喘息とひと口に言っても、成人喘息、咳喘息、小児喘息など様々な種類があります。喘息の中でも患者数の多い「成人喘息」はどのように治療するのでしょうか。国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科の足立満先生にお話をお聞きしました。
中心となる治療法は、長期管理薬の1つ、吸入ステロイド薬(ICS)の吸入です。これは微量のステロイドを、専門の吸入器を用いて口から吸い込み、そのあとうがいをするというものです。吸入ステロイド薬は気道の炎症を沈めて発作を防いでくれます。
このように吸入ステロイドは効果が高いお薬ですが、喘息に対する即効性はなく、効果が現れるまでに数日から一週間程度かかります。ですから、使い始めてすぐに症状が改善しないからと言って自己判断で吸入を中止せず、医師の指示に従って正しく吸入を続けてください。
今では吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤としてブデソニド・ホルモテロールやビランテロール・フルチカゾン、サルメテロール・フルチカゾン、ホルモテロール・フルチカゾンなどがあり、現在喘息治療薬として多く使われています。配合剤は吸入ステロイド薬(ICS)単剤での使用と比較して即効性もあり、喘息のコントロールも明確な改善の兆しを見せ、救急外来に運ばれる患者さんの数も減少を続けています。なお、ブデソニド・ホルモテロールは定期吸入以外にも、発作時にプラスして吸入し、発作治療薬としても使うことができるタイプの配合剤です。ホルモテロール・フルチカゾンも症状に応じて増減が可能ですが、サルメテロール・フルチカゾン、ビランテロール・フルチカゾンは一定量を定期的に吸入するタイプの配合剤です。患者さんの症状やその患者さんの肺機能やデバイスの使い勝手の良し悪しなどを考慮し、どのタイプの配合剤がその患者さんにとってベストなのかを医師が判断し、使い分けます。
症状が重くなってきた場合は吸入ステロイドの量を増やしたり、気管支拡張薬や抗アレルギー剤を追加したり(治療のステップアップ)、経口ステロイド薬を短い期間のみ服用してもらう場合もあります。
急激な発作が起こった時には発作治療薬(短時間作用性β2刺激薬)を用います。この薬は数ある気管支拡張薬の中でも最も強力な作用を持っています。β2刺激薬は、交感神経のβ2受容体(刺激を受けると気管支が拡張する)を刺激することで気管支を拡張させ、呼吸を楽にしてくれます。
発作治療薬には内服薬と吸入薬の二種類があり、そのうち即効性があり副作用も少ない吸入タイプのものが現在は中心に使用されています。
また、ブデソニド・ホルモテロールも発作時に有効です。ただし、この発作治療薬はあくまで緊急事態を回避するためのものだと考え、頻繁に使うことは避け長期管理-基本の抗炎症治療をきちんと行う様にしましょう。
喘息の治療薬は「長期管理薬」と「発作治療薬」に分けられます。長期管理薬はコントローラー、発作治療薬はリリーバーとも呼ばれます。最近では、吸入ステロイド薬(ICS)に長時間作用型の気管支拡張剤(β2刺激薬)を組み合わせた配合剤が長期管理薬として開発されました。
喘息の治療は発作を起こさないための治療です。つまり、喘息治療の最大の目的は発作を起こさないようにすることなのです。ですから今後も、予防治療が中心となっていくでしょう。
新薬は2013年に発売されたビランテロール・フルチカゾン、ホルモテロール・フルチカゾンや2009年に発売された皮下注射薬、オマリズマブが比較的新しい薬です。ビランテロール・フルチカゾンは前述のとおりステロイドとβ刺激薬が配合されており、これはサルメテロール・フルチカゾンやブデソニド・ホルモテロールと同じ分類なのですが、ビランテロール・フルチカゾンは用法が1日1回吸入と少なくなっているのが大きな特徴です。ホルモテロール・フルチカゾンは他のICS+LABAがドライパウダーであるのに対して加圧式エアゾールタイプで用量が調節できる事も大きな特徴です。またチオトロピウムは長時間作用性抗コリン薬でCOPDに使われていた薬ですが、比較的重症の喘息に用います。(ICS+LABA配合剤の効果が不十分な場合)β刺激薬とは異なったメカニズムで気管支を拡張し、過剰分泌を抑制する作用もあります。
オマリズマブは免疫グロブリンE(IgE)という分子に体内で結合し、治療効果を発揮する注射薬です。重症持続型の患者さんのうち6~7割に有効というデータが出ており、風邪をひきにくくする効果もあるようです。私の外来では、オマリズマブを使用している患者さんの場合、2週間・または4週間ごとに病院を受診してもらっています。
現在の治療では、重症喘息でもなるべく入院しないようにしてコントロールすることが勧められています。ですから、アトピー型の重症喘息には、比較的初期段階から患者さんにオマリズマブを処方する場合もあります。オマリズマブは喘息発作のためしばしば入院しなければならない様な重症な患者さんはもちろん、入院しないけれど経口ステロイド薬を時々またはいつも必要という患者さんにとっても新しい治療法と言えるでしょう。
