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口腔がんの症状や治療とは?〜初期には舌や口の中がただれたりすることもある〜

口腔がんの症状や治療とは?〜初期には舌や口の中がただれたりすることもある〜
桐田 忠昭 先生

奈良県立医科大学 口腔外科 教授

桐田 忠昭 先生

目次
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口腔(こうくう)がんは口の中に発生するがんの総称です。

口腔がん自体は、がん全体から見ると発生数はそれほど多いとはいえません。しかし、治療内容によっては見た目や生活に支障が出る場合もあるため、早期発見と早期治療が必要です。

本記事では、口腔がんの基本情報と、口腔がんの中でも発症数の多い舌がんの症状や治療について解説していきます。

口腔がん頭頸部(とうけいぶ)がん*に含まれ、口の中に発生するがんの総称です。頭頸部がんの30〜40%を占め、頭頸部がんの中ではもっとも多く発生します。口腔がんは発生する部位によって舌がん、口腔底がん、頬粘膜がん、歯肉がん、口唇がん(厳密には口腔がんには含まれないものの、同様に扱われています)、硬口蓋(こうこうがい)がんに分類されます。

*頭頸部がん:鎖骨より上に発生し、脳と眼球の腫瘍(しゅよう)を除いたがんの総称。

口腔がんを含む口腔・咽頭(いんとう)がんと診断される人は年間23,500人*ほどで、がん全体で見た罹患率は2〜2.5%ほどです。しかし近年は、日本をはじめ世界各国で口腔がんの罹患率と死亡率が上昇しています。

また、口腔がんの発症が多い年代は60歳代で、男性のほうが女性よりも発症数が多いといわれています。ただし、以前まで発症がまれだった10歳代や20歳代の若い層での発症もみられるようになっています。

*出展:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

口腔がんの初期症状には、舌や口の中がただれる、潰瘍(かいよう)(表面がただれて崩れ落ち欠損している状態)を形成するなどがあります。これらの症状は口内炎と似ているため混同されることもあり、見た目などからは自身で判断することは困難です。

そのため、2週間以上にわたって口内炎が治らない場合は歯科や口腔外科などで一度診てもらうのがよいでしょう。

口腔がんの場合、手術により口腔や、場合によっては顎、頸部(けいぶ)のリンパの一部を切除することが基本的な治療となりますが、早期の場合は放射線治療が選択されることもあります。しかし、進行した場合は手術が必要で、その際には口腔や顎、顔の一部を切除せざるを得ないこともあるため、患者さんに心理的負担が生じることがあります。

早期がんであれば手術範囲も小さく、さほど障害は残りませんが、進行がんで広い範囲を切除しなければならない場合には、切除した部分を補う再建手術も同時に行う必要があり、術後にはさまざまなリハビリテーションが必要となります。また、顎の骨とともに歯もなくなった場合は、顎の再建手術とインプラント入れ歯による咀嚼(そしゃく)の回復も必要になります。

このように、口腔がんは希少ですが、日々の生活に与える影響は大きいといえるでしょう。手術する箇所や範囲が大きいほど外見や生活にも支障が出ることがあるので、やはり早期発見が非常に重要となります。

口腔がんの中でもっとも多く、約半数を占めるのが舌がんです。舌がんの多くは、舌の表面を覆っている細胞(扁平上皮細胞)から発生します。

舌がんの発生原因は主に喫煙と飲酒、合っていない入れ歯や虫歯による慢性的な刺激が挙げられるほか、口腔の不衛生も一因だとされています。特に、口腔がんの約80%は喫煙が原因だといわれているため、飲酒と喫煙を日常的に習慣としている場合、口腔がんや舌がんの発症リスクが高まると考えられます。

舌がんには主に以下のような症状があります。

  • 舌のしこりやただれ、潰瘍、出血しやすい部分がある
  • 舌を動かすと違和感がある
  • 口内炎が完治しにくい
  • 舌の粘膜に赤や白の斑点が生じる
  • がんが進行すると、痛みや出血が続いたり、口臭が強くなったりすることもある

舌がんが発生することが多いのは舌の両脇といわれていますが、舌の表面だけでなく裏側に発生することもあります。

舌がんの治療は、がんの病期によって変わります。

基本的には手術を行いますが、手術を望まない場合や体力的に手術が困難な場合は放射線治療を行うこともあります。その場合、治療の効果を高めるために薬物療法(抗がん剤治療)も併せて行う場合が多いです。

また、術後は追加治療として再発予防のために薬物療法と放射線治療を組み合わせて行う場合があります。

舌がんの手術には以下の3種類があります。

  • 舌部分切除術:がんが小さい場合に行います。切除するのは舌の一部なので、しゃべったり飲み込んだりする機能に及ぼす影響はほとんどありません。また、再建手術も通常必要ではありません。
  • 舌半側切除術:比較的大きながんの場合に行います。がんのある側を半分切除するため、再建手術を同時に行う必要があります。
  • 舌(亜)全摘切除術:がんが舌の半分以上に広がっている場合に行います。舌の半分以上、もしくは舌を全て切除するため、再建手術を同時に行います。

口腔がんがん全体の中ではまれながんですが、進行して舌やリンパ、頸部を切除する治療が行われた場合には生活に及ぼす影響が大きくなる傾向にあります。そのため、切除する箇所や範囲ができる限り小さくて済むように、早期発見・早期治療が必要です。

また、口腔がんの発生要因の約80%を喫煙が占めているほか、飲酒や合っていない入れ歯、虫歯、口腔の不衛生なども原因となることがあるため、禁煙や節酒、口腔の衛生に気を付けることで口腔がんの予防に心がけるとよいでしょう。

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