ちょうきがん

聴器がん

耳・鼻

目次

項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

概要

聴器がんとは、一般的に耳の穴から鼓膜までの外耳道(がいじどう)と耳小骨のある中耳(ちゅうじ)にできるがんを指します。

聴器がんは発症頻度が非常に低く、日本では希少がんのひとつに数えられています。希少がんとは、「年間発生数が人口10万人あたり6例未満の悪性腫瘍」と定義されるがんのことです。

聴器がんに関する全国的な統計調査などの報告はなく、日本における正確な患者数はわかっていません。また、治療成績については様々な施設から報告がなされていますが、数が少ないために学会などからの標準的治療方針は現時点では提示されていません。(2018年7月時点)

聴器がんは耳の良性疾患である外耳道炎とよく似た症状が生じることなどから、診断が難しいがんのひとつとして知られています。

原因

聴器がんなど、多くのがんの発生には、「慢性的に持続する炎症」が関連しているとされます。外耳道にがんが生じる誘因としては、以下のものが挙げられます。

過剰な耳掃除

硬いスプーン状の耳かきを使用した耳掃除は、外耳道の損傷につながります。本来、外耳道には細かな毛が生えており、耳垢などを外へ出す自浄作用が備わっています。しかし、耳掃除を繰り返すことで外耳道の毛がダメージを受けると自浄作用が働きにくくなり、さらなる耳掃除によって皮膚組織が損傷を受けることがあります。

米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNSF)も、上述のような耳掃除による悪影響を指摘しています。耳掃除が聴器がんの発症に直結するわけではありませんが、耳の健康を損なうひとつの要因ということができます。

症状

聴器がんの症状には、以下のものがあります。

耳垂れ

聴器がんの患者さんに多い症状です。耳垂れや耳汁は、正式には耳漏(じろう)と呼ばれます。耳垂れは良性の外耳炎でもよくみられるため、この症状のみで聴器がんの可能性を考えることは難しいといわれています。

耳の痛み

聴器がんでは、耳の痛みが長く継続し、次第に症状が強くなっていく傾向があります。外耳炎による耳の痛みは、適切な抗生物質などの投与により次第に和らぐため、痛みが何か月も続く場合や増強していく場合には注意が必要です。

血の混じった耳垂れ

耳から血や、血が混ざった耳汁が出る症状です。正式には出血性耳漏(しゅっけつせいじろう)と呼ばれます。持続する耳の痛みと出血性耳漏の2つがみられる場合には、聴器がんである可能性も考えた検査が行われます。

顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)

顔面神経とは、顔の表情筋を動かすための神経です。顔面神経麻痺は、腫瘍が大きくなり、近くを走る顔面神経を圧迫することで起こります。

顔面神経麻痺は、聴器がんがT4と呼ばれる、もっとも進行した状態になってから現れる症状です。最初は表情にわずかに左右差が出る程度ですが、やがて顔の半分(腫瘍がある側)が全く動かせなくなります。

このほか、こぶ(腫瘤)の形成や口が開けにくくなる開口障害(かいこうしょうがい)など、さまざまな症状が現れることがあります。

検査・診断

聴器がんの診断に必要な検査には、画像検査や生検などがあります。また、医師による詳しい問診も大切です。たとえば、顔面神経麻痺が生じていないかを確認するために、診察室でさまざまな表情を作り、医師が左右差の有無をみることがあります。

CT検査

がんが骨へ広がっていないか、浸潤(しんじゅん)の有無や程度を確認します。

MRI検査

がんが軟部組織に広がっていないか、浸潤の有無や程度を確認します。

生検・病理検査

腫瘍から採取した組織の一部を、病理科の医師が顕微鏡で詳しく観察する検査です。これにより、聴器がんの確定診断と、組織型の決定を行うことができます。生検(組織の採取)が複数回必要になることもあります。

治療

聴器がんのステージに応じて、手術や、抗がん剤と放射線治療を組み合わせた治療が行われることがあります。根治(完全に治すこと)を目指した手術には、以下の2種類があります。

外側側頭骨切除術(がいそくそくとうこつせつじょじゅつ)

がんが一定の範囲に限局している場合に選択されることが多い方法です。切除の範囲は、がんの広がり具合によりさまざまです。たとえば、鼓膜や耳小骨(音を伝える耳の中の骨)、顎関節や乳突洞(にゅうとつどう)などの周辺組織を切除することがあります。

側頭骨亜全摘術(そくとうこつあぜんてきじゅつ)

側頭骨亜全摘術とは、外耳や中耳のがんを、一つの塊として大きく切除する方法です。側頭骨外側切除術では切除しきれない聴器がんに対して選択されることがあります。

広範囲な切除を行うため、基本的に顔面神経の温存は不可能です。

これらの手術の後に、放射線治療が追加されることもあります。術後の放射線治療は、手術した創部の周辺に残っているかもしれないがん細胞を死滅させるために行われます。