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新型コロナワクチンの最新トピックス ~オミクロン株対応ワクチンの効果や3回目以降の接種の必要性~

新型コロナワクチンの最新トピックス ~オミクロン株対応ワクチンの効果や3回目以降の接種の必要性~
木下 喬弘 先生

CoV-Navi(こびナビ) 副代表

木下 喬弘 先生

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2023年05月19日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

日本国内でも接種が進む新型コロナワクチンウイルスの変異や研究が進むことで状況は刻一刻と変わってきています。今回は、変異株に対する効果の違いや製造元による特徴など、新型コロナワクチンの最新トピックスについてCoV-Navi(こびナビ) 副代表の木下 喬弘(きのした たかひろ)先生にお話を伺いました。

新型コロナワクチンには、感染予防効果、発症予防効果、重症感染予防効果があることが分かっています。特に無症状の感染と他人への感染を減らすことが明らかになっており、デルタ株出現前では無症状の感染を91%防ぐという報告がありました。

デルタ株出現前の発症予防効果はファイザーが約95%、モデルナが約94%という臨床試験結果が出ています。しかし、ワクチンの免疫から逃れる変異株の出現のため、現在ではこの効果はより小さくなってしまっています。

*アストラゼネカ製ワクチンは2022年9月30日で接種終了となった

ワクチンの有効性は、時間の経過とともに少しずつ下がっていきます。2023年現在、コロナによる発症を予防する効果は半年程度の持続期間であることが報告されていますが、接種するワクチンの種類や流行している変異体などによって異なります。一方で、重症な感染を予防する効果については、より長く持続することが分かっています。

また、人によっても効果の持続期間は変わってくると思います。たとえば、ステロイドなどの免疫を抑える薬を飲んでいる人の場合、新型コロナウイルス感染症に限らずワクチンの効果は出にくいといわれていますので、持続期間は短くなると考えられます。逆に若年層では、高齢の方よりも抗体の量が上がるため、効果も長く持続します。

新型コロナウイルスの変異株にはさまざまな種類があります。日本では2022年2月頃に、それまで流行していた変異株であるデルタ株からオミクロン株に感染の主流が置き換わりました。オミクロン株には“BQ.1系統”、“XBB系統”などさまざまな種類が存在し、絶えず変化を続けています。

オミクロン株対応でない、従来の1価ワクチンの場合、ワクチンを接種した人にできたオミクロン株を中和する抗体の量は、デルタ株の41分の1にまで低下すると推定されています。また、イギリスの研究では、ファイザーのワクチンを接種した人の発症予防効果は40%前後であったことが報告されています。このように、オミクロン株に対するワクチンの効果は低下すると考えられています。

オミクロン株対応ワクチンの効果

オミクロン株対応ワクチンは、新型コロナウイルスの従来株とオミクロン株両方に由来する成分を含むワクチンです。従来のワクチンが1種類の抗原を含む1価ワクチンであったのに対し、オミクロン株対応ワクチンは2種類の抗原を含む2価ワクチンとなります。

現在はファイザーとモデルナがそれぞれ製造しており、海外で行われた臨床試験結果*から、従来のワクチン(1価)を追加接種した場合と比較して、オミクロン株対応ワクチン(2価)を追加接種した場合のほうが、重症化予防効果、オミクロン株に対する感染予防効果・発症予防効果が上回るとされています。ただし、感染予防効果・発症予防効果については長期的に効果が持続するかどうかはまだ分かっておらず、短期間の効果にとどまる可能性もあります。

*ファイザー社・モデルナ社それぞれにおいて、従来のワクチンを3回接種した者がオミクロン株対応ワクチンを追加接種した場合の中和抗体価および中和抗体応答率を評価した臨床試験

ワクチンの効果は時間とともに少しずつ落ちてくるので、3回目以降の接種をすれば2回目接種後よりも抗体価は上がり、新型コロナウイルス感染症にかかりにくくなります。

2023年5月に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが“新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)”から“5類感染症”となりましたが、少なくとも2023年度は無料でのワクチン接種が継続されます。対象者や時期は厚生労働省や自治体のホームページや案内を参照するとよいでしょう。

