インタビュー

インフルエンザの治療――4つの抗インフルエンザ薬に対する考え方

インフルエンザの治療――4つの抗インフルエンザ薬に対する考え方
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年05月22日です。

インフルエンザ薬は4つありますが、まず投与経路が大きく違います。オセルタミビルは内服薬でザナミビル、ラニナミビルは吸入薬、ペラミビルは点滴薬です。今回は神戸大学感染治療学教授の岩田健太郎先生に、4つの抗インフルエンザ薬の違いについて説明していただきました。

オセルタミビルは、投与経路が内服(口から飲む)ということが特徴です。1日2回、5日間内服します。副作用としては消化器症状が特徴的であり、下痢や腹痛が起きます。小児では中枢神経症状が出る可能性があります。ただし、中枢神経症状が出なくてもインフルエンザ脳症が起こる可能性があります。オセルタミビルを飲んでいても飲んでいなくても、インフルエンザになった子どもは、注意して見てあげることが必須です。

ザナミビルは、吸入薬であることが大きな特徴です。1日2回、5日間吸入します。吸入薬であるため、気道の刺激作用がある可能性があります。呼吸器関連の基礎疾患がある場合には注意が必要で、肺炎合併症例で吸入の効果が期待できない場合には使用できません。

ラニナミビルは、長期作用型なので最初に1回吸入するだけでよい薬です。しかし、ザナミビルと同じく吸入薬のため気道の刺激作用がある可能性があります。呼吸器関連の基礎疾患がある場合には注意が必要で、肺炎合併症例で吸入の効果が期待できない場合には使用できません。

長時間作用型の薬は1回だけ吸入すればよいので、とても簡単な薬に思えますが、これは一面的な考え方です。もし副作用が出たときにはどうなるのでしょうか? 長期作用型は諸刃の剣で、副作用が出てしまったときには、利点に思えた「長時間作用型」は、そのまま欠点となって返ってきます。つまり、副作用すらも長時間作用となってしまうのです。

また、ラニナミビルは比較的新しい薬です。新しい薬には「予期せぬ副作用」があるという問題もあります。古い薬であれば副作用情報が全て分かっていると考えられますが、新しい薬については何が起こるのかもどう対応するのかも分からないのです。予期せぬ副作用というのは経験がないので、とても怖いものです。

非常にシンプルな話になりますが「分からないことは怖い」のです。たとえばペニシリンではアナフィラキシーショックになることがあります。それでも、これはきちんとした知識と体制があれば十分に対応することができます。

ペニシリンのアナフィラキシーショックは怖いものですが、どれくらいの確率で起きて、どのように対応すればよいのかが分かっています。よく分からないものこそが怖いのであって、きちんと予測できて対処できるものはそれほど怖くはない。「怖さ」というものはそのように解釈します。

ラニナミビルの副作用が起きたときにはどうするのか? 比較的新しい薬ですから、何が起きるか予測がつきません。半減期が長く、副作用も長時間型になる。このようなことこそが「怖い」と考えることができます。

ペラミビルは点滴薬です。日常的に用いる薬ではありません。一般的には入院で、重症化したときや高病原性鳥インフルエンザに使うものと考えられます。そもそも、抗インフルエンザ薬が必須ではないなかで、外来で点滴の抗インフルエンザ薬を投与する必然性はまったくありません。特に子どもにとっては注射をされるのは痛いです。つらい処置は最低限にしなくてはなりません。

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