどになっているときには注意したほうがよいでしょう。

舌がんに進行する可能性もある白板症(はくばんしょう)とは

また、口腔粘膜に厚くべったりとした白斑が形成される「白板症」も、がん化することがあります。白板症は、病理組織学的には異形上皮(いけいじょうひ)と呼ばれ、がんを「クロ」、正常を「シロ」とすると、グレーの疾患であるといえます。グレーのまま経過する人もいますし、放置をしているとクロであるがんに進展することもあります。そのため、白板症は必ずしもすぐに取り去るべきものではないものの、経過観察を行い、がん化の危険を感じられる変化があれば除去する治療を行います。

舌がんの検査・治療は何科で受けられる? 

舌がんの検査や治療は、主に耳鼻咽喉科や頭頸部外科で行います。地域の耳鼻咽喉科を受診し、がんが見つかって頭頸部外科へ紹介されてくる患者さんも多いため、まずはお住まいの地域の耳鼻咽喉科に相談するのもよいでしょう。

がんを切除して縫うだけの早期がんの手術であれば、市中病院で行えることもあります。

東京医科歯科大学の頭頸部外科のような大学病院では、進行がんを切除した後に、形成外科の先生などと共に舌の「再建手術」を行うこともあります。これは、切除が広範囲に及んだとき、食事や発声に支障がでないよう、腿部や腹部の筋肉を舌に移植する手術です。

舌がんの検査と診断-東京医科大学頭頸部外科の場合

舌がんは、口腔内の目に見えるがんですので、診断は比較的容易です。診察時に舌がんを疑う病変があれば、まず生検を行ってがんの有無を確認します。

次に、病変の進展している範囲をみるためにMRI検査を行います。最初にがんが発生した部位の病変「原発巣(げんぱつそう)」の進展範囲をみるためには、造影CT検査、もしくは頸部超音波検査を行う必要があります。

舌がんの検査においてはしこりの長さではなく深さをみることが重要

また、舌に触れる触診も必ず行います。このとき、しこりの範囲だけでなく「深さ」を調べることが非常に重要になります。先にも述べたように、舌はリンパや血流に富んでおり、深く入り込んでいるような舌がんのほうが、転移の危険性も高くなるからです。

舌がんのステージは2㎝、4cmといった長さで判断しますが、治療計画は深さをみて決めていかねばなりません。

舌がんなどの口腔がんがある場合、食道や胃にもがんが見つかることが多い

舌がんの検査の際には、原則として上部内視鏡検査をセットで行います。というのも、口腔は食道や胃などと繋がっており、口腔がんが発見された人のうち10%~30%は、頭頸部領域と食道領域に「多重がん」と呼ばれる複数のがんがみつかるからです。※頻度は文献により差があります。

このような理由から、舌がんの診断に必要な検査と共に、上部内視鏡検査をルーチンとして行い、多重がんの見落としを防いでいく必要があるのです。

また、ステージ3やステージ4の進行がんで頸部への転移がみられる場合には、肺に転移していないか調べるためにPET検査も行うことがあります。

 

朝蔭 孝宏

朝蔭 孝宏先生

東京医科歯科大学 医学部 頭頸部外科学講座 教授

日本でも数少ない頭頸部がん治療のスペシャリスト。患者さんへの負担が少ない低侵襲治療の研究を推し進める傍ら、20時間以上にも及ぶ頭蓋底手術を年間12例以上行う。頭頸部領域のあらゆる腫瘍性疾患に対して、最適、最高の医療を提供する。

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