概要
上顎洞がんとは、副鼻腔の1つである上顎洞(頬の骨の裏側にある空洞)に発生するがんです。比較的少ないがんで、2020年度の日本の年間推定患者数は400人程度です。
慢性副鼻腔炎や喫煙などによって粘膜の炎症が長期に持続することで発症しやすくなると推測されています。
上顎洞がんを発症すると頬の腫れやしびれなどが現れます。ただし初期段階では症状が現れにくく、進行した状態で発見されることが多くみられます。また、ほかのがんに比べて転移は少ないと考えられています。
原因
はっきりとした原因は分かっていないものの、上顎洞がんは、慢性副鼻腔炎や喫煙などによって、粘膜に炎症が生じた状態が長期に持続すると発症しやすくなると考えられています。近年では慢性副鼻腔炎になる人が減っていることから、それに関連して上顎洞がんの発症率も下がっているとされています。
症状
鼻づまり、鼻血、膿が混ざったような鼻水などの症状がみられる場合があります。
がんが進行すると頬の腫れやしびれなどの症状が現れます。加えて、がんの広がりに伴いさまざまな症状がみられることがあります。上顎洞の下側や前側に広がった場合は歯の痛みや上顎の腫れ、上顎洞の上側に広がった場合は複視(ものが二重に見える)といったものの見え方の異常、目の突出といった症状、上顎洞の奥に広がった場合は口の開けにくさや頭痛などです。しかし、初期段階では症状が現れにくく、副鼻腔炎の症状と似ているため発見が遅れる場合があります。
検査・診断
上顎洞がんが疑われるときには以下のような検査が必要になります。
画像検査
転移の有無などを確認するためにCTやMRIといった画像検査を行います。
病理検査
上顎洞がんを確定診断するために、病変の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する病理検査(生検)が必須とされます。がんが視診で確認できる場合は、その病変から組織を採取して検査を行います。一方、病変が見えない場合には、状況によって全身麻酔下で鼻に内視鏡を挿入し上顎洞内の病変を採取します。
治療
国際的には上顎洞がんの基本的な治療は手術による病変の切除です。
上顎洞の周囲には目や視神経、口など重要な部位があります。がんが進行している場合には切除する範囲も広くなるため、眼球の摘出などが必要となるケースもあります。病気を根治させるだけでなく、顔の機能をできるだけ温存することも大切であるため、化学療法、放射線療法を組み合わせた治療を行うこともあります。リンパ節に転移しているような進行がんの場合には化学療法を行って病変を小さくしてから放射線療法や手術を行う場合もあります。
近年では、カテーテルを用いてがんに栄養を送る血管に直接抗がん薬を注入する“超選択的動注化学療法”が検証され、良好な成績が確認されています。
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予防
上顎洞がんは、慢性副鼻腔炎や喫煙などによる粘膜の炎症が長期間続くと、発症リスクが高まることが分かっています。そのため上顎洞がんの予防には、副鼻腔炎などに対する適切な治療や、喫煙者であれば禁煙がすすめられます。なお、上顎洞がんの初期症状は鼻づまりなどの副鼻腔炎と似た症状であり、目立った自覚症状がないケースも少なくありません。気になる症状が続くときは軽く考えずにできるだけ早めに医師の診察を受けるとよいでしょう。
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