ただしオマリズマブ自体は重症のアトピー型喘息に有効な薬であり、すべての患者さんに有効というわけではありません。新薬にはメリットも多く様々な開発もなされていますが、自分に合った薬を見つけていくのが一番ということは変わりないのです。
日本の喘息予防・管理ガイドラインは1993年に日本アレルギー学会によって発表され、その後改定を重ねてきており、最新版は2015年です。
喘息予防・管理ガイドラインの喘息治療目標は以下のとおりとなっています。
- 健常人と変わらない日常生活を送ることができる。
- 非可逆的な気道リモデリングへの進展を防ぎ、正常に近い呼吸機能を保つ。
PEF※が予測値の80%以上かつ、PEFの変動が予測値の20%未満。
- 夜間・早朝を含めた喘息発作の予防。
- 喘息死の回避。
- 治療薬による副作用発言の回避。
※PEF:ピークフロー。その人が全力で呼気を発したときの、息の速度の最大値。
国際医療福祉大学 臨床研究センター教授、山王病院 アレルギー内科、公益財団法人日本アレルギー協会 理事長
国際医療福祉大学 臨床研究センター教授、山王病院 アレルギー内科、公益財団法人日本アレルギー協会 理事長
昭和大学医学部卒。昭和大学医学部第一内科学助教授、ロンドン大学Royal post graduate medical school臨床薬理学教室研究員、昭和大学第一内科主任教授を経て、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科。自身が喘息であったという経験を活かし、気管支喘息をはじめとした呼吸器疾患に悩む数多くの患者を治療してきている。1993年のはじめの我が国の喘息管理予防ガイドラインから現在まで喘息管理予防ガイドライン作成委員として参加し「喘息管理・予防ガイドライン2018」(JGL2018)作成委員会においても顧問を務めている。
足立 満 先生の所属医療機関
関連の医療相談が29件あります
アレルギー症状で悩んでいます
よろしくお願いします。2年ほど前から近くの内科で喘息の治療を受けています。吸入と飲み薬を服用しています。最初の頃は喘息の意識はありませんでしたが、最近は時々、息苦しくなり鼓動がして、下半身がしびれたようになり、首廻りが熱を持ったように暑く感じて、どうにも気分が悪くなります。病院の先生に相談すると、吸入をすれば楽になります、といわれて毎回吸入をしています。確かに効果はあります。はじめの頃は30分ぐらいで落ち着いていましたが、最近は2時間から3時間続くようになりました。その時間の中で何度か症状に波があります。不安な気持ちで過ごしています。よろしくおねがいします。
息苦しさと 胸の不快感
三ヶ月ほど前から 息苦しさや 胸の不快感そして 脈が速く打つような動悸があります。心臓 胸部レントゲンなど診察してもらいましたが特に異常がありません。 喘息と診断され 飲み薬と 吸入薬を使用していますが あまり効果がありません。 ここ最近では 毎日のように息苦しさがあります。どうしたらいいかわかりません。 どうした方がいいか アドバイスをください。
薬を飲んでも変わらない息苦しさ
先日喘息かもと思い呼吸器内科を受診。 吸入器と飲み薬を貰いました。 それから3日目になるんですが、 心拍数が上がる感じと、息苦しさが有り。 薬の影響かもしれないと思い、 普段通りスーパーへ行き、帰宅後 息が苦しくなり、肩で呼吸するような感じに。 帰宅後約1時間程経過しましたが、先程よりは良くなったものの、若干の息苦しさと肩の呼吸は治らず。 熱はなく、強く息を吐くとゼーゼー(ヒーヒー?)音が鳴る。 因みに昨日も同じように動いたが 昨日はさほど苦しくは感じなかった。 呼吸器内科へ受診した際にはレントゲンも写したが、特に異常はないとのこと。 しかし今は気だるさも感じる。
喘息について
鼻鼻腔の手術して その後 咳が 止まらないので 呼吸器科に 診察したら 喘息と言われました しばらくは 通院していましたが 最近は 行っていません 診察に 行った方がいいのは わかっていますが 気道が せまいみたいです キュと閉めたら 死亡するみたいで わかっては いるのですが 診察時は 吸入薬と 飲み薬 していました 今は なにもしていないです 祖母が 喘息でした 吸入薬も あまり よくないと 聞いていますし 気道が 狭きで 硬いようです やはり 気道の 検査に 行くべきですよね 呼吸器科の 先生には 行っていないから 悪いと 思っています 風邪ひきますと 喘息みたいな咳が 出ます ここ 3年くらい 診察に 行っていないです
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