現在、びまん性汎細気管支炎は治療方法が確立し患者数は減少しています。また、はっきりと原因はわかってはいませんが、発生地域が東アジアに限られていたり、ある種の遺伝性背景を持った方に多く発生したりと、原因の特徴が少しずつ判明しつつあります。ここではその特徴について公益財団法人結核予防会 理事長の工藤翔二先生にお話を伺いました。
最近では日本でも患者数は減少してきています。発症に男女差はほぼなく、発症年齢は40~50歳代が多いとされています。
1970年代~1980年代当時は、日本人に圧倒的に多い病気でした。日本以外の東アジア地域からは韓国、台湾から若干の報告例があるものの、中国などにおける実態は明らかではありませんでした。そのため、東アジア地域におけるびまん性汎細気管支炎の実態を明らかにするために、1993 年から調査活動を開始しました。
結果、韓国・台湾・中国・香港・ベトナム・シンガポールなど、アジア地域特に東アジア地域に患者が集積していることがわかりました。一方、欧米にはほとんど患者がいないことも判明しました。
我々は1998年にびまん性汎細気管支炎に関する国際的なシンポジウムを行い、アジア圏以外では18症例あることが明らかになりました。しかしその内訳をみると、8例は日系人・韓国人などアジア系の人々であることがわかり、人種特異性(遺伝的に大まかに分類し、その中のほぼ特定のグループにだけみられる性質)があるのではないかという見解を持っています。
類似する病気である「嚢胞性線維症(cystic fibrosis)」は、この調査において東アジアの諸都市では見いだされませんでした。日本人の患者さんはゼロではありませんが、非常に少ないです。しかし欧米における患者さんは大変多いという、いわばびまん性汎細気管支炎と対極にあるような病気もあります。
HLA(ヒト白血球抗原)の調べが進んだ日本人の場合、HLA-B54をもつ患者さんが高い確率でいらっしゃいます。しかし日本と韓国で共同研究を行ったところ、韓国ではHLA-B54を持つ患者さんが少なく、HLA-A11をもつ患者さんが多かったのです。すると、HLA-B54もHLA-A11もびまん性汎細気管支炎の感受性遺伝子(遺伝子因子と環境因子が組み合わさって発症する疾患に関わる遺伝子)ではなく、他に原因となる遺伝子が存在するのではないかということになり、遺伝性の背景をもった病気として非常に興味深く研究をしているところです。
もうひとつの特徴は、ほとんどの患者さんが慢性副鼻腔炎に罹患していることです。まず、小児期~青年期に慢性副鼻腔炎を発症し、40~50歳になってびまん性汎細気管支炎を発症すると考えられています。
慢性副鼻腔炎は副鼻腔に膿がたまる病気ですから、その膿がのどから肺に入ることと発症に関わりがあるのではないかと推測されたこともありましたが、現在では副鼻腔と気管支の粘膜に共通した防御能力の異常によるものであると考えられるようになりました。
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