喘息とは、気道(鼻や口から肺へとつながる空気の通り道)が炎症を起こし、咳、息苦しさなどの症状を起こす病気です。喘息にはその症状が強く出る「発作時」と、無症状から軽微な症状で済む「非発作時」とがあります。また、発症の原因は未だ明らかになっていませんが、ホコリ・ダニなどのアレルゲン(抗原)や喫煙などがその症状を悪化させることはわかっています。今回は、喘息の症状・原因について横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック院長の三島渉先生にお話を伺いました。
喘息とは、気道の慢性疾患*です。喘息は気道に炎症が起こることによって、通り道が狭くなり発作を起こす病気です。喘息の発作とは、咳、息苦しさなどの喘息の症状が強く出ている状態のことを指します。
気道は気道上皮、気道粘膜、平滑筋と大きく3層に分かれています。喘息の患者さんの場合、症状のないときでもこの気道の表面が炎症を起こしてしまっています。そのため、ホコリやタバコの煙を吸い込んでしまったり、ストレスを感じてしまったりといった、わずかな刺激が加わることによって発作が生じてしまいます。
慢性疾患……徐々に発症して治療も経過も長期におよぶ病気
喘息の主な症状として知られているのは「咳」です。咳といえば、風邪の症状としても知られています。しかし、喘息と風邪には大きな違いがあります。それは、風邪は完治が見込めますが、喘息は寛解があっても、完治は難しいというところです。「寛解」とは、その病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態になることです。しかし、寛解状態はその病気が完全に治った(=完治)とはいえないので、いずれ再発する恐れもあります。
喘息は発作が起こらないときは無症状である場合も多く、しばらく発作が起こらないと「治った!」と感じる患者さんも少なくありません。たとえば、子どものころに喘息にかかっていた方でも大人になるにつれて発作がなくなり、「喘息が治った!」と考える方もいるでしょう。しかし、実際のところ、1度喘息にかかった方は寛解することはあっても、完治しているかどうかは最後までわかりません。なぜなら、子どもの頃に喘息にかかっていた方の発作がなくなり治ったと思っていた場合でも、大人やご高齢になってから再発してしまうケースがあるからです。
成人喘息(大人の喘息)については記事2『成人喘息(大人の喘息)の特徴』も併せてご覧ください。
喘息の症状は、大きく発作時と非発作時に分けて考えることができます。
喘息は、気道の炎症がひどくなると発作が生じます。ここでいう発作とは喘息の症状が強く出ている状態です。発作時の主な症状は下記のとおりです。
<喘息発作時の主な症状>
喘息の発作が継続する時間は、重症度によってまちまちです。数時間で自然に治まる方もいれば、何らかの治療を施すまで治まらない方もいらっしゃいます。
喘息は発作のないとき(非発作時)には症状が落ち着いています。中には無症状で、発作が出るまで自分が喘息にかかっていることに気づかないケースもあります。
また、非発作時に見落とされがちな症状として、長く続く咳が挙げられます。特に風邪やインフルエンザのあとに咳の症状だけが長期的に残る場合、それは軽度の喘息の症状であるケースがあります。この程度の軽症な症状のうちに治療を行えば、以後発作を起こしにくくなり、それだけ後の生活が送りやすくなることもあります。
しかし、このような症状の場合、病院へ行っても医師が喘息と気付かず病気を見過ごしてしまったり、ご本人が問題視せず病院に行かなかったりして、早期治療に結びつかない可能性があります。
喘息の発作は以下のようなときに起こりやすいといわれています。
<喘息の発作、環境要因>
喘息の発作は夜中から早朝にかけて起こることが多いといわれています。これは、睡眠時・リラックス時に副交感神経が優位になるからです。副交感神経とは交感神経と対になる自律神経で、心身を休めリラックスしている際に優位になります。副交感神経が優位になっている間、人の体は回復やメンテナンスを行っています。
副交感神経が優位になると、気道が狭くなる傾向にあり、その結果発作を起こしやすくなるといわれています。
喘息患者さんの気道は、発作のないときでも炎症を起こしています。そのため過敏性が高く、些細な刺激が発作を誘発することもあります。たとえば季節の変わり目など、温度や湿度に激しい差があると発作が起きやすくなります。寒暖差の激しい時期は特に注意が必要です。また、湿度は高すぎても低すぎても刺激になりやすく、湿度の高い梅雨や、低い冬も発作を起こしやすくなります。
喘息発作の大きな引き金の1つに、風邪などのウイルス感染があります。ウイルスの一部には気道に炎症を起こすものもあり、それによって発作が誘発されてしまうからです。体力が落ちているときは免疫力も低下しているため、ウイルスに感染しやすいといえます。その結果、喘息の発作を起こしてしまう可能性があります。
2018年2月現在、喘息は発症の原因がよくわかっていません。しかし、下記の事柄が喘息を悪化させてしまうことは明らかになっています。
<喘息を悪化させる原因>
喘息を悪化させる要因の1つとしてアレルギーが考えられます。アレルギーの原因となる物質「アレルゲン(抗原)」は人によって異なりますが、主に下記のようなものが挙げられます。
<主なアレルゲン(抗原)>
過労やストレスは免疫力低下や自律神経・ホルモンの乱れへとつながることがあります。そのため、過労やストレスによって喘息の発作が起きてしまうケースがあります。
急激な運動をすることによって、喘息の発作が誘発されることもあります。また、特に屋外など寒いところで急に外気を吸い込むと発作が起きやすいといわれています。運動をきっかけとして起こる発作を「運動誘発性発作」と呼びます。
これらの発作は、運動によって気道の水分が失われてしまったり、外気を吸い込むことによって気道が急に冷えたりすることによって起こります。
運動誘発性発作は、運動によって気道内に急激な変化が起きることが引き金となっているといえます。そのため、運動開始から5〜10分後に発作が起き、運動を中止してから数十分のうちには発作が治まることがほとんどです。
前述のように、ウイルス感染は喘息の発作を誘発することがあります。ウイルス感染とは、風邪やインフルエンザをはじめとするウイルスに感染することによって生じる病気のことです。
感染するウイルスによっては気道に炎症を起こし、喘息の発作を誘発してしまうことがあります。
また、たばこの煙も喘息発作を引き起こす原因として知られています。たばこの煙には一酸化炭素、ニコチン、タールなど200種以上の有害物質が含まれています。自分が喫煙するのはもちろん、受動喫煙であってもたばこの煙を吸い込むことによって、気道に刺激が加わり、発作を引き起こすことがあります。
肥満も喘息の発症原因のひとつであるといわれています。また、肥満が高度であれば高度なほど、喘息を引き起こしやすいこともわかっています。
これは、肥満の方の場合には、胸腹膜壁が厚く、腹腔内に脂肪が沈着することによって横隔膜が上方向に移動するために、機能的残気量(息を吐き切ったときに肺に残っている空気の量)が低下することなどが原因であるといわれています。
喘息は放っておくと気道のリモデリングを招き、治療が難しくなってしまいます。気道のリモデリングとは、度重なる炎症によって気道の壁が厚く硬くなってしまい、空気の通り道が細い状態で気道が固まってしまうことです。
この状態に陥ってしまうと、治療を行っても気道が正常な太さに戻らなくなってしまいます。そのため、喘息は症状が軽いうちに適切な治療を行うことが大切です。
喘息の治療・対処方法に関しては記事3『喘息の対処方法-発作を予防するためには?』を併せてご覧ください。
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック 理事長
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