概要
びまん性汎細気管支炎(DPB)とは、慢性的な咳や痰、呼吸困難を生じる難治性呼吸器疾患のひとつです。病名の通り、「細気管支」と呼ばれる部位に慢性的な炎症を生じることが原因です。2017年現在では、マクロライド少量長期投与が治療方法として確立しています。
しかし、この治療方法が確立する以前における治療成績は非常に悪く、病気が発症してからの5年生存率はおよそ50パーセント前後であったとの報告もあります。日本では患者数が減少しています。発症に男女差はほとんどなく、発症年齢は40~50歳代が多いとされています。
原因
びまん性汎細気管支炎は、空気の通り道である「呼吸細気管支」を中心に慢性的な炎症が生じることで発症します。慢性的に呼吸細気管支に炎症が生じるため、気道が狭窄して呼吸困難が生じたり、痰を自力で排出できなくなってしまい、肺に痰が溜まったりします。
老化した細胞や細菌は、痰として肺の外に排出する必要があります。痰の排出には、気管支の表面にある「線毛」が適切に機能することがとても大切です。しかし痰の量が多い、あるいは線毛の輸送機能が悪くなると痰を運びきれなくなります。
また、痰は咳をきっかけとして体外に排出できますが、咳が弱い状態ではうまく痰を排泄できなくなります。びまん性汎細気管支炎の患者さんでは線毛の動きが悪くなり、また咳も弱くなることから、うまく痰を排出できなくなり呼吸困難に陥ります。
びまん性汎細気管支炎は、日本人を始めとしたアジア人に多い病気です。このことから、びまん性汎細気管支炎の発症要因として人種特異性(遺伝的に大まかに分類し、その中のほぼ特定のグループにだけみられる性質)があるのではないかという考えもあります。
ヒトの細胞には「HLA」と呼ばれるタンパク質が存在していますが、HLAは個人差や人種差があることが知られています。びまん性汎細気管支炎の日本人患者さんにおいては「HLA-B54」といった型をもつ方が高い確率でいることが報告されています。しかしその一方、韓国ではHLA-B54を持つ患者さんが少なく、HLA-A11をもつ患者さんが多いという研究報告もあり、遺伝的背景に加えてなにかしら別の要因が存在する可能性も示唆されています。
症状
びまん性汎細気管支炎の症状には、大量の痰、持続する咳、息切れ、呼吸困難などがあります。ときに300ミリリットルもの痰が一日で排泄されることもあります。痰が大量に空気の通り道に詰まることになるため、正常な空気交換ができなくなり、呼吸困難を来たすようになります。呼吸器感染症の併発も多く、病気が進行すると緑膿菌に対する感染症症状をきたすようになり、呼吸状態の悪化から死に至ることもあります。
また、びまん性汎細気管支炎では、慢性副鼻腔炎を合併することも多いです。約80パーセント以上の患者さんで併発するとの報告もあり、鼻づまり、嗅覚低下などの鼻に関連した症状も出現れます。
検査・診断
びまん性汎細気管支炎の診断は、胸部単純レントゲン写真や肺CTといった画像検査によって行われます。「びまん性」という名前がついているように、肺全体の細気管支で病変が生じる病気であり、画像上でもその変化を認めます。
その他、呼吸機能の状態を客観的に評価するひとつの指標として、肺機能検査が行われます。またびまん性汎細気管支炎では呼吸器感染症を併発することも多く、喀痰培養が行われます。喀痰培養では、呼吸状態を増悪させる原因となっている緑膿菌など細菌の見極めも可能です。
治療
治療方法は、マクロライド少量長期投与療法です。マクロライドは抗生物質の一種であり、一般的な感染症治療薬として使用する場合には長期投与することはなく、むしろ数日の期間で時間を区切って投与することが重要な薬剤です。
しかし、びまん性汎細気管支炎の治療においては、通常の治療量よりも減量し、長期間処方されることになります。マクロライドは気道分泌物の過剰分泌を抑制したり、炎症反応を抑制したり、線毛の動きを改善したりする効果があります。
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