概要
小児期の気管支喘息は1~2歳前後をピークとして、こどもの気管支喘息のうち80~90%が6歳までに発症すると考えられています。年齢が上がるごとに有病率が減少する傾向にあり、成長と共に治っていくことが多いとされています。しかし、近年では学童期の喘息有病率が増加傾向にあるとの報告もあり、6歳未満で喘息を発症した小児の約60%~80%は思春期までに治癒しますが、それでも症状がある場合は、半数以上が成人になっても治癒せず、継続的な経過観察や治療が必要となります。
気管支喘息は、気道が慢性的に炎症を引き起こすことによって、気道の過敏性が亢進し、何らかの刺激が加わることで炎症が悪化し、気道粘膜がむくんで気道狭窄を生じる病気です。気道が高度に狭窄することで喘鳴や呼吸困難などの症状が引き起こされます。発症の原因は、アトピー素因などの遺伝的要因や、アレルゲンへの曝露、気道感染、タバコの副流煙や大気汚染物質の吸引、激しい運動や過換気など、さまざまなものが挙げられます。中でもアトピー素因が大きく関与しており、家族内にアレルギー性疾患患者が多いのも特徴です。
治療法は、症状の重症度によって異なりますが、ステロイド薬の吸入やロイコトリエン受容体拮抗薬の投与などが行われます。
原因
気管支喘息には、遺伝的要因(アレルギー素因)、アレルゲン(ダニ・ホコリ等)吸入、有毒物質(タバコや大気汚染物質)や粉塵などの非特異的な刺激、激しい運動や過換気などさまざまな原因が挙げられます。これらが気道の粘膜に炎症を引き起こすことで、気道内の分泌液が増加したり、粘膜のむくみ・肥厚などを生じたりして、結果として気道が炎症を起こした状態になります。このように炎症を起こした状態の気道粘膜は、些細な刺激で粘液の過剰分泌や高度な浮腫を生じ、空気の通り道が確保できなくなるため、喘鳴や呼吸困難などの症状を引き起こすのです。
さまざまな気管支喘息の原因の中でも特に遺伝的要因(アレルギー素因)が大きく関与していると考えられています。アレルゲンに対するIgE抗体の作りやすさや、気道過敏性は遺伝的要因が大きく関わっており、家族内にアトピー性疾患のある小児は、該当者のいない小児よりも気管支喘息を発症しやすいことが分かっています。また、アレルゲンとして多いものは、ダニやハウスダスト、動物の毛やフケなどがあります。
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症状
気管支喘息の本態は、慢性的な気道粘膜の炎症ですが、常に何らかの症状が現れているわけではありません。特定のアレルゲンや呼吸器感染症、激しい運動などの外的な刺激が炎症を起こしている気道粘膜に更なる刺激を与えて気道の狭窄を引き起こすことによって「喘息発作」を生じます。最新のガイドライン(2019年時点)で、発作ではなく急性増悪を使用することになったため、以降は発作を急性増悪と示します。喘息の急性増悪は真夜中~明け方に多く、秋に発症しやすい、季節の変わり目に生じやすいなどの特徴があります。
喘息の急性増悪はアレルゲンなどに曝露され、可逆的な気道狭窄が生じることで発症します。気道狭窄が生じた結果、呼気性呼吸困難(息を吐きだすことが困難になる)や呼気の延長、喘鳴、咳嗽などの症状が現れます。また、更に気道狭窄が進行して高度な気道閉塞が生じることで、チアノーゼや不穏、興奮、意識障害などを引き起こします。
検査・診断
小児の気管は成人よりも柔らかく、もともと気道も狭いため喘鳴を生じやすく、喘息との鑑別が非常に重要です。小児は行える検査も限られるため、診断を下すのが難しい傾向にあります。
多くはアトピー素因によるものと考えられており、急性増悪時の喘鳴や呼吸音などから小児気管支喘息が疑われる場合には、各アレルゲンに対する抗体価や、アレルギー反応によって増加する白血球中の好酸球の割合などを調べるための血液検査、皮膚プリックテスタなどのアレルギー検査を行って診断を固めていきます。そのほかにも、肺や気管に器質的な異常がないかを調べるために、レントゲンやCTなどの画像検査が行われます。ある程度の指示動作が行える年齢であれば、呼吸機能検査(スパイログラム、呼気中一酸化窒素検査)が行われます。
治療
気管支喘息の治療の目的は、気道の炎症を抑えて急性増悪を予防することと、急性増悪時に速やかに気道の狭窄を解除することに分けられます。どちらも薬物療法が行われ、前者の薬剤を「コントローラー」、後者の薬剤を「リリーバー」と呼びます。重症度に合わせて使用する薬剤が選択され、コントローラーでは吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬が挙げられます。一方、リリーバーはβ神経刺激薬などが挙げられます。コントローラーは急性増悪のコントロールが上手くいっている場合には、より効果の弱い薬剤を使用するようにステップダウンし、急性増悪を繰り返すような場合には、更に効果の高い薬剤を使用するステップアップを行います。このようにして、薬剤を調整しながら、最終的には薬剤を使用しなくても急性増悪を生じない段階にまで到達するのが治療の根本的な目標となります。
また、高度な気道閉塞が生じるような重度の急性増悪時には酸素吸入や気管内挿管の上で人工呼吸器を使用して、適切な呼吸管理が必要となる場合もあります。
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