インフルエンザと診断されたとき、休養をとり、自分の体を早く治すことも大切ですが、周囲の人へうつさないことも同じくらい大切なことです。冬の乾燥した空気はウイルスが活動しやすく、注意していてもうつしてしまう・もらってしまうことはありますが、心がけによって、その可能性を下げることは可能です。
自分がインフルエンザにかかったとき、家族がインフルエンザにかかったとき、どのようなことに注意すべきかについてお伝えします。
手洗いは感染予防の基本であり、インフルエンザの予防においても大切な役割を果たすといわれています。
インフルエンザウイルスは、人体を離れて物の表面に付着した状態でも、条件によっては数十時間も感染力を保っていることがあるといわれています。インフルエンザが付着した物の表面を触ることで感染のきっかけとなるため、手洗いをすることは予防に役立つと考えられます。また、外出中などで手がきれいではないときには、不用意に口・鼻・目の粘膜に触れないという心がけも大切です。
見落としがちですが、水道の蛇口は、水を出すために一度不潔な手で触れることが多い場所です。特に、外出先のトイレなど不特定多数の人が利用する場所では、せっかく手を洗ったのに、水を止めるために蛇口を触ってしまっては意味がなくなってしまうこともあります。ペーパータオル越しに蛇口を触るなどの工夫ができるとよいでしょう。
うがいについては、インフルエンザに限らず、風邪などについても予防効果があるとされています。しかし、手を使ってうがいをする場合には、手が汚れていては意味がないため、先に手洗いをする、コップやペットボトルの水を使う、といったことを心がける必要があります。
また、消毒液でのうがいは、粘膜の健康な細胞にまでダメージを与える可能性があるともいわれています。予防目的でうがいをするときには普通の水か、抗ウイルス作用があるといわれているカテキンを含む緑茶でのうがいなどにするとよいでしょう。
インフルエンザは、一般的に空気感染はしないといわれています。しかし、自分に咳やくしゃみがあるとき、人混みなど不特定多数の人と密着するような場所では有効と考えられます。咳やくしゃみのしぶきを物理的に遮断することが目的のため、ドラッグストアなどで簡単に手に入る使い捨てのマスクでよいでしょう。
また、インフルエンザウイルスは目の粘膜から体内に侵入する可能性もあります。不特定多数の人と密着する電車内、症状のある小さな子どもを看病する場合などは、眼をくしゃみのしぶきなどから守るため、伊達メガネや日曜大工用の保護メガネなどを使用することも効果があるとされています。
70%以上の濃度のエタノール(アルコール)、0.2%ベンザルコニウム塩化物液、0.02%次亜塩素酸水などが有効とされています。このうち、次亜塩素酸は家庭でも常備されている漂白剤に含まれていることが多く、同じく冬に流行するノロウイルスにも効果のある成分です。
消毒薬は濃度を守って使用する必要がありますが、最近は使いやすいように、あらかじめ濃度が調整された製品も販売されています。インフルエンザの予防を目的として購入する場合には、成分名を確かめて購入するとよいでしょう。
マスクは、ウイルスの含まれたしぶきをブロックすると同時に、のど・鼻周囲を加湿する効果もあります。インフルエンザにかかっている人は、息苦しくなくマスクが装着できる年齢であれば、積極的にマスクを使用しましょう。ただし、マスクを使用する際には、下記のようなことに注意する必要があります。
ケアをする側の家族については、上で述べたように、インフルエンザにかかっている人に近づく場合にはマスクを装着したほうがよいでしょう。
部屋が分けられるのであれば部屋を分け、インフルエンザにかかっている人は、必要なとき以外その部屋から出ないようにするのがよいでしょう。どうしても部屋を分けることができない場合には、カーテンや仕切りなどで部屋を区切ることができるとよいでしょう。このような対策には、咳やくしゃみとともに飛散するインフルエンザウイルスをブロックする役割があります。
また、インフルエンザウイルスを含む咳やくしゃみのしぶきは2〜3メートル程度飛ぶと考えられています。インフルエンザにかかっている人から物理的に距離をとったほうがよいことは確かですが、子どもなど、常に一緒にいて世話をしないといけない人がインフルエンザにかかった場合は、同じ部屋にいる保護者が上で述べたような予防法を徹底して行い、換気や加湿を心がけるという対処になるでしょう。
水拭き、家庭用の掃除用洗剤でもウイルス量を減らすことができます。浴室は、インフルエンザにかかっている人が触れた部位や床を水で流し、家庭用洗剤で掃除する対応で十分と考えられます。
特に心配なとき(トイレで嘔吐した、下痢をしているなど)は、上で挙げた消毒薬を用いて拭くとよいでしょう。
洗濯や食器洗いに関しては普段通りでよく、インフルエンザにかかっている人の食器洗いだけ別にしたり、洗濯物を別洗いしたりする必要はないとされています。
すでに環境中に飛散し、長い時間がたったインフルエンザウイルスは感染力を失っている可能性が高く、それほど過敏に考える必要はないといわれています。あらゆる部位をアルコールで拭くといったことは必要なく、水拭きや家庭用洗剤での通常の範囲内の掃除でよいでしょう。
ウイルスの排出は症状が出る1日前から始まり、症状が始まってから3~7日は続くと考えられています。子どもの場合、学校の出席停止期間は「発症後5日経過し、かつ、解熱後2日を経過するまで」となっており、大人でもこれに準じた対応がよいと思われます。
熱が下がって元気になり始めると、元の生活に戻したり、外出したくなったりしますが、ウイルスはまだ体から排出されています。この期間に注意を払わないことが、感染をむやみに拡大させる原因にもなりますので十分配慮しましょう。
病院では、患者さんがインフルエンザであったとわかった場合、その患者さんと接触した人や医療関係者は、接触後3日間は経過観察するという場合が多いとされています。家族がインフルエンザにかかった場合、数日間は「もしかしたら感染しているかも」と考えて行動する必要があります。
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