口腔がんは口の中に発生するがんの総称です。口腔がん自体は、がん全体から見ると発生数はそれほど多くはありません。しかし、治療内容によっては見た目や生活に支障が出る場合もあるため、早期発見と早期治療が必要です。
本記事では、口腔がんの基本情報と、口腔がんの中でも発症数の多い舌がんの症状や治療について解説していきます。
口腔がんは頭頸部がん*に含まれ、口の中に発生するがんの総称です。頭頸部がんの30〜40%を占め、頭頸部がんの中ではもっとも多く発生します。口腔がんは発生する部位によって舌がん、口腔底がん、頬粘膜がん、歯肉がん、口唇がん(厳密には口腔がんには含まれないものの同様に扱われている)、硬口蓋がんに分類されます。
*頭頸部がん:鎖骨より上に発生し、脳と眼球の腫瘍(しゅよう)を除いたがんの総称。
口腔がんを含む口腔・咽頭がんと診断される人は2019年時点で年間23,600人1)ほどで、がん全体で見た罹患率は約1%です。しかし近年は、日本をはじめ世界各国で口腔がんの罹患率と死亡率が上昇しています。また、口腔がんの発症が多い年代は60~70歳代で、男性のほうが女性よりも発症数が多く、以前まで発症がまれだった10歳代や20歳代の若い層での発症もみられるようになっています。
口腔がんの初期には、舌や口の中がただれたり、潰瘍(表面がただれて崩れ落ち欠損している状態)や硬結(しこり)がみられたりすることがあります。これらの症状は口内炎と似ているため混同されることもあり、見た目などから自身で判断することは困難です。そのため、2週間以上にわたって口内炎が治らない場合は歯科や口腔外科などで一度診てもらうのがよいでしょう。
口腔がんの治療では、手術により口腔や、場合によっては顎、頸部のリンパの一部を切除することが基本的な治療となりますが、早期の場合は放射線治療が選択されることもあります。しかし、進行した場合は手術が必要で、口腔や顎、顔の一部を切除せざるを得ないこともあるため、患者に心理的負担が生じることがあります。早期がんであれば手術範囲も小さくて済みますが、進行がんで広い範囲を切除しなければならない場合には、切除した部分を補う再建手術も同時に行う必要があり、術後にはさまざまなリハビリテーションが必要になります。また、顎の骨とともに歯も切除した場合は、顎の再建手術とインプラントや入れ歯による咀嚼の回復も必要になります。
口腔がんの中でもっとも多く、約半数を占めるのが舌がんです。舌がんの多くは、舌の表面を覆っている細胞(扁平上皮細胞)から発生します。舌がんの発生原因は主に喫煙と飲酒、合っていない入れ歯や虫歯による慢性的な刺激が挙げられるほか、口腔の不衛生も一因だとされています。特に、口腔がんの約80%は喫煙が原因だといわれており、飲酒と喫煙を日常的に習慣としている場合、口腔がんや舌がんの発症リスクが高まると考えられます。そのため、禁煙や節酒、口腔の衛生に気を付けることで口腔がんの予防を心がけるとよいでしょう。
舌がんでは主に以下のような症状がみられます。
舌がんが発生することが多いのは舌の両脇といわれていますが、舌の表面だけでなく裏側に発生することもあります。
舌がんの治療は、がんの病期によって変わります。基本的には手術を行いますが、手術を望まない場合や体力的に手術が困難な場合は放射線治療を行うこともあります。その場合、多くは治療の効果を高めるために薬物療法(抗がん薬治療)も併せて行います。また、術後は追加治療として再発予防のために薬物療法と放射線治療を組み合わせて行う場合があります。
舌がんの手術には以下の3種類があります。
口腔がんはがん全体の中ではまれながんですが、進行して舌やリンパ、頸部を切除する治療を行う場合は生活に及ぼす影響が大きくなる傾向にあります。そのため、切除する箇所や範囲をできる限り小さくて済むように、早期発見・早期治療が重要です。
参考文献
奈良県立医科大学 口腔外科 教授
奈良県立医科大学 口腔外科 教授
日本口腔外科学会 理事長・口腔外科専門医・口腔外科指導医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター日本口腔科学会 認定医・指導医・理事日本口腔内科学会 専門医・指導医・代議員日本顎顔面インプラント学会 指導医・運営審議委員日本歯科麻酔学会 認定医日本小児口腔外科学会 指導医日本有病者歯科医療学会 専門医・指導医・評議員日本口腔腫瘍学会 暫定口腔がん指導医・常任理事日本癌治療学会 理事日本頭頸部癌学会 副理事長日本口腔顎顔面外傷学会 理事国際歯科医療安全機構 執行役員日本学術会議 連携会員
1983年より口腔外科医としてキャリアを積み、埼玉県立がんセンター、Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(米国)へ留学し、一貫して口腔顎顔面領域の病気とがん治療、研究に取り組んできた。2017年からは日本口腔腫瘍学会理事長、2020年からは日本口腔外科学会理事長、日本癌治療学会理事、日本頭頸部癌学会副理事長などの役職を務め、日本の口腔がんの基礎研究ならびに治療の中心的な役割を担っている。当科では日本口腔外科学会口腔外科専門医、指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本口腔腫瘍学会口腔がん専門医など在籍しており、それぞれの病気について専門医が責任を持って治療にあたっている。
桐田 忠昭 先生の所属医療機関
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