インタビュー

急性気管支炎・慢性気管支炎の症状や原因、治療法について解説!

急性気管支炎・慢性気管支炎の症状や原因、治療法について解説!
津島 健司 先生

国際医療福祉大学成田病院 副院長、国際医療福祉大学 医学部 呼吸器内科学 主任教授

津島 健司 先生

この記事の最終更新は2017年09月26日です。

気管支炎は原因によってさまざまな種類に分けられますが、まずは、それが急性のものであるか慢性のものであるかを鑑別する必要があります。共通する症状としては、咳や痰、発熱などがあげられ、小児に発症すると重症化する恐れのある疾患です。

今回は千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学特任教授/国際医療福祉大学医学部呼吸器内科学主任教授である津島健司先生に急性気管支炎慢性気管支炎の原因や症状、治療法についてお話を伺いました。

気管支とは?

気管支は鼻や口と肺胞を結ぶ空気の通り道である下気道の一部にあり、肺内でおよそ16に分岐しています。気管支は、太い部分からだんだんと細く枝分かれしていきます。末端の気管支のことを終末細気管支といいます。そこからさらに奥へ進むと、酸素と二酸化炭素のガス交換が可能となる呼吸細気管支、肺胞道、肺胞となります。

気管支炎ではまず、症状や原因によって急性か慢性かをしっかりと鑑別して、治療方針を決定する必要があります。

急性、慢性にかかわらず共通する症状としては、咳嗽(がいそう)、いわゆる咳が挙げられます。咳が起こるメカニズムには、気管と気管の分岐部の粘膜にある「咳受容体」のはたらきが関係しています。この咳受容体が異物などによる刺激を受けると、脳にある咳中枢に伝達され、咳が誘発されるのです。これは咳嗽反射ともよばれます。

気管支と肺胞は一つにつながっているため、気管支の炎症が肺の末端にある肺胞まで波及してしまうと、肺炎を引き起こす可能性もあります。このとき発症した肺炎は、気管支肺炎症候群や気管支肺炎という病名でよばれることもあります。

また、遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)といって、気管支の炎症が治っても、咳だけが残ってしまうこともあります。

では、続いて急性気管支炎慢性気管支炎、それぞれの症状、原因、治療法について解説していきましょう。

急性気管支炎の主な症状は、急な炎症が起こっていることによる発熱や咳です。

ウイルスが原因の気管支炎の場合は、下痢症状がみられることもあります。

また小児の場合、気道が脆弱(ぜいじゃく)なため少しの刺激でも、気道に浮腫が起こります。浮腫を起こすことで気道が狭窄し「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった呼吸音が聞こえます。これを医学的には喘鳴(ぜんめい)といいます。

成人は気管・気管支軟骨形成が成熟しているため、小児ほど容易に喘鳴はみられませんが、小児の急性気管支炎の場合では頻回にみられる症状です。

急性気管支炎の原因で、一番多いものはウイルス感染です。ウイルスには、アデノウイルス、ライノウイルス、インフルエンザウイルスなどが考えられます。

細菌感染も原因となることがあり、マイコプラズマや百日咳菌などが、気管支炎を引き起こす主な細菌であるといわれています。

また、化学物質の吸入も急性気管支炎の原因となることがあるので注意が必要です。たとえば、お風呂掃除に使用する、防カビスプレーなどの揮発性の塩素剤を、締め切った空間で換気をせずに使用することで気管支炎を引き起こすことがあります。

こういった揮発性の塩素は、気管支だけでなく目や鼻などの粘膜も傷つける恐れがありますので、使用する際にはきちんと換気をしたうえで使用するようにしましょう。

急性気管支炎では、炎症を起こしているそれぞれの原因に合わせて治療を行います。

ウイルスが原因の場合、一般的には治療薬は存在しません。ですから、咳による体力消耗を防ぐために、咳を抑える鎮咳剤(ちんがいざい)を服用するなどの対症療法が一般的です。ただし、ウイルスがインフルエンザウイルスの場合には、発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を吸入もしくは内服します。

細菌が原因の場合は、感染している細菌に合わせた抗菌薬による治療を行います。

また急性気管支炎の場合は、十分な休息と水分補給も重要になります。

記事2『主な気管支炎5種類を解説−症状や検査、治療はどう行う?』で詳しく述べますが、気管支炎が細気管支で発症している場合には、強い呼吸困難が現れることがあります。すると、低酸素血症(酸素飽和度が90%未満または動脈血酸素分圧が60mmHg以下)をきたす場合がありますので、このときは持続的な酸素吸入のために、入院をしていただくことがあります。

慢性気管支炎は、原因不明の咳や痰が1年のうちに3か月以上持続し、なおかつそれが2年以上続いている場合を指します。

ですから、あらゆる検査を行って、それでもはっきりとした原因がわからないときに慢性気管支炎と診断できます。

よく開業医の先生などから慢性気管支炎という診断で紹介をされてくる患者さんがみうけられますが、呼吸器内科専門医がきちんと精査をしてみると、慢性気管支炎ではなく他の病気(アレルギー気管支炎びまん性汎細気管支炎など。記事2『主な気管支炎5種類を解説−症状や検査、治療はどう行う?』で詳しく解説します)であることがあります。ですから、慢性的に咳や痰が続く場合には、呼吸器内科専門医のいる医療機関で精密な検査を行うことをお勧めします。

慢性気管支炎は、明らかな原因のない疾患ですが、長期間に渡る喫煙習慣が最大の理由であると考えます。また、大気汚染や環境汚染なども原因であるといわれています。

慢性気管支炎でみられる主な症状は痰(たん)です。

慢性気管支炎では、慢性的な炎症を起こしている箇所に、慢性気管支炎の直接的な原因とはならないような細菌などが多く付着していることがあります。ですから、付着している細菌によって黄色や緑色など、色のついた痰がみられることがあります。

また、なかには1日200〜300ccと非常に大量の痰が出てくる方もいて、これによって呼吸困難感がとても強くあらわれる患者さんもいます。

慢性気管支炎の治療を行う際には必ず、本当に慢性気管支炎と診断していいのか、他に明らかな原因がないのか、を徹底的に精査します。

それでも原因がみつからない場合には、慢性気管支炎と診断し、去痰薬の処方やネブライザーを使用して喀痰を促す治療を行います。

慢性的に呼吸不全がみられる患者さんの場合には、長期にわたり在宅で持続的に酸素吸入を行う「在宅酸素療法」を行うこともあります。また、それに伴い患者さんのADL(日常生活動作)や筋力が低下しているときには、在宅リハビリテーションも併せて行います。

小さな子どもに発症した急性気管支炎は、重症化しやすいので注意が必要です。

先にも述べましたが、子どもの場合は気管が浮腫による狭窄を起こすことで「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった喘鳴が聞こえるほか、浮腫がひどくなると「陥没呼吸」がみられることがあります。

陥没呼吸とは、一生懸命呼吸をしようとしているにもかかわらず、胸が膨らまずに肋間が下がり、お腹だけが膨らんでしまう状態です。陥没呼吸を起こしてしまうと、急激に重症化して低酸素状態となり、命を落とす危険性もあります。特に夜間寝ている状態では、気管支が重力で押し潰され、危険性がさらに高まります。ですから、喘鳴と陥没呼吸がみられたら、朝まで待つのではなく、早急に救急外来を受診するようにしてください。

特にもともと喘息の既往があるお子さんは、喘息がない場合と比べて気管支炎が増悪する可能性が非常に高いので、注意が必要です。

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