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新型コロナウイルス感染症における喘息患者の感染の重症化リスク〜日頃の治療こそが重要〜

新型コロナウイルス感染症における喘息患者の感染の重症化リスク〜日頃の治療こそが重要〜
杉山 温人 先生

中部国際医療センター 病院長

杉山 温人 先生

目次
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2020年05月13日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは2019年12月に中国・湖北省武漢市で報告され、全世界に感染が拡大している感染症です。初期症状は発熱・咳など風邪のような症状で、重症化すると肺炎が生じます。基礎疾患があると重症化しやすいと考えられていますが、気管支喘息を持つ人はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。

今回は、気管支喘息の患者が新型コロナウイルス感染症の流行に際して知っておくべきことや注意すべき点などについて、国立国際医療研究センター病院 院長の杉山(すぎやま) 温人(はるひと)先生にお話を伺いました。

喘息患者さんでも、きちんとしたコントロールが得られていれば、新型コロナウイルスに感染しやすいということはないと考えられています。現在の治療をきちんと継続した上で一般的な感染症予防対策を行えば、感染リスクを下げることができます。

日頃の治療で喘息の状態を良好に保てているのであれば、新型コロナウイルス感染症にかかったとしても喘息を理由に重症化しやすくなる可能性は低いでしょう。

ただし、喘息の状態があまりよくない人や日頃の治療を怠っている人の場合、新型コロナウイルス感染症にかかることで喘息の発作が生じる、肺炎によって呼吸不全が起きるなどのリスクが生じる可能性があります。日頃の治療こそが重要です。なお、喘息の発作は季節性インフルエンザなど普通の感染症にかかっても生じることがあるため、新型コロナウイルス感染症特有のことではありません。

今のところ、喘息があることで新型コロナウイルスの感染による肺炎の重症化するリスクが高まるといえるデータはありません

また、喘息患者さんが一般の人と比べて新型コロナウイルス感染症にかかった際にどれくらい重症化しやすいのかはまだよく分かっておらず、ほかの基礎疾患と比較することも現段階では難しいです。

喘息にかかっており、かつ新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいと考えられる高齢者や、がん糖尿病心疾患などほかの基礎疾患を持っている人は重症化するリスクが高まる可能性があり、自身だけでなく同居しているご家族も十分な感染予防が必要と考えます。

風邪症状や気管支炎につながるRSウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルスなどほかのウイルス同様、新型コロナウイルスでも感染すると喘息の発作が増悪する可能性があります。

新型コロナウイルス感染症では風邪のような症状を引き起こし、重症化すると肺炎が生じます。喘息の発作は風邪の症状をきっかけに生じることが多いため、新型コロナウイルス感染症による風邪症状から喘息の発作が増悪する可能性があります。

新型コロナウイルス感染症は特効薬がなく、治療方法も確立されていません(2020年5月7日時点)。そのため、喘息患者さんだからできないという治療も特にありません。

現在の新型コロナウイルス感染症に対する治療は、急性呼吸不全(ARDS)の治療方法に準じて行われており、喘息患者さんであっても必要に応じてレスピレーター(人工呼吸器)やECMO(体外式膜型人工肺)を使用することもあります。

先述したように、新型コロナウイルス感染症に対する治療はまだ確立された方法がなく、対症療法(症状を和らげる治療)が中心です。したがって、新型コロナウイルスに感染することによって喘息が重症化した場合も、重症化した喘息に対する一般的な治療を行います。重症化した喘息(重篤な発作)の場合は、一般的に入院が必要です。また、重篤な発作に該当しない場合でも大発作や中発作などの状態で治療への反応が悪い場合には、入院が必要になります。

このことからも、普段からきちんと吸入ステロイドなどによる管理を行い、発作を起こさない状態にすることや感染予防が非常に重要になります。

自宅でネブライザーを使用している喘息患者さんの場合、ネブライザー使用時はなるべく別室に隔離して1人で行い、使用後は十分な換気を行うようにしましょう。ネブライザーとは、薬液を超音波でミスト化し、呼吸とともに気管や肺などに送り込む治療器具です。

新型コロナウイルスは、エアロゾル感染する可能性があると考えられています。エアロゾル感染とは、飛沫核など細かく長期間空気中に浮遊しやすい粒子(エアロゾル)が口や鼻から入ることによって感染してしまうことをいいます。ネブライザーはエアロゾルが発生しやすく、そのエアロゾルに新型コロナウイルスが含まれていた場合、感染を広げてしまう可能性があるのです。

また、子どもの喘息患者さんがネブライザーを使用する際に大人による補助が必要な場合、補助をする大人は感染防護をしっかり行うようにしましょう。ネブライザーの使用に関して不安なことがあれば、電話でかかりつけ医に相談しましょう。

報道に惑わされず、処方されている薬をきちんと服用して治療を継続することです。たとえば、“ステロイドを服用していると感染症にかかりやすい”という情報を鵜呑みにして自己判断で吸入ステロイドをやめてしまう患者さんもいますが、喘息の治療に使用される吸入ステロイドの量、かつ局所投与であることを考えると使用しても感染症にかかりやすくなるということはまずありません。(なお、ステロイドに関しては新型コロナウイルス肺炎におけるサイトカイン・ストームを抑える際に有効な可能性があり、今後の検討が待たれます。)

むしろ、吸入ステロイドをやめてしまうことで元の喘息の症状が悪化することのほうが、発作を起こしてしまうなど悪影響を及ぼす可能性が高いでしょう。処方されている薬を服用し、喘息をコントロールすることこそが一番の新型コロナウイルス対策といえます。

「街中で咳をしただけでも、周囲の人から睨まれてしまう」と話す人もいます。喘息による咳の症状を最大限抑えるためにも、基本的な喘息の治療をきちんと継続しましょう。また外出時はマスクを着用し、咳エチケットを心がけましょう。

新型コロナウイルス感染症が流行しているからといって喘息患者さんが特別なことをする必要はなく、日頃の喘息治療を継続した上で一般的な感染症予防を励行してください。特に、東京などの大都市では蔓延期にさしかかっており、街を歩けばどこに感染者がいるか分からない状態です。そのため、不要不急の外出を避けた上、外出時はマスクの着用、外出後の手洗い・うがいなどを行うようにしましょう。

また、薬の服用・処方など気になることや心配なことがあれば、かかりつけ医に電話で相談しましょう。

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