インタビュー

気管支炎の原因と症状─熱が4日以上続く場合は受診が必要?

気管支炎の原因と症状─熱が4日以上続く場合は受診が必要?
望月 太一 先生

国際医療福祉大学医学部呼吸器内科学 准教授、国際医療福祉大学三田病院 呼吸器センター呼吸器内科部長

望月 太一 先生

この記事の最終更新は2017年10月04日です。

気管支炎とは炎症が気管支にあり、咳や痰などの呼吸器症状を引き起こす疾患の総称です。罹患している期間によって急性と慢性にわけられますが、急性気管支炎の場合は1週間ほどで治癒することがほとんどです。1週間ほどで治癒できても、医療機関に受診するべきなのでしょうか。また、医療機関で抗生物質を処方してもらえば症状はすぐによくなるのでしょうか。気管支炎の治療方法や病院に受診すべき症状などを国際医療福祉大学三田病院、呼吸器内科部長の望月太一先生に伺いました。

気管支炎とは

気管支炎とは下気道(かきどう:咽頭よりも肺に近い気管、気管支、細気管支、肺)に、元々病変がない状況で、かぜの症状が上気道(じょうきどう:呼吸器のうち鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭)から気管、気管支(気管が肺のなかで左右にわかれ、その左右にわかれた先)にも及ぶことで発症する疾患です。

罹患期間により、急性気管支炎慢性気管支炎にわけられます。

気管支炎を発症した場合の8割以上はウイルス感染が原因といわれています。また、主な原因はライノウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどのかぜ症状を起こすウイルスです。インフルエンザウイルスや、マイコプラズマに感染した場合にも急性気管支炎を発症する可能性があります。

急性気管支炎の主な要因はウイルス感染によるものですが、細菌感染が原因の場合もあります。

咳や痰、微熱、のどの痛みなどが主な症状です。気管支炎の主な原因別に症状を解説いたします。

1週間以上発熱がみられる事もありますが通常は1週間以内です。そのほかに、咳や痰、のどの痛みがあります。

発熱や咳、倦怠感、関節痛等の症状があります。

ウイルス感染の急性気管支炎と同じく発熱や咳、痰の症状がみられます。また黄色の痰や、粘稠痰(ねんちょう:ねばりけがある痰)がでます。

発熱が4日以上続きます。マイコプラズマが原因の場合には乾いた咳がでます。しかし、ウイルス性の気管支炎とはちがい、痰はあまりでないことが特徴です。

薬

急性気管支炎の原因の8割以上はウイルス感染です。インフルエンザやマイコプラズマが原因ではない限り、急性気管支炎の治療法は対症療法(症状に対応して処置をする)になります。ウイルス性のかぜ症状は1週間ほどで自然治癒できるからです。

発熱の症状は3日~4日ほどで落ち着きますので、患者さんは十分な睡眠を取って、水分補給をこまめに行い安静に過ごしていれば医療機関への受診を急ぐ必要はありません。しかし咳がひどく眠れないときや、高熱が出た際には、咳を抑える薬や解熱剤を処方することがあるので、医療機関を受診してください。

また、ウイルス感染の場合は抗生物質を服薬しても効果はみられません。そのため、ウイルス性の急性気管支炎の患者さんに抗生物質を処方することはありません。

基礎疾患(糖尿病など)や腎不全のある方や、高齢の方は、体調が悪いと感じたらすぐに医療機関を受診してください。また、がんの治療を行っていて抗がん剤を使用している方も同様です。抗がん剤を使用していると免疫力が落ちて、急性気管支炎をきっかけに重症になることがあります。また、免疫抑制剤やステロイド(体のなかの炎症を抑える、体の免疫力を抑制する作用がある薬)を使用している方は発熱しない場合があるので、咳や痰の症状がみられたら受診するようにしてください。

黄色で粘稠痰がでる場合や、4日以上37度5分以上の発熱が続く、咳がひどくなるなどの症状がある場合には医療機関への受診を推奨します。細菌感染の場合は肺炎球菌(はいえんきゅうきん:肺に感染し肺炎を起こすことが多い細菌)等に感染している可能性があるので、迅速に検査をしなくてはなりません。

発熱などのかぜ症状のほかに、悪寒や筋肉痛などの症状がある場合はすぐに受診してください。インフルエンザは迅速診断(どのような疾患なのか迅速に診断する)でその日のうちに検査結果がわかります。インフルエンザウイルスだと診断された場合にはインフルエンザ治療薬を処方します。

マイコプラズマもインフルエンザウイルス同様に迅速診断でその日のうちに結果が判明します。マイコプラズマが原因の気管支炎だと診断された場合は、マクロライドやテトラサイクリンなどの抗生物質を処方しています。

先ほども述べましたがウイルス性の急性気管支炎の際には抗生物質を服薬しても効果はありません。それどころか下痢などの副作用が出てしまいます。医療機関に受診した際に抗生物質を処方してほしいという方もいらっしゃいますが、抗生物質を過剰に服薬すると耐性菌(抗生物質を使用しすぎたため細菌が抵抗力を持って抗生物質が効きにくくなる)を作ってしまいます。そのため効果があると根拠がなければ医師は抗生物質を処方することはありません。ウイルス性の急性気管支炎では対症療法が基本です。

咳をしている大人

気管支炎はかぜの予防をすることで罹患する可能性が低くなると考えられます。気管支炎は、咳嗽(がいそう:せきこむこと)がある場合は周囲にうつる可能性があるので、咳エチケット等が必要です。

気管支炎は気管支が「炎症」を起こしている状態であり、咳嗽がある場合はウイルス等では飛沫感染(ひまつかんせん:咳やくしゃみなどによって病原体を含んだ飛沫が飛散し粘膜に付着することで感染)で周りにうつることがあります。周囲に感染させないためにも風邪予防やインフルエンザウイルスの予防接種を行うことが予防に繋がります。

帰宅後には手洗いをしっかりと行い、日ごろからバランスのよい食事を心がけるなど日常生活のなかで予防することが大事です。咳がよく出る方はマスクの着用で飛沫が飛ばないように配慮しましょう。咳エチケットは風邪の予防をするうえで重要になってきます。

また、インフルエンザウイルスの予防接種や肺炎球菌のワクチン接種も大切な予防法のひとつです。予防接種は自身の罹患を予防するだけでなく、周囲へ、うつす可能性も低下します。

記事2『慢性気管支炎・びまん性汎細気管支炎とは?原因不明の咳や痰が続く』では慢性気管支炎びまん性汎細気管支炎についてお話いたします。

 

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