
口腔がんは口の中に発生するがんの総称です。口腔がん自体はがん全体の1〜1.5%という発生率なのでそこまで多いとはいえません。しかし、治療内容によっては見た目や生活に支障が出る場合もあるため、早期発見と早期治療が必要です。
本記事では、口腔がんの基本情報と、口腔がんの中でも発症数の多い舌がんの症状や治療について詳しく解説していきます。
口腔がんとは、頭頸部がん*の一部で、口の中に発生するがんの総称です。口腔がんは発生する部位によって舌がん、口腔底がん、頬粘膜がん、歯肉がん、口唇がん(厳密には口腔がんには含まれませんが同様に扱われています)、硬口蓋がんに分類されます。
口腔がんと診断される人は年間8,000〜10,000人ほどで、がん全体で見た罹患率は1%ほどです。しかし近年は、日本をはじめ世界各国で口腔がんの罹患率と死亡率が上昇しています。また、口腔がんの発症が多い年代は60歳代で、男性のほうが女性よりも発症数が多いといわれています。
*頭頸部がん…鎖骨より上に発生し、脳と眼球の腫瘍を除いたがんの総称
口腔がんの初期症状には舌や口の中がただれる、潰瘍(傷などのできもの)を形成するなどがあります。これらの症状は口内炎と似ているため混同されることもあり、見た目などからは自身で判断することは困難です。したがって、2週間以上にわたって口内炎が治らない場合は、口腔外科や耳鼻咽喉科などで一度診てもらうのがよいでしょう。
口腔がんの場合、手術により口腔や顎、頸部のリンパの一部を切除することが一般的です。しかし、顔の一部を切除するため顔貌の変形などがあり、患者に心理的負担が生じることがあります。さらに、舌を切除した場合には、発声や物を飲み込むなどの行為に支障が出ることがあります。
早期がんであればさほど障害は残りませんが、進行がんで広い範囲を切除しなければならない場合には再建手術も同時に行う必要があり、術後にはさまざまなリハビリが必要となります。また、顎の骨とともに歯もなくなった場合は、顎の再建手術とインプラントや入れ歯による咀嚼の回復も必要になります。このように、口腔がんは希少ですが、日々の生活に与える影響は大きいといえるでしょう。切除する箇所や範囲が大きいほど外見や生活にも支障が出ることがあるので、やはり早期発見が非常に重要となります。
舌がんの多くは、舌の表面を覆っている細胞(扁平上皮細胞)から発生します。舌がんの発生原因は主に喫煙と飲酒、合っていない入れ歯や虫歯による慢性的な刺激が挙げられるほか、口腔の不衛生も一因だとされています。特に口腔がんの約80%は喫煙が原因だといわれているため、飲酒と喫煙を日常的に習慣としている場合、口腔がんや舌がんの発症リスクが高まると考えられます。
舌がんには主に以下のような症状があります。
舌がんが発生することが多いのは舌の両脇といわれていますが、舌の表面だけでなく裏側に発生することもあります。
舌がんの治療は、がんの病期によって変わります。基本的には手術を行いますが、手術を望まない場合や体力的に手術が困難な場合は放射線治療を行うこともあります。その場合、治療の効果を高めるために薬物療法(抗がん剤治療)も併せて行います。また、術後は再発予防のために薬物療法と放射線治療を組み合わせることがあります。
舌がんの手術には、以下の3種類があります。
口腔がんはがん全体の中ではまれながんですが、舌やリンパ、頸部を切除する治療が行われた場合には生活に及ぼす影響が大きくなる傾向にあります。そのため、切除する箇所や範囲ができる限り小さくなるように、早期発見できることが望ましいです。
また、口腔がんの発生要因の約80%を喫煙が占めているほか、飲酒や合っていない入れ歯や虫歯、口腔の不衛生なども原因となることがあるため、禁煙や節酒、口腔の衛生に気をつけることで口腔がんの予防に心掛けるとよいでしょう。
奈良県立医科大学 口腔外科 教授
奈良県立医科大学 口腔外科 教授
日本口腔外科学会 口腔外科専門医・口腔外科指導医・常任理事日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター日本口腔科学会 認定医・指導医・理事日本口腔内科学会 専門医・指導医・代議員日本顎顔面インプラント学会 指導医・運営審議委員日本歯科麻酔学会 認定医日本小児口腔外科学会 指導医日本有病者歯科医療学会 専門医・指導医・評議員日本口腔腫瘍学会 暫定口腔がん指導医・理事長日本癌治療学会 理事日本頭頸部癌学会 理事日本口腔顎顔面外傷学会 理事国際歯科医療安全機構 執行役員日本学術会議 連携会員
1983年より口腔外科医としてキャリアを積み、埼玉がんセンター、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(米国)へ留学し、一貫して口腔顎顔面領域の疾患とがん治療、研究に取り組んできた。2017年からは日本口腔腫瘍学会理事長、日本口腔外科学会常任理事、日本癌治療学会理事、日本頭頸部癌学会理事などの役職を務め、日本の口腔がんの基礎研究ならびに治療の中心的な役割を担っている。当科では日本口腔外科学会口腔外科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本口腔腫瘍学会口腔がん専門医が在籍しており、各疾患について専門医が責任を持って治療にあたっている。
桐田 忠昭 先生の所属医療機関
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