喘息発作を起こさないようにすることが第一だと、『気管支喘息発作の予防方法。受診を第一に、発作を起こさないためのあらゆる工夫を』でご説明いただきましたが、万が一気管支喘息を患っている患者さんが発作に襲われた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科の足立満先生にお話をお聞きしました。
喘息の発作は炎症を起こした気道の周りにある筋肉が収縮を起こすことによります。ではこのようにして発作が起きた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
まずは、短時間作用性β2刺激薬(SABA)を吸入させることが第一です。発作が起きたら、まだ軽症なうちに急いで1~2回程度噴射して吸入し、まずは様子をみましょう。それでも治まらない場合は、20分後にもう一度吸入します。
このように、20分おきに吸入を続け、3回吸入しても発作の症状が治まらない場合は、すぐに病院に行って医師の診察を受ける必要があります。放っておいてチアノーゼ状態(指先が青紫色になった状態)になってくるとかなり危険な段階に進んできてしまうため、直ちに救急車を呼びいち早く適切な処置を受けてください。
なお、吸入回数の上限は1時間に3回、1日に4回までです。この用量は必ず守るようにしましょう。上限回数を吸入しても症状が改善しない状態が続くようであれば、直ちに受診し医師に相談して長期管理薬の治療のステップアップを検討しなければなりません。
とはいえ、発作の対処法は一時的なものであり、あくまでも緊急時の応急処置にすぎません。短時間作用性β2刺激薬は、即効性はあるものの、気道の炎症そのものを根本的に治療する働きはないからです。あくまでも治療の基本は長期管理薬であり、短時間作用性β2刺激薬を使用する機会をなるべく減らす、つまりなるべく発作を起こさないよう、予防的な治療(『気管支喘息の治療方法。吸入ステロイドを第一に考え、発作を予防する』参照)をしっかりしていくことが大切です。
喘息発作が頻繁に起こるときは、なんといってもすぐに病院に行くことです。病院に行けば気管支拡張薬の吸入、酸素の吸入、そして必要に応じて気管支拡張薬とステロイドの点滴注射などを迅速に行うことができるため、少しでも発作を軽減することができます。
一番頭に置いておいて頂きたいのは病院を受診することですが、病院が休みの日だったり、出先などで急に発作を起こしたりすることもあるでしょう。その際は、のどを広げる要領で水分を取ると呼吸が楽になります。水分と言っても冷たすぎる水や炭酸などののどを刺激するものはやめましょう。
ただし、発作が頻繁に起こるような方はそのようなことを考える余裕すらないと思います。ですからまずは専門医を訪れ、きちんと診断を受けてください。
喘息の発作がひどくて仕事や家事もまともにできず、仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまう方も少なからずいるようです。風邪が喘息発作の誘因のトップですが、オフィスが埃っぽかったり、忙しくてストレスが溜まってしまったり、働きすぎて過労になったりなど喘息を悪化させる要因は仕事場にそして家庭にも多々存在します。あまりにも発作が頻繁に起きてしまう場合は、診断書を書いてもらうなどして勤務先などの理解を得ることも大切です。
しかし現在は、治療薬、特に吸入ステロイドを中心とした長期管理薬の進歩もあり、私の経験上はほとんどの患者さんが喘息発作を長期管理薬で予防し喘息と仕事を両立させながら生活しています。
短時間作用性β2刺激薬は即効性があり、すぐに症状を抑えることができる利点があります。そのため、かつて短時間作用性β2刺激薬は喘息治療の中心的存在でした。ただし前述したように、短時間作用性β2刺激薬は対症療法にすぎず、根本的治療としては不適切です。
喘息は薬を使って症状をコントロールすることで発作も起こりにくくすることができます。
喘息発作を予防するためには長期管理薬が大切です。長期管理薬は発作を予防するために用いる治療薬で、気道の炎症を抑えたり、長時間拡張させたりする役割を果たします。短時間作用性β2刺激薬は発作が治まらない時の応急処置として緊急時に使うようにしましょう。あくまで治療の根本は発作を予防することなのです。
国際医療福祉大学 臨床研究センター教授、山王病院 アレルギー内科、公益財団法人日本アレルギー協会 理事長
国際医療福祉大学 臨床研究センター教授、山王病院 アレルギー内科、公益財団法人日本アレルギー協会 理事長
昭和大学医学部卒。昭和大学医学部第一内科学助教授、ロンドン大学Royal post graduate medical school臨床薬理学教室研究員、昭和大学第一内科主任教授を経て、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科。自身が喘息であったという経験を活かし、気管支喘息をはじめとした呼吸器疾患に悩む数多くの患者を治療してきている。1993年のはじめの我が国の喘息管理予防ガイドラインから現在まで喘息管理予防ガイドライン作成委員として参加し「喘息管理・予防ガイドライン2018」(JGL2018)作成委員会においても顧問を務めている。
足立 満 先生の所属医療機関
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