風邪を引いたときなどに起こる咳は、身近な症状の1つです。自然と治るケースが多いですが、なかには、なかなか治らず咳が持続するケースがあります。このように咳が2か月以上持続する状態を慢性咳嗽といいます。慢性咳嗽の原因はさまざまであるといわれていますが、どのような病気によって起こることがあるのでしょうか。
今回は、国立国際医療研究センター病院 呼吸器内科診療科長である放生 雅章先生に、慢性咳嗽の原因や診断についてお話を伺いました。
慢性咳嗽とは、2か月以上咳が持続する状態のことです。
咳は、持続する期間によって主に3つに分類されます。咳が出るようになってから3週間未満持続する状態を急性咳嗽、3週間〜2か月持続する状態を遷延性咳嗽、2か月以上持続する状態を慢性咳嗽と呼びます。
一般的に咳の多くは、風邪や喫煙など明らかな原因がある場合に起こります。風邪や喫煙によって上気道に炎症が起こると咳が出るようになります。このような風邪を原因とする咳は、2週間程度で自然と治まることが多いです。
ところが、風邪が治った後にも咳の症状のみが残り、さらに2か月以上持続する慢性咳嗽の状態になることがあります。慢性咳嗽には風邪以外のほかの原因が隠れている可能性があります。慢性咳嗽は、このように何かしらの病気が隠れていることを知らせてくれるサインのようなものとお考えいただいてもよいかもしれません。
慢性咳嗽の原因はさまざまですが、なかでも子どもから大人まで原因としてもっとも多いものは咳喘息です。咳喘息は喘息の前駆段階的な状態を指し、喘息の比較的軽いものとお考えください。咳喘息では、朝方や夜になると咳が出てしまい寝ることができない状態になる方もいらっしゃいます。
また、胸の音がヒューヒュー、ゼーゼーするときは、咳喘息に加えて喘息が原因かもしれません。喘息を「子どもがかかる病気」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最近では中高年や高齢で喘息を発症される方が増えています。
最近、中高年〜高齢の方の慢性咳嗽の原因として増えている病気に非結核性抗酸菌症があります。非結核性抗酸菌症は、女性に多いといわれている感染症です。非結核性抗酸菌自体は水や土の中に存在するので、浴室や土を扱う環境で感染することがあるでしょう。中高年や高齢の方の中には庭の手入れを趣味にされている方も多いことが増加の要因と考えられます。
慢性咳嗽の診断について、当院での例を交えながらお話しします。当院にいらっしゃる患者さんはクリニックなどから紹介でいらっしゃる方がほとんどであるため、すでに開業医の先生などによって一通りの検査を終えているケースが多いです。
このような状況であっても、当院では、咳を訴えて患者さんがいらしたときにはまずX線検査を行います。X線検査が、肺がんや心不全などの病気の発見につながるからです。このように何らかの病気が隠れていないかをしっかりと検査していきます。
特に見逃してはいけない病気の1つに結核があります。治療せずに放置してしまった場合、重症化する可能性があるからです。結核を見逃さないために痰の中の結核菌の存在を確認する喀痰検査を行うこともあります。
これらの検査によって見逃してはいけない病気の有無を確認した後には、問診と必要があれば検査を行っていきます。問診では、慢性咳嗽の原因として頻度の高い病気の可能性を調べていきます。もっとも頻度が高いものは、お話ししたように咳喘息です。ほかにも、胃酸が逆流することによって起こる胃食道逆流症や、鼻汁が喉に流れてくる後鼻漏などが原因として挙げられます。問診や検査によってこれらの病気の可能性がないかを調べていきます。
当院は速やかにX線検査や呼吸機能検査、CT検査など必要な検査を実施する体制を築いています。また、結核病棟を有しているため、結核の検査を迅速に行うことができる点も特徴でしょう。このように、結核など見逃してはいけない病気を発見できる環境があります。
咳は一般的に起こりやすい症状であるため、何を目安に受診したらよいか迷われる方もいらっしゃるかもしれません。目安としては、咳が1か月程持続する場合に受診をご検討いただきたいと思います。たとえば、風邪が治ったにもかかわらず咳が1か月程続くようであれば何かしらの病気が隠れている可能性を考え、かかりつけの先生を受診することをおすすめします。
原因として咳喘息が多いとお話ししましたが、咳喘息には、症状を繰り返すという特徴があります。たとえば、風邪を引くと毎回咳だけ残るということであれば、受診することで咳喘息を発見できるケースもあります。また、咳喘息は同じ季節に起こることがあるといわれています。たとえば、毎年秋口に喘息の症状が現れるという方もいらっしゃいます。咳喘息が現れやすい時期として、秋口や台風、梅雨の時期などが挙げられます。これらの時期に毎年咳が続くようであれば、咳喘息の可能性があるでしょう。
国立国際医療研究センター病院 呼吸器内科診療科長 第一呼吸器内科医長
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