インタビュー

子どもを見守り、病気を防ぐために-乳幼児健診・予防接種を 受けましょう

子どもを見守り、病気を防ぐために-乳幼児健診・予防接種を 受けましょう
五十嵐 隆 先生

国立研究開発法人国立成育医療研究センター 理事長

五十嵐 隆 先生

この記事の最終更新は2016年11月27日です。

乳幼児健診は、子どもの心身の健やかな成長を確認するものです。発育・発達、そして育児全般の相談ができます。日ごろの子どもの様子を確認する機会にしましょう。

出生した時点からの身長や体重の増加をみることで、子どもの体格と栄養のバランスがとれているかどうかがわかります。また、同じ月齢の子どもの80〜90%が通過する項目がある「キーエイジ」と言われる月齢に合わせて定期健診が行われるため、運動・精神・社会性の各発達具合を確認することができます。お住まいの地域で定められている月齢内に健診を受けましょう。最近では、3歳児健診のあとに、集団生活が円滑にできているかどうか、社会性の発達を確認する5歳児健診もできてきましたので、かかりつけの先生にご相談ください。健診を受けたあとに子どもの発達が早い・遅いと一喜一憂することがありますが、大切なことは子どもの成長を丁寧に確認していくことです。

子どもの成長に合わせて、離乳食が開始されているか、順調に進んでいるかどうかなどを確認します。また、最近大きく変わった予防接種についても、円滑に進んでいるかどうかを確認し、接種するスケジュールについても相談できます。そのほか、「快食・快眠・快便」という子どもたちの基本的な生活が送れているか、生活リズムや遊びの提供などが月齢に合っているかどうかを確認する機会にもなります。日ごろ気になっていること、疑問や不安に思っていることを母子手帳などにメモしておき、健診のときに医師や保健師にまとめて相談するとよいでしょう。

保護者、とくにお母さんの気持ちが安定して育児に向かっていることが大切です。気持ちが落ち込むなど「抑うつ」の状態にないか、子育てが孤立していないかどうかの確認も行っています。また、「育てにくいなあ」と感じることがあれば、できるだけ早く相談し、1人で抱え込まないようにしてください。

子どもの健やかな成長を願っているときの健診の結果は、たいへん気になるものです。健診は、子どもたちの健全な育成を目指しているものであり、けっして問題を指摘するだけのものではありません。一緒に考え、一緒に解決を目指すものです。健診で何か気になることがあれば、なくなるまで相談を続けましょう。

(あきやま子どもクリニック 院長 秋山千枝子先生)

ワクチンは子どもを重い病気や後遺症から確実に守ってくれる保険のようなもので、一生のプレゼントです。予防接種はなるべく早くから、すべて受けるようにしましょう。

私たちが生活する地球上には数多くの病原体が存在します。病原体のなかには、一度かかると身体が記憶して、もう一度かからずにすむものがあります。しかし、せっかく記憶したこの防御手段は、残念ながらお母さんから生まれてくる赤ちゃんに伝えられることはありません。生まれてきた赤ちゃんは、お母さんが経験した感染症をもう一度はじめから学習し直さなければならないのです。

感染症のなかには、重症化するものもあります。お母さんが切り抜けたときと同じように、赤ちゃんも無事にすむとは限りません。現代の進んだ医学をもってしても、命を落としたり、後遺症が残ったりする感染症は、まだたくさんあります。

重い感染症にかかることなく、その防御手段を確立する方法があります。それが予防接種です。予防接種に使われるワクチンは、病原性を弱めた病原体(生ワクチン)、あるいは殺して完全に増殖する能力を奪い去った病原体の菌体(不活化ワクチン)をもとに作られます。ワクチンはどれも、もとの病気と比べて病原性はとても低くなっています。

 ワクチンが作られる感染症には、生命に危険が及ぶもの、重い後遺症が見られるもの、感染力が強く日常生活に与える影響が大きなものが選ばれています。

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール(表)には、多くのワクチンがあります。このなかで生命に危険が及ぶ感染症は、ヒブ髄膜炎インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌髄膜炎、B型肝炎ジフテリア、百日ぜき、破傷風(DPTワクチン)、結核(BCGワクチン)、ポリオ麻疹水痘日本脳炎、ロタウイルス胃腸炎、インフルエンザ、子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス)です。また、重い後遺症が見られる感染症は、ヒブ髄膜炎(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌髄膜炎、ポリオ、風疹先天性風疹症候群)、流行性耳下腺炎難聴 なんちょう)、日本脳炎です。ロタウイルス感染症は、日本では死亡例は少ないものの、生活に与える影響が大きい感染症です。

ワクチンにも副作用はありますが、一般の通常の薬の副作用と同じくらいだと言われています。ワクチンを接種したときのメリットに比べて、副作用のほうがはるかに軽いと専門家に判断されたものが、製品として認可されています。お母さんが納得できないことがあるからといって予防接種を受けないままにしておくと、子どもが病気にかかったときに後悔することにもなりかねません。わからないことはかかりつけの先生に尋ねましょう。答えはきっと見つかります。疑問を解決したうえで、ぜひ予防接種を受けるようにしましょう。

(帝京大学医学部附属溝口病院 小児科院長 渡辺 博先生)

 

※この記事は2012年当時の情報に基づいて記載しております。