インタビュー

気管支喘息の治療方法。吸入ステロイドを第一に考え、発作を予防する

気管支喘息の治療方法。吸入ステロイドを第一に考え、発作を予防する
足立 満 先生

国際医療福祉大学 臨床研究センター教授、山王病院 アレルギー内科、公益財団法人日本アレルギー協...

足立 満 先生

この記事の最終更新は2015年10月01日です。

喘息とひと口に言っても、成人喘息、咳喘息、小児喘息など様々な種類があります。喘息の中でも患者数の多い「成人喘息」はどのように治療するのでしょうか。国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科の足立満先生にお話をお聞きしました。

中心となる治療法は、長期管理薬の1つ、吸入ステロイド薬(ICS)の吸入です。これは微量のステロイドを、専門の吸入器を用いて口から吸い込み、そのあとうがいをするというものです。吸入ステロイド薬は気道の炎症を沈めて発作を防いでくれます。

このように吸入ステロイドは効果が高いお薬ですが、喘息に対する即効性はなく、効果が現れるまでに数日から一週間程度かかります。ですから、使い始めてすぐに症状が改善しないからと言って自己判断で吸入を中止せず、医師の指示に従って正しく吸入を続けてください。

今では吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤としてブデソニド・ホルモテロールやビランテロール・フルチカゾン、サルメテロール・フルチカゾン、ホルモテロール・フルチカゾンなどがあり、現在喘息治療薬として多く使われています。配合剤は吸入ステロイド薬(ICS)単剤での使用と比較して即効性もあり、喘息のコントロールも明確な改善の兆しを見せ、救急外来に運ばれる患者さんの数も減少を続けています。なお、ブデソニド・ホルモテロールは定期吸入以外にも、発作時にプラスして吸入し、発作治療薬としても使うことができるタイプの配合剤です。ホルモテロール・フルチカゾンも症状に応じて増減が可能ですが、サルメテロール・フルチカゾン、ビランテロール・フルチカゾンは一定量を定期的に吸入するタイプの配合剤です。患者さんの症状やその患者さんの肺機能やデバイスの使い勝手の良し悪しなどを考慮し、どのタイプの配合剤がその患者さんにとってベストなのかを医師が判断し、使い分けます。

症状が重くなってきた場合は吸入ステロイドの量を増やしたり、気管支拡張薬や抗アレルギー剤を追加したり(治療のステップアップ)、経口ステロイド薬を短い期間のみ服用してもらう場合もあります。

急激な発作が起こった時には発作治療薬(短時間作用性β2刺激薬)を用います。この薬は数ある気管支拡張薬の中でも最も強力な作用を持っています。β2刺激薬は、交感神経のβ2受容体(刺激を受けると気管支が拡張する)を刺激することで気管支を拡張させ、呼吸を楽にしてくれます。

発作治療薬には内服薬と吸入薬の二種類があり、そのうち即効性があり副作用も少ない吸入タイプのものが現在は中心に使用されています。

また、ブデソニド・ホルモテロールも発作時に有効です。ただし、この発作治療薬はあくまで緊急事態を回避するためのものだと考え、頻繁に使うことは避け長期管理-基本の抗炎症治療をきちんと行う様にしましょう。

喘息の治療薬は「長期管理薬」と「発作治療薬」に分けられます。長期管理薬はコントローラー、発作治療薬はリリーバーとも呼ばれます。最近では、吸入ステロイド薬(ICS)に長時間作用型の気管支拡張剤(β2刺激薬)を組み合わせた配合剤が長期管理薬として開発されました。