まず、副反応と混同しやすいものに有害事象があります。有害事象とは明らかに接種とは関係のない事故によるけがなども含め、接種後に起きた健康上好ましくない全ての出来事のことを指します。

一方で副反応は、接種との因果関係が証明された有害事象のことをいいます。一般的な副反応としては、注射した部位の痛みや頭痛が多く、そのほかに筋肉や関節の痛み、寒気、発熱などが挙げられます。なお、オミクロン株対応ワクチンの安全性は、従来のワクチンを追加接種した場合の安全性と比べて大きな懸念はないとされています。

よく挙げられる重い副反応にはアナフィラキシーがあります。アナフィラキシーとは、接種後すぐに起きるアレルギー反応のことで、皮膚症状(蕁麻疹(じんましん)など)、消化器症状(腹痛や嘔吐など)、呼吸器症状(息苦しさなど)が起こります。

アナフィラキシーは、さまざまな薬やワクチンの投与によって引き起こされる可能性があり、新型コロナワクチンにおいては、100万回の接種あたりファイザーが4件、モデルナが1.5件と報告されています。

ワクチンの接種会場では、もしアナフィラキシーが起こってもすぐ対応できるよう治療薬などを備えていますので、指示に従い接種後15~30分待機するようにしましょう。

重い副反応では、ファイザー製とモデルナ製で起こる心筋炎や心膜炎が特徴的です。

心筋炎・心膜炎の国内での発生頻度は、100万回の接種あたりファイザーで0.6件、モデルナで1.6件と報告されています。ただし心筋炎は若い男性に起こりやすく、米国の能動的な疫学調査によると、12~39歳に限定した場合、ファイザーは14.4件、モデルナは19.7件発生しています。日本の疫学調査は受動的な報告システムに依存しているため、正確な発生頻度を把握するためには、今後の研究を待つ必要があると考えられます。

ワクチン接種後数日の間に息切れや胸の痛みが現れた場合は医療機関を受診するのがよいでしょう。

妊娠中、授乳中でもワクチン接種は可能です。海外で行われた調査によると、妊娠中にワクチン接種をしても、流産、死産、先天異常などの発生率は接種していない場合と変わらないことが分かってきています。

むしろ妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、早産のリスクが高まったり、人工呼吸器を付けることになれば帝王切開の必要性が出てきたりとデメリットが増えるため、妊娠中でもワクチンを接種したほうがよいといわれています。また、妊娠中に血中にできた抗体は赤ちゃんにも移行するので、生まれてからしばらくの間は赤ちゃんを新型コロナウイルスから守ることができる可能性もあります。

授乳中の接種については、ワクチンの成分が母乳に含まれることはなく、万が一含まれたとしても赤ちゃんに悪影響を及ぼすことはないとされています。

妊娠中、授乳中の人も含め、一般的にはワクチンの副反応などのリスクよりも、新型コロナウイルスに感染するリスクのほうが高いといわれています。ワクチンのベネフィットとリスクをよく理解して接種することが重要です。

また今後も研究が進んだり、新たなウイルスの変異が起こったりすれば状況は変わります。不安なことがあれば、政府機関など信頼のおける発信元から情報を入手するようにしましょう。

  • CoV-Navi(こびナビ) 副代表

    日本救急医学会 救急科専門医日本外傷学会 外傷専門医

    木下 喬弘 先生

    2010年大阪大学卒。大阪の3次救急を担う医療機関で9年間の臨床経験を経て、2019年にフルブライト留学生としてハーバード公衆衛生大学院に入学。2020年度ハーバード公衆衛生大学院卒業賞"Gareth M. Green Award"を受賞。卒業後は米国で臨床研究に従事する傍ら、日本の公衆衛生の課題の1つであるHPVワクチンの接種率低下を克服する「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」や、新型コロナウイルスワクチンについて正確な情報を発信するプロジェクト「CoV-Navi(こびナビ)」を設立。公衆衛生やワクチン接種に関わる様々な啓発活動に取り組んでいる。

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