  • 吸入ステロイド薬:抗炎症薬。喘息症状を根本的に改善する薬
  • 長時間作用性β2刺激薬:気管支拡張薬。吸入ステロイドと併用して用いられる
  • 吸入ステロイド薬(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)配合剤:抗炎症薬・気管支拡張薬配合剤。現在の治療の主流。気道の炎症改善+気道の拡張効果の双方を兼ねる
  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA):気管支拡張薬。ICS+LABA配合剤を使っても効果が十分でないときに併用剤として用いられますが、将来的にはLABAに過敏な人(LABAにより動悸、手のふるえ、手や足のケイレン、ツリなど)にはICS+LAMAという組み合わせも出てくると思います。
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬:抗アレルギー薬。気管支拡張作用と抗炎症作用の双方を兼ね鼻炎合併例に特に有効とされています
  • テオフィリン徐放製剤:気管支拡張薬。作用時間が長く夜間症状のコントロールに有効。弱いけれど抗炎症作用もある
  • 短時間作用性β2刺激薬:気管支拡張薬。即効性がある。気道を強力な作用を持って広げ、呼吸機能の改善をもたらす
  • 経口ステロイド薬:抗炎症薬。発作を抑える短期間(3日間~10日間程度)用いる
  • 吸入ステロイド薬(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)配合剤:抗炎症薬・気管支拡張薬配合剤。ブデソニド・ホルモテロールは長期管理薬として用いられるが、発作の前兆時や発作時にも用いることが可能

喘息の治療は発作を起こさないための治療です。つまり、喘息治療の最大の目的は発作を起こさないようにすることなのです。ですから今後も、予防治療が中心となっていくでしょう。

新薬は2013年に発売されたビランテロール・フルチカゾン、ホルモテロール・フルチカゾンや2009年に発売された皮下注射薬、オマリズマブが比較的新しい薬です。ビランテロール・フルチカゾンは前述のとおりステロイドとβ刺激薬が配合されており、これはサルメテロール・フルチカゾンやブデソニド・ホルモテロールと同じ分類なのですが、ビランテロール・フルチカゾンは用法が1日1回吸入と少なくなっているのが大きな特徴です。ホルモテロール・フルチカゾンは他のICS+LABAがドライパウダーであるのに対して加圧式エアゾールタイプで用量が調節できる事も大きな特徴です。またチオトロピウムは長時間作用性抗コリン薬でCOPDに使われていた薬ですが、比較的重症の喘息に用います。(ICS+LABA配合剤の効果が不十分な場合)β刺激薬とは異なったメカニズムで気管支を拡張し、過剰分泌を抑制する作用もあります。

オマリズマブは免疫グロブリンE(IgE)という分子に体内で結合し、治療効果を発揮する注射薬です。重症持続型の患者さんのうち6~7割に有効というデータが出ており、風邪をひきにくくする効果もあるようです。私の外来では、オマリズマブを使用している患者さんの場合、2週間・または4週間ごとに病院を受診してもらっています。

現在の治療では、重症喘息でもなるべく入院しないようにしてコントロールすることが勧められています。ですから、アトピー型の重症喘息には、比較的初期段階から患者さんにオマリズマブを処方する場合もあります。オマリズマブは喘息発作のためしばしば入院しなければならない様な重症な患者さんはもちろん、入院しないけれど経口ステロイド薬を時々またはいつも必要という患者さんにとっても新しい治療法と言えるでしょう。

ただしオマリズマブ自体は重症のアトピー型喘息に有効な薬であり、すべての患者さんに有効というわけではありません。新薬にはメリットも多く様々な開発もなされていますが、自分に合った薬を見つけていくのが一番ということは変わりないのです。

日本の喘息予防・管理ガイドラインは1993年に日本アレルギー学会によって発表され、その後改定を重ねてきており、最新版は2015年です。

喘息予防・管理ガイドラインの喘息治療目標は以下のとおりとなっています。

  1. 健常人と変わらない日常生活を送ることができる。
  2. 非可逆的な気道リモデリングへの進展を防ぎ、正常に近い呼吸機能を保つ。

 PEF※が予測値の80%以上かつ、PEFの変動が予測値の20%未満。

  1. 夜間・早朝を含めた喘息発作の予防。
  2. 喘息死の回避。
  3. 治療薬による副作用発言の回避。

※PEF:ピークフロー。その人が全力で呼気を発したときの、息の速度の最大値。

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  • 国際医療福祉大学 臨床研究センター教授、山王病院 アレルギー内科、公益財団法人日本アレルギー協会 理事長

    足立 満 先生

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